需給動向 海外

◆中国の畜産物需給◆

市場価格下落に伴い、飼養頭数が増加


1.導入増も価格下落から出荷頭数は減少

 肥育豚の導入頭数は2011年9月以降、後述する豚肉の小売価格の下落に伴って減少し、2012年に入っても前月を下回る水準で推移した。しかし、3月以降増加傾向に転じ、5月には中国政府が「緩解生猪价格周期性波動調控預案」(豚市場価格の周期的な変動を緩和する調整準備計画:2012年第9号公告。以下、「調整計画」という。当調整計画については下記機構HPを参照)を発表したことを受けて、将来的な価格上昇を見越した生産者の増頭意欲が高まった結果、6月以降、前年の水準を上回り、7月は前年同月比2.7%増の4659万頭となった。

 一方で出荷頭数は、2012年2月以降、前月を下回る水準で推移し、7月は同10.1%減の3760万頭となった。この要因は、軟調な市場を嫌い、今後の価格の回復を見込んだ出荷停滞などである。

 7月の飼養頭数は、導入頭数の増加と出荷頭数の減少の結果、同8.2%増の4億3490万頭となった。

 現地報道によると、飼養頭数の増加を踏まえ、中国政府は再度、冷凍豚肉の買入・備蓄による価格の安定を講ずる旨を発表した。これを受け、飼料価格高騰という状況も加わって、農家はこれまで増頭してきた肥育豚を順次市場へ放出し始めると見込まれる。このため、2012年下半期においては、出荷頭数は増加傾向で推移し、需要期と相まって豚肉は潤沢に流通するものと見込まれる。

【参考:調整計画概要】海外情報「豚肉価格の安定に向け、政府主導で冷凍豚肉の買入・備蓄を展開(中国)」
http://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_000615.html

図21 豚の導入頭数及び出荷頭数の推移
資料:中国農業科学院他機構調べ
  注:上記頭数は、繁殖用・肥育用を含む
図22 豚の飼養頭数の推移
資料:中国農業科学院他機構調べ
  注:上記頭数は、繁殖用・肥育用を含む

2.2012年に入り、豚肉小売価格は下落基調へ

 2012年に入って以降、7月まで豚肉小売価格は下落基調で推移している。これは、昨年の下半期から価格が高騰していたことに伴い、消費者の買い控えが進んだことなどに起因する需給緩和によるものである。5月以降は、前述の調整計画が実行されたことなどを受けて、価格高騰前の2011年前半と同等のレベルであるキログラム当たり28元程度で下げ止まって推移し、7月は同28.69元(373円:1元=13円)となった。

図23 豚肉小売価格の推移 (月別)
資料:国家発展改革委員会他機構調べ
  注:主要都市の小売市場における豚肉(赤身肉)の価格
 豚肉は中国国民が最も好む食肉であり、価格の上昇は国民生活に大きな影響を及ぼすため、中国政府もその動向について常に注視している。また、2013年3月には、共産党指導部体制の刷新が予定されており、中国政府としても、国民生活に密接に関係する豚肉の価格安定に向けて、一層神経を尖らせているものと考えられる。

 今後、年末年始の需要期より前に価格が上昇基調に転じるのか、調整計画の実効性を見極めることが重要である。ただ、中国経済が弱含みを見せる中、豚肉価格の先行きには不透明感もある。中国政府は生産者の収益性と物価上昇の相反要素を考慮しつつ、豚肉価格安定に向け適時適切な対策が試されることになる。
図24 豚肉の生産量と消費量の推移 (月別)
資料:中国農業科学院他機構調べ
  注:枝肉重量ベース

3.米国産を主体に冷凍豚肉の輸入が急増

 2012年の1〜7月期における冷凍豚肉輸入量をみると、国内小売価格の高騰などを受け、前年同期の約2倍となる31万1875トンと大幅に増加した。輸入先国別では、米国が同86.6%増の14万2730トンで首位となり、全体の輸入量を底上げしている。さらに、米国に次ぐ第2位のドイツが同約7.7倍の4万2163トンで既に前年の輸入量を超える状況にあるとともに、3位のスペインが同156.8%増の4万679トンと、ユーロ安を背景とした両国の増加が顕著である。

 豚肉輸入の急増の要因としては、国内産と比較しての価格優位性が挙げられる。中国では、トウモロコシや大豆かすなどの飼料需要が高まっており、養豚での生産コストを引き上げている。さらに、ドル安やユーロ安の恩恵もあり、輸入豚肉の価格優位性は強まる環境にあり、さらに今年の5月には、英国との豚肉輸入に係る政府間協定が締結されるなど、外国産豚肉の輸入の伸びしろは大きいものと考えられる。現状、輸入冷凍豚肉の消費量に占めるシェアは国内産と比較してわずか(数%)であるものの、為替市場や国内小売価格の影響が顕著である輸入豚肉の今後の動向を注視する必要がある。
表8 冷凍豚肉の国別輸入量
資料:GTI社 「World Trade Atlas」
  注:HSコード0203
図25 冷凍豚肉の輸入量の推移
資料:GTI社  「World Trade Atlas」
  注:HSコード0203

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