需給動向 海外

◆米 国◆

子取用めす豚頭数は7四半期ぶりに前年を下回るも、
今後の大幅な頭数減少には至らない見込み


◇絵でみる需給動向◇


8月はと畜のインセンティブが増し、子取用めす豚頭数は前年を下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS) が9月28日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、2012年9月1日現在の豚総飼養頭数は前年を0.4%上回る6742万2千頭となった。内訳をみると、肥育豚頭数は前年同月比0.4%増の6168万4千頭と、8四半期連続で前年を上回ったが、子取用めす豚頭数は同0.3%減の578万8千頭となり、7四半期ぶりに前年を下回った。干ばつにより穀物価格の高騰が始まった6月から7月にかけては、子取用めす豚のと畜頭数は横ばいで推移していた。しかし、8月はトウモロコシ価格が引き続き高値で推移したことに加え、下落していた母豚価格が底を打ったとみられたことにより、と畜頭数は前年比4.8%増の28万3千頭となった。

 母豚分娩頭数は、産子が2013年中に肉豚としての出荷が見込まれる本年6月以降、前年を下回って推移している。6〜8月期は前年同期比1.2%減の289万2千頭となった。さらに9〜11月期は同2.7%減の285万頭、12〜翌2月期は同1.5%減の282万1千頭と見込まれることから、生産者は飼料コストの上昇による収益の低下を懸念して生産頭数を抑制していることがうかがわれる。また、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が9月18日に公表した「Livestock, Dairy and Poultry Outlook」によると、2013年第1〜第3四半期にかけて、生産者は飼料コストを抑えるため、パッカーの値引き対象とならない程度に仕上げ体重を抑制すると見込んでおり、分娩頭数と枝肉重量の減少の影響で、2013年の豚肉生産量は前年比1.3%減の229億500万ポンド(約1041万トン)と予想される。
表3 豚飼養頭数の推移(9月1日現在)
資料:USDA/NASS 「Quarterly Hogs and Pigs」
  注:1〜2月については2012年と2013年を比較

飼料価格高騰の影響で農家の収益性は低下

 トウモロコシをはじめとする飼料価格高騰の影響で、養豚経営の収益は赤字となっている。米国穀物関係者による枝肉や穀物の先物価格を用いた収益の試算によると、2012年12月の肉豚1頭当たりの収益は0.55米ドルになると予想されているが、これには労働費等の生産コストやと畜場までの輸送費、処理費などの経費が含まれておらず、実質的な収益は赤字とみられる。実際、コーンベルト地帯のアイオワ州での聞き取りによれば、9月末現在、肥育経営の収益は肉豚1頭当たり15〜17米ドルの赤字となっている。また、コーンベルト以外の州でも同50米ドル以上の赤字になっているとの報道もあり、養豚経営にとって厳しい状況が続いている。

 来年の見込みについては、豚肉の供給量が減少するとの見込み等により枝肉の先物価格が高いことから、2013年7月には同40米ドル以上の黒字になると試算される。しかし、このような見込みは、来年の天候回復により飼料が先安になるとの観測を含めたものであり、逆に降雨不足等により飼料作物の不作が続く見通しとなれば、収益性は悪化する可能性もある。

※飼料穀物については40ページをご覧ください。

繁殖経営は大幅な母豚群縮小をせず、できる限り母豚の維持に努める傾向

 このように収益性が低下している中でも、繁殖経営は大幅な母豚頭数の縮小に向かわず、できる限り母豚の維持に努めている。USDA/ERSによると、多くの生産者の間で、記録的な飼料穀物価格の高騰は2012/13穀物年度にとどまるとの認識が広まっていることから、生産コストがかさんでいる現況は一時的なものとみられている。また、アイオワ州豚肉生産者協会によると、全米豚肉生産量第1位(全体の約33%を生産)のアイオワ州では、養豚経営の多くがトウモロコシや大豆といった飼料原料を自家生産していることから、シカゴ相場の高騰の影響を直接受けることなく、安定的な経営が可能であるという。さらに、米国の養豚経営は、豚舎や付帯施設、機械、種豚導入に多額の投資をしており、収益性が悪化してもすぐに経営を中止することができず、苦境に耐えつつ経営を継続せざるをえない。生産コストの高騰と収益性の悪化が豚肉の需給や価格にどのように影響していくか、今後の動向が注目される。


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