需給動向 海外 |
米国産トウモロコシ価格高騰を受け、
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米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は9月12日、全国作況調査に基づく単収予測を踏まえ、2012/13穀物年度(9月〜翌8月)における国内外の主要農作物の需給見通しを公表した。
◇米 国◇生産者平均販売価格は30セント値下がり 注目された単収については、コーンベルト地帯で高温・乾燥の影響により単収が減少となったものの、ミシシッピ州など南部では天候に恵まれたため単収が増加するものと見込まれた。これにより全州の単収はわずかな下方修正にとどまった(122.8ブッシェル)。トウモロコシの収穫面積は先月の値が据え置かれたため、生産量は107億2700万ブッシェルにとわずかに減産となった。
バイオエタノールの混合義務の免除を要請 長引く干ばつと高温の影響により、6月以降のトウモロコシの作況が著しく悪化する中、サンプリング調査の結果を基にUSDAが8月10日に公表した2012/13年度産のトウモロコシの単収見込みは、前年度のエーカー当り147.2ブッシェルを16%下回る同123.4ブッシェルとなった。この結果、国内生産量も前年度を大きく下回る108億ブッシェルまで落ち込むことが見込まれ、需要の調整が行われても期末在庫は史上最低となる6億5620万ブッシェルと見込まれた。9月12日に公表した見込みでは、単収見込みがさらに引き下げられ同122.8ブッシェルとされた。市場価格が高いことによる需要の減少により期首在庫の見込みは1億6千万ブッシェル積み増されたが、期末在庫の見込みは7億3300万ブッシェルと史上最低水準であることには変わりがない。在庫水準が低いことにより、需給ひっ迫が強く、6月中旬以降急上昇したトウモロコシの市場価格の高止まりの長期化が懸念されている。 2012年、2013年のバイオエタノールの状況およびトウモロコシの需要量2012年のバイオエタノールの義務数量は132億ガロンだが、9月から12月までにガソリンとの混合が必要とされる数量は、56億ガロン程度と推定される。一方、昨年から繰り越された再生可能燃料同定番号(RIN)は26億ガロン相当程度と推定されている。トウモロコシの価格高騰により、一般にエタノール工場の採算性が悪化しているため、仮に、このRINの繰越分を最大限に活用するとすれば、今年中に新たに製造することが必要なバイオエタノールは30億ガロン程度であり、26億ガロン分の製造に必要な約9億4500万ブッシェルのトウモロコシが余剰分として生じてくることになる。(1ブッシェルのトウモロコシから2.75ガロンのエタノールを製造。)RINは取引可能であり、豊作が予想された6月には1ガロン当り1セント程度で取引されていたが、トウモロコシ価格の上昇に伴って価格が急上昇し、7月末時点で1ガロン当たり4.65セントとなり、更に上昇が続いている。このように、年内は、繰り越されたRINを使用することにより、ある程度需給が緩和する可能性があるが、この場合、2013年に繰り越されるRINがなくなるため、義務数量の調整が行われない場合には、翌年の義務数量138億ガロンの製造が不可避となる。翌年の新穀が出回り始める時期を10月と仮定すると、1月〜9月で必要なトウモロコシは約37億6400万ブッシェルとなり、これに2012年9月〜12月に必要となる10億9千万ブッシェルを加えると、48億5400万ブッシェルとなる。この数量は、8月10日の農務省の試算よりも多く、仮に2012年に繰り越し分のRINを全て使用し、エタノールの製造量を減らしたとしても、2012/13年度のトウモロコシ需給は極めてタイトであると言わざるを得ない状況となっている。 一方、仮にEPAがエタノールの使用義務を免除した場合、需給表上はひっ迫感がなくなるが、ガソリン業者(ブレンダー)がエタノールの混合を削減又は停止するかどうかは、(1)現在のガソリンはエタノールでオクタン価を上げ、取引基準を満たしているため、エタノールを使わない場合、ガソリンの精製業者は施設の調整を行う必要があり、これに6ヶ月程度が必要、(2)EPAのガソリン蒸気圧の上限への対応、(3)エタノールの購買契約方式、(4)原油価格とエタノール価格との関係、の主に4つの要因について、エタノールを混合しないことが経済的に優位である必要があるとみられる。 今年のトウモロコシについては、干ばつにより穀粒の充実が悪いなどの品質面での懸念もあり、今後の動向を注視していく必要がある。 ◇世 界◇トウモロコシ主要生産国で生産量を下方修正2012/13年度における世界のトウモロコシ生産は、前年度と比べ、アルゼンチンおよび中国で増産が見込まれるものの、米国や欧州南部(ウクライナを含む)の干ばつの影響により生産量の減少が見込まれることから、前年度比4.1%減の8億4106万トンとされた。輸入量は、中国で減少が見込まれることから、同8.5%減の8862万トン、一方、輸出量は、豊作が見込まれる南米で増加するものの、米国の生産量が6年ぶりの低水準に落ち込むことから、世界全体の輸出量は、同11%減の9101万トンと予測された。 消費量は、生産量の減少を背景に米国および欧州で飼料向けの減少が見込まれるものの、中国の消費量が伸びるためわずかに減少(同0.9%減)し、8億5670万トンと予測された。 なお、期末在庫は、同11.2%減の1億2395万トンと予測された。 大豆生産量、南米増産により前年を上回る2012/13年度における世界の大豆生産量は、干ばつの影響により米国および中国で生産量の減少が見込まれるものの、南米で前年を大幅に上回る生産量の増加が見込まれることから、前年度比8.9%増の2億5813万トンと予測された。輸入は、米国および中国などで増加が見込まれることから、同1%増の9178万トンと予測された。 一方、輸出は、生産量の増加が見込まれる南米で増加が見込まれることから、世界全体の輸出量は同4.1%増の9374万トンと予測された。 消費は、米国で搾油向け消費量の大きな減少が見込まれるものの南米および中国で増加が見込まれることから、世界全体ではわずかに増加し、2億5673万トンと予測された。 なお、期末在庫は、同1.0%減の5310万トンと予測された。
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