岩手県における日本短角種の |
|
岩手県農林水産部畜産課総括課長 渡辺 亨 |
1.日本短角種の現状等1)生産状況 2.本県の取組み1)日本短角種の改良本県では昭和40年より県独自に日本短角種の産肉能力検定を始め、昭和45年には国から産肉能力検定場所として滝沢村の畜産研究所が認定され直接検定を、昭和47年に間接検定を開始し、約50年にわたり種雄牛の改良に取り組み、これまで1,095頭の産肉能力検定を行い、717頭を種雄牛として登録し供用しています。 改良については、「岩手県家畜改良増殖計画書(平成23年3月)」で具体的数値目標を設定、改良を進め(表1、表2)、種雄牛については、赤身肉である品種特性を十分に発揮させるため、肉の締まり、きめ、枝肉重量、飼料利用性の改良に取り組んでおり、枝肉重量等については、その成果も出ています。(表3)
また、平成15年度末には「日本短角種データベース利用委員会」を設置し、この中で日本短角種の振興に係る関係者の共有財産として「血統、枝肉情報、DNA等」のデータベースを構築し、日本短角種集団の近交係数や育種価を独自に算出し、飼養頭数に伴って減少する牧野への種雄牛配置や直接検定候補牛の選抜に利用することで、従来の産肉検定成績に加えて改良効果の向上を図っています。
(平成16年度成果) 肥育全期間でトウモロコシサイレージを主体とした粗飼料を多給することにより、慣行肥育と同等の発育・産肉成績を得られるとともに、高い粗飼料自給率を確保することができる。また、皮下脂肪中で健康に良いとされる脂肪酸(αリノレン酸など)の割合が増加することがわかりました。 (3)その他の試験研究成果 @「細断型ロールベーラによる飼料用トウモロコシの省力的収穫調製技術」(平成15年度成果) A「ライコムギサイレージを活用した日本短角種の自給飼料主体肥育技術」(平成20年度成果) B「日本短角種枝肉脂肪中の脂肪酸組成に影響を与える要因の解析」(平成21年度成果) 3)経営安定対策 平成22年3月、国は「肉用牛肥育経営安定特別対策事業」の事業見直しの際、全国一律の制度に改正し、地域独自に算定していた日本短角種は肉専用種として分類されました。 このため、県では日本短角種に係る経常収支の状況(生産費−粗収益=赤字額)を県独自で算定し、当該赤字額の8割の額から、国の制度による補てん金を控除した額について補てんする「日本短角種肥育経営安定特別対策事業」(積立割合は県:市町村:農協=2:1:1)を平成23年度に創設し、23年4月から24年12月までに829頭の日本短角種肥育牛に対し1521万円を交付しています。 3.産地での取り組み1)生産支援日本短角種の主産地を抱える新岩手農協では、23年度から繁殖・肥育素牛導入や自家保留に対する経費助成として1頭当たり1万円の補助を行い、生産者を支援しています。 2)販売対策 久慈市:首都圏でのPRイベントの開催など、販促の取組み強化を行うとともに地元の会社と商品開発を行い積極的に販路拡大。 岩泉町:地元を中心に産直や宅配による販売を行っている他、第三セクターを通じて短角牛肉及び食肉加工品の製造販売、首都圏等での販売促進を展開。 二戸市:生産農家が食肉流通業者と契約を交わし、年間を通じて市町村内のレストラン等に安定的に供給。 盛岡市:“もりおか短角牛”として、市内のレストランや焼肉店と提携したスタンプラリーや食肉業者等との連携によるハンバーグ加工等、地産地消の消費拡大策を展開。 4.今後の展望近年、子牛価格や枝肉価格の低下等により、後継者が不足してきており、頭数の減少が進んでいますが、日本短角種の肉質は赤身中心で脂肪が少なく、健康志向や安全・安心を求める消費者の根強いニーズがあることから、県内各生産地では、地元企業などと連携した商品開発や需要の掘り起こしのほか、新たな販路開拓に取り組んでおり、今後その成果が期待されます。また、国では『酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針』において「健康志向の高まりを背景とした消費者ニーズに対応し、脂肪交雑の多くない日本短角種など地域の飼料資源等を活用し、品種特性に応じた生産を推進する」としていることから、本県でも国の振興施策の充実について要望しながら、本県の肉用牛生産の発展と共に歩んできた日本短角種が、地域の畜産農家によって今後も確かな希望をもって生産に取り組んでいけるよう、産地の市町村や農協等と連携して支援していきます。
|
元のページに戻る