需給動向 海外

◆飼 料◆

米国農務省、トウモロコシの期末在庫率を下方修正、
期首在庫の引き下げなどを反映


◇絵でみる需給動向◇


 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は10月11日、10月の世界農産物需給推計の月次報告を公表した。月次報告では、9月28日に公表された9月1日時点の在庫量が反映されるとともに、行政機関の記録を基にトウモロコシの収穫面積が見直された。

◇米 国◇

トウモロコシ、収穫面積は微増、単収は微減トウモロコシ、収穫面積は微増、単収は微減

 収穫面積は、主要生産州のアイオワ州(10万エーカー増)とネブラスカ州(5万エーカー増)で上方修正されるなど全体で36万エーカー上方修正された。1エーカー当たりの収量については、最大の生産州であるアイオワ州では増減はなかったものの、全米第2、3位の生産州であるイリノイ州(△12ブッシェル)とネブラスカ州(△3ブッシェル)で減収見込みとなり、全体では前月の予測値からわずかに下方修正された。その結果、トウモロコシの生産予測量は、前月の予測(107億2700万ブッシェル)から2100万ブッシェル引き下げられ、107億600万ブッシェル(前年度比13.4%減)と予測された。

 2011/12年度の期首在庫については、四半期毎の調査により9月1日時点の在庫が市場予測平均よりも1億3760万ブッシェル下方修正され前年を12.3%下回る9億8840万ブッシェルに修正された。期首在庫の減少により、総供給量は2億1400万ブッシェル減の117億6900万ブッシェルとなった。

 また、国内消費量は、前月の予測値が据え置かれたものの、輸出量は価格高騰による販売量の減少とブラジルの輸出量の増加見込まれることから1億ブッシェル下方修正された。

 期末在庫は期首在庫量の減少により前月の予測値から1億1400万ブッシェル下方修正され期末在庫率も6.5%から5.6%に下方修正された。
 生産者平均販売価格は上値、下値ともに前月の予測より1ブッシェル当たり0.10ドル引き下がり、7.10〜8.50ドルになると予測された。

表7 米国におけるトウモロコシの需給見通し(2012年10月11日米国農務省公表)
資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、各年9〜翌8月

バイオエタノールの混合義務停止に関し、肉牛生産者がパブリック・コメントを提出 

 アーカンソー州など恒常的にトウモロコシが不足している6州の知事の申請に基づき、環境保護庁(EPA)が審査しているバイオエタノールの混合義務の停止に関するパブリック・コメントの受付が10月11日に締め切られた。

 コメント受付最終日の11日、全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、バイオエタノールの混合義務の停止を求める公式コメントをEPAに提出した。コメント提出後に発表された同協会会長の発言では、「NCBAは米国のエタノール産業を支持しており、エネルギーの外国への依存を断ち切ることを支持している。しかし、国内肉牛生産地帯の70%が干ばつの影響に苦しんでいる現状においては、このエネルギー政策が肉牛生産者に困難な状況をもたらしている。主要な飼料であるトウモロコシからエタノールが生産されることにより、トウモロコシの供給と価格に影響し、これが肉牛産業に大きな影響を与えている。NCBAは、エタノールの生産が義務化されていることには強く反対しており、トウモロコシの確保について公平な競争条件を求めているのだ。」と述べている。

 EPAへのコメントの中でNCBAは、他の畜種と同様、肉牛産業はバイオエタノール混合義務と干ばつに苦しんでおり、飼料価格の高騰によって2007年12月から2012年8月までの間に40億ドル分の資産価値が消滅したとしている。また、NCBAは、現在の状況は肉牛産業の持続可能性にとって問題であり、政府はエタノール産業だけでなく、全てのトウモロコシ需要者に与える経済的効果を考慮した政策をとるべきだとしている。

 しかしながら、今回のNCBAのコメントは、畜産関係団体が連名でEPAへバイオエタノールの混合義務の停止を求めた7月30日の書簡とは、若干トーンが異なっている。当初は、前年にアイオワ州立大学が行ったシュミレーションに基づき、混合義務が停止されればトウモロコシ価格が落ち着くとの見方に立った要請だったが、その後、エタノールをガソリンに混合することによる効用の評価を過小評価していたことや、トウモロコシ生産者等の反応を踏まえ、今回の「公平な競争条件」を求めるとの要請になったものとみられる。

 また、仮に混合義務が停止されてもエタノールのガソリンへの混合は減少せず、結果としてトウモロコシ価格にもほとんど影響がないという見方が広がっていることも、要請理由の変化に表れているものとみられる。
 なお、EPAの判断は大統領選挙の1週間後の11月13日までに行われることとされている。

◇世 界◇

トウモロコシ、米国の不作により世界の輸出量減

2012/13年度における世界のトウモロコシ生産は、前年度と比べ、アルゼンチンおよび中国で増産が見込まれるものの、干ばつによる米国の減産や作付面積の減少が予測されるブラジルで生産量の減少が見込まれることから、前年度比4.4%減の8億3902万トンとされた。

 輸入量は、中国の減少などから同7.5%減の9099万トン、一方、輸出量は主に生産量の増加が見込まれるアルゼンチンで増加するものの、米国で大幅に供給量が落ち込むことから、世界全体の輸出量は、同16.8%減の8992万トンとされた。

 消費量は、主要生産国で前年よりも消費が伸びるものの、生産量の減少により世界的に飼料向けの減少が見込まれることなどから同2.3%減の8億5329万トンとされた。

 なお、期末在庫は、同10.8%減の1億1727万トンとされた。
表8 主要国におけるトウモロコシの需給見通し(2012年10月11日米国農務省公表)

資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、世界各国の穀物年度

大豆生産量、南米増産により前年を上回る

 2012/13年度における世界の大豆生産量は、主要生産国である米国で減産が見込まれるものの、南米で高い収益性を背景に他の作物から大豆へ転作が進むことがが見込まれることから、前年を大きく上回る前年度比11.0%増の2億6428万トンと予測された。

 輸入は、主に食肉需要の増加を背景に中国で増加が見込まれることから、同3.0%増の9346万トンと予測された。

 一方、輸出は、輸出主要国の米国で減少が見込まれるものの、南米で増加が見込まれることから、世界全体の輸出量は同6.4%増の9620万トンと予測された。

 消費は、供給量不足から米国で大きな減少が見込まれるものの、特に中国で飼料向け需要量の増加が見込まれることから、世界全体では同1.8%増の2億5876万トンと予測された。

 なお、期末在庫は、同5.1%減の5756万トンと予測された。
表9 主要国における大豆の需給見通し(2012年10月11日米国農務省公表)
資料:USDA/WAOB「World Agricultural Supply and Demand Estimates」
  注:年度は、世界各国の穀物年度

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