海外情報  畜産の情報 2013年4月号

米国農畜産業の展望
〜2013年農業アウトルック・フォーラムから〜

調査情報部 山神 尭基、前田 絵梨 畜産経営対策部 交付業務課 岡部 修司




【要約】

  米国農務省は、2013年米国農業観測会議において各畜種の2013年の需給動向について以下のとおり予測した。

 牛    肉:牛肉生産量は飼養頭数の減少が見込まれることから前年比3.2%減。
         輸出は過去最大となった前年を0.4%下回る。肥育牛価格は供給減に
         より前年の高値をさらに上回ると予測。

 豚    肉:豚肉生産量は飼料価格の下落が見込まれることにより枝肉重量が増
         加するとみられることから同0.7%増、輸出は同1.4%増、肥育豚価格は
         前年を上回ると予測。

 鶏    肉:鶏肉生産量は同0.7%増となり、過去最高を更新。鶏肉卸売価格(丸ど
         り)は過去最高となった前年をさらに上回ると予測。

 酪    農:生乳生産量は同0.6%増の9119万2000トンと過去最高を更新。生乳生
         産者販売価格は、前年と同水準となるが、飼料価格高の影響で酪農家
         1戸当たりの純現金所得は、同14.5%減の8万3900ドルと予測。

 トウモロコシ:作付面積は同0.7%減の9650万エーカー。単収は1エーカー当たり
         163.6ブッシェル。この結果、生産量は前年を34.8%上回り過去最大。
         消費は飼料等向けおよびエタノール向けなど全ての用途で増加。期末
         在庫は、前年を大きく上回り、生産者平均販売価格は4.80ドルに下落
         と予測。

1.はじめに

 米国農務省(USDA)は2月21〜22日の2日間、農業アウトルック・フォーラム(Agricultural Outlook Forum 2013、以下「フォーラム」という。)を開催した。今年のフォーラムは「21世紀のリスク管理」をテーマに掲げ、2013年の米国産農畜産物の需給見通しのほか、食品の安全、貿易、栄養問題、水問題など様々な分野について有識者による発表が行われた。

2.21世紀のリスク管理および米国農業の展望

(1)ヴィルサック農務長官による基調講演

 フォーラム開催に際し、リスク管理をテーマに、米国農業が直面している様々なリスクについて、ヴィルサック農務長官による基調講演が行われた。

 冒頭、ヴィルサック農務長官は、米国政府の財政問題を取り上げ、「人為的なリスク」とし、農政も財政問題にさらされていることを述べた。3月1日に開始される見込みの「財政強制削減」に関しては、年間5〜6%の歳出削減は、実際には6カ月間での対応となることから実質10〜12%の削減に値すると述べ、3月27日に期限切れを迎える現行の2013会計年度暫定予算にも触れ、食肉検査などの食品安全分野への影響について懸念を示した。

 また、貿易に関するリスクとしては、ロシアとのラクトパミン(飼料添加物)問題を挙げ、ロシア政府の対応は、科学的な根拠に基づかないものであり、国際法に反するものと批判した。

 このほか、干ばつについては対策委員会を設置し、脆弱な土地を保護することを目的とした環境保全プログラム(CRP)地域の規制緩和や被覆作物の作付け奨励などを行っていることを紹介した。また、気象はコントロールできないが対策を講じることはできるとし、米国農務省は、例えば気象パターンで病害の発生を予測し対処する、「気象変動適合計画(Climate Change Adaptation Plan)」を設置し、リスク管理に取り組むことなどを述べた。併せて、2012年に新農業法が制定されなかったことで、干ばつの被害を受けた生産者への十分な支援ができない状況にあるとし、生産者が経営的に苦しい状況に立たされていると訴えた。さらに、新農業法の制定無しでは地方の経済が損なわれ続ける恐れがあると述べ、議会の責任を訴えた。

