需給動向 海外

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豚枝肉価格は高騰が続く一方、養豚経営は
飼料穀物の供給不足を懸念


◇絵でみる需給動向◇

2012年7月の豚枝肉卸売価格、前年同月比14.5%高

 欧州委員会によると、EUにおける7月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり178.36 ユーロ(1万7836円:1ユーロ=100円)と前月から5.6%上昇し、前年同月比で14.5%高となり、2004年にEUが24カ国に拡大して以降、最も高い水準となっている。ユーロ発足以来、英国で口蹄疫が発生した2001年の価格(100キログラム当たり約200ユーロ(2万円))が最も高いが、8月27日〜9月2日の週平均価格では100キログラム当たり185 ユーロ(1万8500円)を上回るなど、過去の最高値に迫る勢いでの価格高騰が続いている。

 この価格高騰の要因としては、需要面ではユーロ安に支えられた好調な域外輸出と、夏季の好天による域内需要の高まりがあげられ、また、供給面ではと畜頭数が減少していることが挙げられる。

 枝肉価格の上昇は域内の各国で起きている。特にドイツでは8月から9月初旬の間、100キログラム当たり25ユーロ(2,500円)と急激な価格上昇がみられており、近隣のオランダ、ベルギー、オーストリアにも影響を及ぼしている。イタリアでは、熱波による肥育豚の生育不順が市場流通に遅れをもたらしており、6月中旬から100キログラム当たり50ユーロ(5,000円)の価格上昇が起きている。

図7 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

配合飼料価格は上昇の傾向

欧州委員会によると、EUにおける6月の豚用配合飼料価格は1トン当たり298.75ユーロ(2万9875円)と前月から2.4%上昇し、前年同月と比べて1.3%の上昇となり、2011年4月以来の最高値を更新した。飼料原料別では、トウモロコシ価格には大きな変動は無いが、大豆かす価格が上昇傾向にあり、配合飼料価格が上昇に転じた2012年1月の価格と比較すると約15%上昇している。

 なお、配合飼料価格全体では、今年1月と比較して約14%の価格上昇となっている。

 また、欧州委員会が発表した中期予測によると、EU域内の穀物供給量は前回の報告から下方修正され、次年度(2012年7月〜翌6月)の収穫予測量は今年度と比較し、穀物全体で800万トン減少すると見込まれている。穀物の種類別では、トウモロコシの減少が最も大きく、ハンガリー、ルーマニアおよびイタリアなどの欧州南部諸国で、乾燥と熱波による収量減の影響があるとしている。

 このような状況を受け、英国養豚協会は、天候不順などを原因とした飼料価格高騰により、来年は世界的に豚肉あるいはベーコンが供給不足に陥るとの予想を発表し、これに対する各国政府の関心も高まっているとした。

 同協会のプレスリリースでは、米国における養豚農家支援のための豚肉買い上げや、中国における価格上昇局面での放出用の豚肉の公的備蓄増強の事例を紹介し、飼料価格高騰に対する養豚農家の世界的な規模縮小傾向と今後の供給量の減少に警鐘を鳴らしている。 また、飼料価格高騰による生産コストの上昇分を早急に小売価格に転嫁し、生産者価格に反映しなければ、EUの養豚が立ち行かなくなると、養豚業界の窮状を訴えている。

 EUでは、現在のところ、豚肉価格の上昇分が飼料価格の上昇分を埋め合わせているために、飼料価格の上昇が経営へ与える影響は深刻ではない。しかし、トウモロコシ、大豆かすを始め飼料原料全般が高値となって生産コストを押し上げる中、経済状況が不安定な状況での豚肉の高値が続くと需要を冷え込ませる可能性もあり、EUの養豚経営は厳しさを増していくものとみられる。
図8 EUにおける豚用飼料価格の推移
資料:欧州委員会


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