7月輸出量は増加するも、豪ドル高が収益性を圧迫
豪州農漁林業省(DAFF)によると、2012年7月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積み重量ベース)は8万2514トン(前年同月比4.0%増)となり、前月比でも1.1%増となった。また、2012年1〜7月の輸出量は、前年から横ばいの53万2168トン(前年同期比0.4%増)となっている。
7月輸出量を国別でみると、増加したのは日本向け3万1028トン(前年同月比33.3%増)、米国向け1万7036トン(同8.7%増)のほか、中国向け1,065トン(同184%増)などである。日本向けは震災の影響から、米国向けは米国内での干ばつによる国内生産増から、輸出が停滞した前年同月と比べて増加となった。中国向けは単月で過去最高となっている。
他方で、韓国向け9,553トン(同17.2%減)、インドネシア向け3,174トン(同49.0%減)ロシア向け2,422トン(同39.5%減)など、アジア諸国を除いて概ね減少となった。
7月輸出量は増加したものの、豪ドル高が懸念材料となっている。豪ドルの対米ドル相場を見ると、5月、6月の2カ月間は等価(1豪ドル=1米ドル)を割り込む水準で推移していたが、7月は月平均が1豪ドル当たり1.03米ドル、8月以降は同1.05米ドルの水準と、再び上昇している。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、豪ドル高が主要市場での牛肉需要の低迷と相まって、牛肉輸出産業の収益性を圧迫しているとしている。
図4 牛肉輸出量と豪ドル対米ドル相場の推移 |
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資料:DAFF「Red Meat Export Statistics」、RBA
注:子牛肉含む、船積み重量ベース |
表4 地域・国別牛肉輸出量 |
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資料:DAFF |
肉牛需給予測は日本および韓国向け輸出量が下方修正される
MLAは7月、今年1月公表の肉牛需給予測の期中改定版を公表した。
これによると、2012年6月末時点における飼養頭数は2960万頭(前年比3.8%増)となり、1月予測(3000万頭)から下方修正された。しかし、これまでのところ牛群再構築の動きは継続されている。これは、雌牛のと畜割合の減少に表れており、2011年は1996年以来最低の43%、2012年1〜5月でも44.5%と、2001年から2010年の平均(47.4%)と比較すると低水準となっている。
2012年のと畜頭数(成牛)は740万頭(同1.9%増)と予測される。今年前半にクイーンズランド州やニューサウスウェールズ州を襲った豪雨、5月と6月の食肉処理加工場の一時閉鎖などを理由に、1月予測(755万頭)から下方修正された。
しかしながら、今後、気候は乾燥が予測されていることや、牛群再構築の動きは緩やかになり未経産牛、経産牛ともに出荷増が予測されることなどから、今年後半にはと畜頭数の増加が見込まれ、2012年通年では前年からわずかながらも増加する予測となった。
生産量(成牛、枝肉重量ベース)についても1月予測(215万2千トン)から下方修正され、213万9千トン(同2.5%増)と予測される。前年との比較では、と畜増に加え、良好な飼養条件から平均枝肉重量の増加(前年から1頭当たり1.7kg増)が見込まれることから、増加の予測となっている。
牛肉輸出量(船積重量ベース)は96万トン(前年比1.1%増)と、1月予測(97万5千トン)から下方修正された。これは、日本、韓国向けの下方修正によるものである。両市場では、米国産牛肉の輸入増や国内生産の増加が影響して、日本向けは1月予測から5千トン減の32万5千トン(同5.0%減)、韓国向けは1月予測から2万トン減の10万5千トン(同28.2%減)と予測される。
一方、米国向けは25万トン(同49.0%増)と予測され、1月予測から3万5千トン上方修正された。国内生産の減少から、豪州産加工用牛肉への引き合いが強まっていることによる。このことは、日本や韓国、ロシア、インドネシアなど他国向け加工用牛肉の減少にもつながっている。
表5 豪州肉牛産業の見通し |
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資料:MLA |
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