平成24年10〜12月期の配合飼料供給価格は、米国中西部の記録的な干ばつを主因として大幅に値上げされたが、配合飼料価格高騰対策により、配合飼料価格安定制度の安定運用を中心に生産者への影響を緩和する措置が講じられた。
10月〜12月期の配合飼料供給価格、約4,350円の値上げ
全国農業協同組合連合会(全農)は9月21日、平成24年10〜12月期の配合飼料供給価格を発表した。前期(24年7〜9月期)と比較して、全国全畜種総平均でトン当たり約4,350円の値上げで、平成24年4〜6月期から3期続けての引き上げとなった。このほか、主な商系飼料メーカー及び専門農協も配合飼料供給価格を改定し、約4,350円〜5,200円値上げした(図12)。
図12 配合飼料供給価格増減の推移(全農) |
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資料:全農
注:価格増減(累計)は、平成21年1〜3月期を起点とした、全国全畜種総平均トン当たりの増減額
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全農をはじめ飼料メーカーが、今回の価格改定に当たり公表している飼料穀物に関する情勢は次のとおりである。
1 飼料穀物(トウモロコシ)
(1)米国のトウモロコシ生産は、主産地である米国中西部で記録的な干ばつが発生し、作付け時の予想を大幅に下回る不作になることが確定的な状況である。
(2)このため、トウモロコシのシカゴ相場は、6月まで5米ドル台後半〜6米ドル台後半/ブッシェルで推移していたが、7月以降、7.40〜8.40米ドル/ブッシェルと3割程度上昇した。
(3)トウモロコシ需給は、米国内畜産用途向けや輸出向け需要の減退などみられるものの、来年にかけて米国産トウモロコシ需給がひっ迫基調になる可能性は依然高く、相場は今後も高値圏で推移するものとみられる。
2 大豆粕
(1)大豆粕のシカゴ相場は、旺盛な中国の大豆需要、南米産大豆の減産等により5月上旬には450米ドル/ショートトンを超える水準に上昇した。
(2)その後、米国産地の干ばつによる大豆の減産予想により史上最高値を更新。中国の大豆需要は、依然堅調のため現在も高値で推移している。
(3)今後は、新穀の期末在庫率が史上最低水準と予想されるため堅調に推移するとみられる。
(4)国内大豆粕価格は、シカゴ相場の高騰により大幅な値上がりが見込まれる。
3 海上運賃
(1)米国ガルフ・日本間パナマックス型海上運賃は、世界的な輸送需要低迷で5月下旬以降50米ドル/トンを下回る水準で推移した。
(2)今後は、新造船の竣工並びに世界経済低迷に起因した需要減退で船腹需給は緩和することからやや弱含みで推移するとの見方がある一方、燃料価格が上昇しており海上運賃は底固く推移するとの見方もある。
4 外国為替
外国為替は、欧州債務危機、米国の追加金融緩和政策の動きから引き続き円高基調で推移しているが、赤字の日本貿易収支、通貨当局による追加金融緩和政策や為替介入への警戒感から先行きは不透明な情勢とみられる。
農林水産省が配合飼料高騰対策を公表
農林水産省は9月21日、配合飼料の主原料であるトウモロコシ等飼料穀物の価格高騰を受け、配合飼料の価格高騰による生産者の経営に及ぼす影響を緩和するための対策を公表した。概要は次のとおり。
1 配合飼料価格安定制度の安定運用
配合飼料価格安定制度は、通常補てん基金の運営に補てん財源の確保が必要な状況にある。米国での大規模な干ばつという状況を踏まえ、異例の措置として、異常補てん発動基準を引き下げ、補てんを増額し、通常補てん基金からの補てんを軽減する。これに関し、来年度以降、畜産農家等に飼料自給率向上のための取組の強化を求めていく。また、本措置を講じてもなお不足する額については、異常補てん基金から通常補てん基金に無利子貸し付けを行う。
(1)異常補てん基金の発動基準の引き下げ
平成24年度第3四半期及び第4四半期に限り、異常補てんの発動基準を115%から112.5%に引き下げ。
(2)通常補てん基金への無利子貸付(貸付条件)
貸付限度額は、異常補てん基金の財源の範囲内において、平成24年度第3四半期及び第4四半期における通常補てん基金の財源不足額を基本に算定。償還期間は平成27〜29年度(3年間)。貸付条件は無利子。
2 その他の措置
(1)平成24年度飼料需給計画の改定
配合飼料メーカーが、原料の一部をトウモロコシから飼料用小麦に切り替える動きに対応し、農林水産大臣が飼料需給安定法に基づき策定している「飼料需給計画」における小麦の輸入予定数量を、平成24年度当初の76.4万トンから121.0万トン(44.6万トン増)に改定する。
(2)飼料穀物備蓄対策事業の運用の弾力化
配合飼料メーカーが、トウモロコシの調達先を米国から南米や東欧に一部変更する動き等に伴って、輸送遅延リスクが生じることに対応して、飼料穀物備蓄対策事業の事業実施主体である(社)配合飼料供給安定機構が備蓄穀物を機動的に貸し付けできる限度数量(生産局長承認)を第3四半期において35万トン(第2四半期は10万トン)に拡大する。
平成24年8月の豪州産飼料用小麦輸入量、7月に続き高水準
米国における干ばつ等による飼料原料価格の高騰を受けて、トウモロコシから割安感のある代替原料へシフトする動きが続いている。財務省貿易統計によると、平成24年8月の豪州産飼料用小麦輸入量は、10万7332トンで、急増した7月(9万6912トン)を上回る水準となった(図13)。
図13 豪州からの飼料用小麦輸入量 |
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資料:財務省 |
豪州農業資源経済科学局(ABARES)が9月18日に公表したレポートによると、2012/13年度(7〜翌6月)の豪州の小麦輸出量(食料用以外を含む)は、生産量が過去最高となった11/12年度を23.6%下回る(見込み)ものの、最近2カ年の豊作で依然在庫量が大きく輸出余力があるため、2,250万トン(前年同期比2.3%減)と前年に続き大きな数量を見込んでいる。また、12/13年度のこうりゃん輸出量も、130万トン(同13%増)、うち日本向けが89.5万トン(同9%増)と米国の干ばつの影響等で増加すると見込んでいる。 |