需給動向 海外

◆豪 州◆

2012/13年度の生乳生産、増産予測も不安要素は潜在


◇絵でみる需給動向◇


7〜8月は前年同期比3.3%増

2012/13年度(7月〜翌6月)の生乳生産量については、ABARES(豪州農業経済資源科学局)が前年度比1.3%増の960万キロリットル、デーリー・オーストラリア(DA)が同2%増の965万キロリットルとそれぞれ見込んでいるように、2年連続の増産が期待されている。

 実際に、7〜8月の生乳生産量は前年同期比3.3%増の143万キロリットルと、降水量に恵まれた前年度の流れを受けて順調な滑り出しとなっている。地域別では、牛群の回復が進むビクトリア州(同4.7%増の95万キロリットル)、肉用牛や羊から酪農への転換が進んでいるタスマニア州(同5.9%増の7万キロリットル)での増産が顕著である。

 しかしながら、豪州酪農を取り巻く状況は決して明るいものだけではない。関係者が挙げる今後の不安要素について、以下に紹介する。

(1)乳価は前年度割れの見込み

 2012/13年度の生産者乳価は、国際乳製品価格の軟化を受けて、前年度から8〜10%の安値となる乳固形分1キログラム当たり4.7〜5.0豪ドル(生乳1リットル当たり34〜36豪セント)と見込まれている。これは、酪農経営が赤字となった2009/10年度の4.98豪ドルと同程度で、過去5年では最も低い水準となる。

ただし、9月以降、国際乳製品市場は穀物価格の上昇などを背景に上昇基調での推移を見せており、乳価予測が上方修正される可能性は十分ある。

(2)穀物価格高

 米国の干ばつに端を発した穀物価格の上昇は豪州にも及んでいる。穀倉地帯であるリベリナ地域における飼料用小麦価格は、10月第2週時点で前年同期比43.6%高のトン当たり269豪ドル(2万2300円、1豪ドル=83円)、飼料用大麦価格は同18.6%高の同230豪ドル(1万9100円)と高値での推移となっている。豪州における飼料穀物の給与量は、近年増加傾向にあり、2010/11年度は1頭当たり年間1.74トンであった。このため、穀物価格の上昇が生産に与える影響は小さくない。関係者によれば、酪農家は、飼料穀物の代替として、サイレージなどの給与量を増やすなどの対応をとるとみられる。

図12 リベリナにおける飼料用小麦および飼料用大麦の価格の推移

資料:MLA
(3)酪農家の生産意欲低下

 8月に実施された酪農家への意識調査(対象340戸、全体の約5%に相当)によると、今後の経営について「明るい(Positive)」と回答した割合は53%で、2月の同調査時からは13ポイントのかなりの減少となった。これは干ばつに見舞われた2005年や2007年の調査時とほぼ同等の低水準である。また、調査対象となった酪農家のうち6%が、2015/16年度までに廃業の予定と回答するなど、乳価の下落や穀物価格高は酪農家の生産意欲に暗い影を落としている。

 今後の生乳生産動向を見通す上では、酪農家の増産意欲を左右する乳価が重要なファクターとなる。そのカギを握る乳製品の国際市場について、デーリー・オーストラリアは、差し当たりニュージーランドの生乳生産およびEU経済の動向に注目すべき―としている。

元のページに戻る