 最後に、ヴィルサック農務長官は、技術革新・作物生産・加工製造・輸出の各面において、今後の米国経済にとって弾みとなるのは農業であるとし、米国農業が直面している様々なリスクを管理することが求められているとまとめた。

注1:本文は、2月21日の基調講演でのヴィルサック農務長官の発言であることから、同日
   以降の状況の変化は考慮していない。

注2:文中の「財政強制削減」は3月1日に開始されている。

(2)グラウバー首席エコノミスト講演

 USDAのグラウバー首席エコノミストにより、米国農業の展望について講演が行われた。

 同氏は、米国は歴史的な干ばつに見舞われたにも関わらず、2012年の米国農業経済は堅調であり、農家収入も農業輸出額も過去最高に迫る水準であったと述べた。2013年の農業輸出額は、中国への輸出額は前年を下回るものの2年連続で最大の輸出先国になること、2位のカナダへの輸出額は前年を上回ると見込まれ、2013年の輸出額は過去最高の1420億ドルとなることが見込まれるとした。

 2013/14年度産トウモロコシの生産量見込みについては、昨年のフォーラムの再現とみる向きがあるかもしれないとしながらも、対前年比34.8%増まで回復するとした。また、この場合、エタノール仕向けは2012/13年度を上回ると見込んだ。しかしながら、米国のガソリン消費量が2008年以降減少傾向にあることやエタノール混合率が10%まででとどまっていることから、今後2〜3年間はトウモロコシのエタノール仕向けは大幅には拡大しないとの見解を述べた。

 講演の終わりに、グラウバー首席エコノミストは、トウモロコシおよび大豆生産量の拡大により飼料コストの低下が見込まれることから、2013年は畜産生産者にとって生産を行いやすい年になるとの展望を述べつつも、不安要素として、2013年が再び干ばつとなる可能性を挙げた。仮に、2013年も干ばつとなった場合、畜産生産者は、大規模な経営縮小や生産活動が困難な状況になりかねないとの懸念をもって締めくくった。

(3)パネル・ディスカッション『今日の市場におけるリスク管理』

 農業は、農産物価格の変動のほか、2012年の干ばつに象徴されるような気象状況など不確定要素により、計画していた通りに生産できないことが多々あるため、農業分野に携わる者にとってリスク管理は重要な事柄となっている。パネル・ディスカッションでは、『今日の市場におけるリスク管理』と題し、業界の有識者3名から、穀物生産に関して先物市場や作物保険利用によるリスクヘッジについての見解が述べられた。

 CMEグループ執行役員(COO)のブライアン・ダーキン氏は、同社は作物生産者や畜産生産者に対し不測の事態によるリスク管理の機会を提供していると述べた。トウモロコシや小麦のCME先物市場における取引件数は、10年前は1日20〜30万件程度だったが現在は1日平均60万件を超えており、先物市場が農業者や農業関連企業のリスク管理のために利用される機会が増えているとした。また、食料価格の変動を招く要素として、天候、政策、国際需給、バイオ燃料開発、農地の制約などが挙げられるが、しっかりとリスク管理することで食料価格を下げることができると述べた。

 Cargill AgHorizon社のデイビッド・バドラー社長(President)は、2008年の穀物価格高騰の際には、世界の穀物生産量が全体とすればわずかな量に過ぎない1〜2億トン減少し、27億トンとなっただけで、在庫水準が30%から15%まで減少した例を挙げ、生産量の小幅な変動が価格に大きな影響を与えることを指摘した。また、米国の例では、2009年から2013年までの間の在庫水準の低下は18%であるのに、この間、価格は60%上昇しているとし、価格変動に大きく影響を及ぼすのは、投機資金が最大の要因ではなく、生産量と在庫水準の変動であるとした。一方、生産者がリスク管理を行う方法については、透明性を備えた市場の利用、農業資材の先渡し契約、作物保険に加入することが有効であるとした。

