飼養頭数は1億頭を割り過去最低に
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が7月20日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2012年7月1日現在の飼養頭数は、前年を2.2%(220万頭)下回る9780万頭となった。これは、同調査においてデータが確認できる1973年以降最低頭数であり、2007年以降前年を下回って推移している。昨年の干ばつで牧草地が被害を受けた影響を引きずる形となった。
飼養頭数を部門別にみると、肉用種の繁殖雌牛は3050万頭と前年を2.9%下回った(表1)。更新用未経産牛(肉用種)の頭数は前年並みであるが、中期的には減少傾向となっている。また、2012年の子牛生産頭数は前年比2.3%減の3450万頭になると見込まれることから、飼養頭数は今後も減少することが予想される。特に、昨年の干ばつによって被害を受けたテキサス州やネブラスカ州の牧草地は、今年の6月下旬からの干ばつが追いうちをかけたことにより、直ちに回復を見込むことが困難となっていることから、飼養環境は前年よりも悪化しているといえる。今回の干ばつの影響は2013年まで続くとみられている。
図1 牛の飼養頭数の推移 |
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資料:USDA/NASS「Cattle」
注:各年7月1日現在 |
表1 部門別飼養頭数の推移(各年7月1日現在) |
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資料:USDA/NASS「Cattle」
注1:表中の*1は500ポンド以上、*2は500ポンド未満
2:2012年の子牛生産頭数は推定値 |
フィードロット業者は高騰するトウモロコシ価格で苦戦
7月の肥育素牛価格は、前年に比べ2.7%高、前月比では12.7%安の100ポンド当たり144.0ドル(キログラム当たり約251円、1米ドル=79円)とかなり大きく低下した(USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」7月17日公表)。フィードロット業者は、2012年に入ってから高値で推移する国内肥育素牛の購入を控える傾向にあるとみられ、6月以降の肥育素牛価格下落に影響を与えたと考えられる。
また、肥育牛価格は、前年比では2.8%高くなっているものの、前月比では4.4%安の100ポンド当たり114.0ドル(キログラム当たり約199円)となっている。6月下旬からの干ばつの影響でトウモロコシ価格が上昇する中、今後フィードロット業者は飼料費の上昇による生産コストの上昇分が回収できず、経営状況が悪化すると推察される。
なお、牛肉卸売価格は、前年比5.4%増、前月比4.7%安の100ポンド当たり188.0ドル(キログラム当たり約327円)となった。
図2 牛肉卸売価格、肥育牛、肥育素牛価格の推移 |
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資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」
注1:肥育素牛価格は、ミディアム、600〜699ポンド、オクラホマシティ市場
2:肥育牛価格は、チョイス級、1100〜1300ポンド、ネブラスカ
3:牛肉卸売価格は、チョイス級、600〜900ポンドのカットアウトバリュー |
カナダ、メキシコからの生体牛輸入は増加傾向で推移
ERSによると、2012年1〜5月までの米国の生体牛輸入は、メキシコが前年比29.1%増、カナダが同7.0%増となり、生体牛輸入全体では同21.6%増となった。
7月中旬時点での業界関係者からの聞き取りによると、穀物高の影響を緩和するため、引き続きカナダやメキシコからの生体牛輸入が増えているとする。ERSは2012年におけるカナダおよびメキシコからの生体牛輸入を217万5千頭と見込んでおり、2013年も引き続き両国からの堅調な輸入が予想されるとした。 |