需給動向 海外

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生乳価格下げ止まる


◇絵でみる需給動向◇


 LTO(オランダ農業園芸組織連合会)によると、域内主要乳業メーカー17社の6月の平均生乳価格(100キログラム当たり)は、前年比7.4%安の32.09ユーロ(3,113円:1ユーロ=97円)となり、先月の31.38ユーロ(3,044円)から上昇に転じ、2011年11月以降継続した下落に歯止めがかかったこととなった。しかし、今回の上昇は、フランスの乳業メーカーの値上げが要因で、フランス以外の国ではほとんどが引き下げもしくは現状維持であった。

 また、LTOは7月の牛乳・乳製品市場について、サマーバケーションの時期に加え、ラマダンの時期であり6月以降の市場の動きも鈍いとコメントをしている。

 主要乳業メーカーの価格(100キログラム当たり)をみると、ミコベル(ベルギー)は、前月1.05ユーロ安の27.45ユーロ(2,663円)、ノルドミルヒ(ドイツ)は同1ユーロ安で29.22ユーロ(2,834円)、その他全てのドイツ乳業メーカーで引き下げを行った。一方、フランスは全ての乳業メーカーが引き上げを行っており、ラクタリスは同4.14ユーロ高の34.14ユーロ(3,311円)となった。フランスの引き上げは、季節修正によるものである。また、ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、生乳価格の低迷は、EUにおける生乳生産の増加のみではなく、ニュージーランドが第1四半期で前年比の7.7%増、米国が5月までで3.5%増など国際規模で生乳生産量の増加の影響があるとコメントしている。

 また5月の生乳出荷量は、ZMBによるとEU全体で1302万トンとなり、前年比2.1%増となった。5月までの国別生乳出荷量をみると、前年と比べて大きく増加しているのは、ハンガリー、ポーランドなど東欧諸国で、EU全体では同2.3%増となっている。

図8 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
 注:域内主要乳業17社の平均値
図9 EUにおける生乳出荷量
資料:ZMB
 注:2012年の数値は暫定数値
表8 EUにおける主要国別生乳出荷量
資料:ZMB
注1:2012年は暫定値である。

バター価格反発

 ZMBによると、6月のバター価格(100キログラム当たり)は前年比38%安の260ユーロ(2万5220円)となり、5月の242ユーロ(2万3474円)から反発し2011年9月以降継続した下落に歯止めがかかった。しかし、依然として価格は低く、また7月も横ばいの見込みである。

 バター生産量は、2012年1〜4月EU全体で前年比4.8%増と増加した。バターおよび脱脂粉乳の生産量が増加しており、生乳生産量の増加を両製品が吸収している。国別でみると、統計が公表されている中で最も生産量の多いフランスで同3.4%増、次ぐポーランドで同0.9%増、英国で同13.5%増となっている。

 バターの民間在庫量は、低価格を反映し7月31日までに12万6千トンまで積み上がっている。在庫を最も多く抱えている国は、オランダで3万9千トン、次いでデンマーク2万2千トン、アイルランド2万2千トンとなっている。ZMBは、バター価格が低水準で推移していることおよび民間在庫が積み上がっている要因について、(1) EU域内の生産増加、(2) EU域外の生産増加(米国で前年比7.8%増、ウクライナで5.7%増)(3) 最もバターを輸入しているロシアで生産増加、(4) 国際価格にEU産バターの競争力が低いことを挙げている。
図10 バター卸売価格の推移
資料:ZMB
図11 バター民間在庫量(7月31日現在)

資料:EUCOLAIT
表9 EUにおける主要国別バター生産量

資料:ZMB
注1:2012年は暫定値である。
注2:ドイツ、2012年数値なし


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