 イリノイ大学スコット・アーウィン教授(農業経済)は、穀物価格は古典的な需給直線で決まるのではなく、在庫という緩衝剤が不足した場合に指数曲線的に急上昇するとした。リスク管理については、2012年の干ばつで、連邦作物保険プログラムにより生産者の受けた被害が大幅に軽減されたことから、当該保険の有効利用を強調した。また、状況の変化により作物価格は大きく変動することから、人々は迅速かつ柔軟にリスク管理をしなければならないとした。

3.2013年農畜産物の需給見通し

(1)牛肉:飼養頭数は過去最低を更新

ア.飼養頭数

 2013年1月1日現在の牛飼養頭数は、前年を1.6%下回る8930万頭となった。繁殖雌牛の頭数は、3851万5000頭で、前年同期を2.2%下回り、2009年以降の減少傾向が続いている。また、2012年の子牛生産頭数は前年を2.9%下回る3427万9000頭となった。なお、当面の間、繁殖雌牛頭数の減少による子牛生産頭数の減少が予想されることから、米国の牛飼養頭数は、2013年も減少傾向が続くものとみられる。

 一方、更新用未経産牛は、干ばつの影響を受けた草地の状態が改善することが見込まれることから、前年を1.9%上回る536万600頭となった。今後、繁殖牛群の再構築が順調に進めば、2016年以降は肉用牛飼養頭数が増加に転じるものとみられる。

イ.生産量

 2013年の肉用牛と畜頭数は、同4.0%減少すると予想され、これにより牛肉生産量は、前年を3.2%下回る1138万3000トンと見込まれる。一方、平均枝肉重量は、同0.3キログラム(約1.35ポンド)以上増えておよそ359キログラム(791ポンド)と見込まれる。
ウ.輸出量

 2012年の輸出量は、前年を11.7%下回る111万6000トンとなった。これは、減産による牛肉価格の上昇などにより中国(香港を含む)を除く輸出先国の需要が減少したことが要因である。2013年の輸出量は生産量の減少により国内供給量も減少すると予想されることから、これに伴う価格上昇が響き、同0.4%減の111万1000トンと見込まれる。
エ.価格

 2013年の主要5市場の肥育牛価格は、100ポンド当たり平均125ドル〜134ドル(キログラム当たり約232円〜249円:1ドル=93円)と、記録的な水準となった昨年の平均価格同122.86ドル(約229円)をさらに上回るものと見込まれる。2年連続の干ばつの影響による肥育素牛の供給量の減少と飼料価格の上昇により、2012年の肥育牛価格は前年の価格(114.73ドル)から7%上昇した。また、今後も子牛頭数の減少が見込まれていることから肥育牛価格は引き続き上昇するものと予測される。

(2)豚肉:子豚生産頭数は過去最高を記録

ア.飼養頭数

 2012年12月1日現在の豚総飼養頭数は、6634万8000頭で、前年比0.02%と前年並みとなった。一方、繁殖母豚頭数は、わずかに増加し581万7000頭となった。繁殖母豚頭数は2012年第1〜2四半期および第4四半期で増加したが、飼料穀物価格高騰の影響による養豚農家の収益性の悪化により、第3四半期はわずかに減少した。

 2012年の1産当たりの産子数は、前年を上回ったことから子豚の生産頭数は過去最高の1億1734万頭(前年同期比1.3%増)となった。

 2013年の飼養動向については、下半期に1産当たりの産子数の増加が見込まれることから、子豚の生産頭数は、前年比1.0%増の約1億1860万頭と予測される。

注:第1四半期は3月1日、第2四半期は6月1日
  第3四半期は9月1日、第4四半期は12月1日現在

イ.生産量

 2013年の豚肉生産量は、前年を0.7%上回る1062万5000トンと増産見通しとなり、と畜頭数は前年比1.0%増と見込まれる。平均枝肉重量は、飼料穀物価格が高値で推移していることから、第1四半期から第3四半期までは前年を下回るとみられるが、2013/14年度産トウモロコシの増産を背景とした価格低下により、平均で92.3キログラム以上となることが予測される。


