国際酪農連盟 |
|
国際酪農連盟日本国内委員会 常任幹事 細野 明義 |
1.国際酪農連盟の設立と使命 国際酪農連盟(International Dairy Federation; IDF)は、1903年、世界規模での酪農乳業界を代表する唯一の団体としてベルギー国ブルッセルにおいて設立された。その目的は、利益を追求せず、国際的な酪農乳業分野における科学的、技術的および経済的発展を推進することにある。IDF憲章とも言うべき独占禁止宣言文には“IDFならびにIDFの諸委員会に関わる我々は、自らの名において独占禁止法に抵触するいかなる話や、活動や、行為に加わらない”と明記しており、非政治的、非利益国際団体であることを誓っている。
2.国際酪農連盟日本国内委員会1)誕生の経緯国際酪農連盟日本国内委員会は1952年発足の日本酪農科学会議(Japan Dairy Science Council; JDSC)を前身母体にしている。1956年、ローマで開催された第14回国際酪農会議において日本のIDF加盟が認められた。それに伴い、JDSCの名称を日本国際酪農連盟(National Dairy Federation of Japan; NDFJ)と改称し、初代会長に東京大学教授であった佐々木林治郎氏が就任した。二代会長に就任した中江利郎氏(日本乳業技術協会理事長)はNDFJの組織基盤の充実に渾身の努力を払った。三代会長に就任した東京大学教授であった津郷友吉氏はNDFJを一層発展させるべく法人化への努力を払い、1962年に社団法人の認可を農林大臣より受けるに至った。また、1972年には東京で年次会議(現在のワールド・デイリー・サミット)を開催し、国際社会におけるNDFJの声価の向上に努めた。津郷友吉氏に代わって四代会長に就任した檜垣徳太郎氏(当時参議院議員)はNDFJの中央官庁や畜産振興事業団(現 農畜産業振興機構)との関わりを強化し、畜産振興事業団から出資を受けるなどNDFJの財政の強化に努めた。また、1991年にはNDFJにとって2回目のホスト開催となるIDF年次会議を東京で盛大に執り行っている。こうした活動を通じてNDFJが我国における酪農・乳業の発展に側面的貢献を果たしてきたことの意義は大きい。 一方、2000年に森喜朗内閣のもとで行政改革大綱が公表され、翌年には行政改革推進本部が置かれ、それまでの1府22省庁は1府12省庁に再編された。この編成に呼応して、酪農分野の諸団体にも再編・統合が求められ、農林水産省主導のもとに乳業団体総合の検討がなされた。NDFJも例外ではなく、社団法人日本国際酪農連盟たるNDFJは財団法人日本乳業技術協会と2004年中に統合を完了することが決定された。それを受け、2004年4月、NDFJは社団法人を返上し、(財)日本乳業技術協会の中に独立した組織として位置づけられて新たな歩みを始めた。呼称も従来の(社)日本国際酪農連盟を改め国際酪農連盟日本国内委員会(Japanese National Committee of International Dairy Federation; JIDF)とし、会長に佐野宏哉氏(元水産庁長官)が就任した。組織上は(財)日本乳業技術協会の常務理事が国際酪農連盟日本国内委員会の常任幹事を兼ねることにより、法人の一体性を具現させたかたちをとるが、活動的にはJIDFの独立性と独自性は担保されている。2013年4月1日より日本乳業技術協会は財団法人から公益財団法人に移行予定になっているのに伴い同法人内でのJIDFの位置付けは図2に示すようになるが、JIDFの活動の独立性と独自性は従来となんら変わることはない。現在、海野研一氏(元農林水産省構造改善局長)がJIDFの会長に就任している。
2)活動内容 3.ワールド・デイリー・サミット20131)目的と使命国際化が進む中で、我国の酪農・乳業が広く日本国民の生存の在り方に係わっていることの認識に立脚するとき、これからの酪農・乳業は、食料需給、飼料、環境、エネルギー、家畜の疾病予防と家畜福祉などの諸問題について国際社会と協調していかなくてはならない。JIDFがホスト国になりIDFワールド・デイリー・サミット2013を開催し、我国のみならず、同じ課題を抱える世界の国々の人達とそれぞれの産業技術やシーズ研究の成果を発表し、話合うことは諸課題の解決の上で極めて重要である。世界中から関係者が横浜に集い、日本はもとより多くの国々における酪農・乳業界に活力が生まれる結果を導き出すことを最大の目的としている。とりわけ、我国が2011年3月11日に蒙った東日本大震災で罹災された人々はもとより、日本人の多くが強く感じた心の痛手と失速力を回復させる上でこのサミットが大きな力を与えてくれることを願い、また同時に世界各国から寄せられた尊い支援に対し報恩の証としてこのサミットを捉えたいとする関係者も多い。この意味からも今年開催される横浜サミットの意義は極めて大きい。 2)開催に至る経緯 日本がIDFに加盟して以来、前記したように過去2回にわたりIDFワールド・デイリー・サミットを開催し、IDFの一員である確固たる地位を国内外に築き上げてきた。さらに、2004年に(財)日本乳業技術協会の中に独立した委員会としてJIDFが誕生して以来、その活動は一層活発になり、多くの日本人関係者がIDFワールド・デイリー・サミットに参加し、また講演等の機会が多くなったことに加え、IDF本部ならびに各国の関係者との人的交流が以前にも増して活発になってきた。 さらに、2006年には学術上の優れた業績を通じて世界の酪農乳業の発展及びIDF事業に貢献した人に対して授けられるIDF賞を上野川修一博士(東京大学名誉教授)が授賞し、アジアから初めての受賞者となった。また、前記したように2007年には腸内細菌に関して最も優れた研究業績を挙げた科学者に授与されるIDFメチニコフ賞が光岡知足博士(東京大学名誉教授)に授与された。これらの慶事はJIDFの活動の中でも最も輝かしい実績であり、各国に強い印象を与え、JIDF会員からもさらなる発展を願い、IDFワールド・デイリー・サミットの開催を期待する機運が高まった。同時に、IDF事務総長からも日本でワールド・デイリー・サミットの開催について度々打診があり、JIDFとして真剣に検討するに至った。結論として2009年にベルリンで開催されたIDF総会で2013年に横浜で開催することが正式に決定された。 3)サミット内容の概要 IDFワールド・デイリー・サミット2013は今年10月28日(月)〜11月1日(金)の5日間、パシフィコ横浜及びパンパシフィック横浜ベイホテル東急(共に、横浜市西区みなとみらい)でJIDFとIDFが共催のかたちで開催する。後援は厚生労働省、農林水産省、独立行政法人農畜産業振興機構、ならびに横浜市となっており、現在開催に向けて諸準備がなされている。
世界の酪農・乳業のトップリーダーによるリーダーズフォーラムを始め、酪農政策・経済、酪農科学、子供とミルク、農場管理、環境対策、家畜の健康、栄養・健康、マーケティング、食品安全の分野における講演、ポスター発表さらにはツアー、展示など多彩なプログラム構成になっている(表1)。
|
元のページに戻る