ウ.輸出量

 2012年の輸出量は、前年を3.7%上回る244万トンとなった。輸出先国別にみると、日本、韓国および中国向け(香港を含む)で減少となった一方、2012年に前年比で2倍以上となったロシア、NAFTA加盟国であるカナダおよびメキシコ向けで増加となった。  2013年の輸出量は同1.4%増の247万4000トンと予測される。この増加は、米国産牛肉が高値で推移するとみられることから、主要輸出先国で豚肉の需要増が見込まれることによる。一方、2012年のロシア向け輸出量は増加したものの、ラクトパミンの使用を理由に米国産の豚肉の輸入を停止している問題が決着していないことから、2013年の輸出量は前年より減少するとみられる。
エ.価格

 2013年の肥育豚価格(赤身率51−52%、生体ベース)は、前年(100ポンド当たり60.88ドル:約113円)を上回る同平均61ドル〜65ドル(キログラム当たり約113円〜121円)と見込まれる。  2013年の豚肉小売価格は、ポンドあたり平均で3.47ドル(キログラム当たり約645円)と見込まれ、2012年の同3.45ドル(同約641円)とほぼ同程度と見込まれる。

(3)鶏肉:生産量増加も、需要増から価格は過去最高となる見込み

ア.生産量

 2012年の鶏肉生産量は、第4四半期は増加したものの、国内の景気後退や飼料高などの影響により第1〜3四半期で減少したことが響き、前年比0.4%減の1680万トンとなった。

 2013年第1〜3四半期までの生産量は、飼料穀物の生産見通しが不透明であることから、生産者は増産に踏み切れず前年と同程度で推移するものとみられる。一方、第4四半期の生産量は、飼料穀物が増産となった場合、飼料価格の下落が見込まれることから前年を上回るものと予測される。この結果、2013年の生産量は前年比0.7%増の1692万トンと過去最高となるとみられる。
イ.輸出量

 2012年の輸出量は前年を4.4%上回る330万トンとなり過去最高となった。香港向け輸出量は減少したものの、その他の主要輸出先国(メキシコ、ロシア、アンゴラ、カナダ、キューバ)への輸出量が前年を上回った。なお、上半期に好調であったロシア向けの輸出量は、ロシア国内の生産増などの影響により第4四半期に大きく減少した。

 2013年の輸出量は、主要輸出先国の多くで増加が見込まれるものの、ロシア向けの輸出量が大きく減少することが予想されることから、過去最高を記録した前年をわずかに下回る329万トンと見込まれる。
ウ.価格

 2012年の鶏肉卸売価格(丸どり(中抜き))は、生産量の増加が予想される一方、高値で推移する牛肉価格に対する価格優位性および景気回復に伴う需要拡大から、2012年の平均1ポンド当たり87セント(キログラム当たり約161円)を上回る同92〜98セント(同約171〜182円)と見込まれる。

(4)酪農:生乳生産量は過去最高となるも、飼料高は今後も経営を圧迫

ア.飼養頭数

 2012年の経産牛飼養頭数は、干ばつに見舞われたものの、国内需要が好調であったことから前年比0.4%増の923万1000頭となった。

 2013年は、更新用未経産牛飼養頭数の減少と、前年の干ばつの影響でと畜頭数が増加したことなどから、経産牛飼養頭数は前年比0.7%減の917万頭と見込まれる。
イ.生産量

 2012年の生乳生産量は、年間平均気温が平年を上回ったことや経産牛飼養頭数および1頭当たりの乳量の増加を背景として、特に第1四半期の生産が増加し前年比2.1%増の9085万4000トンと過去最高を記録した。

 2013年は、経産牛飼養頭数が前年をわずかに下回るものの、1頭当たり乳量が前年比1.3%増加することが予想されることなどから、生乳生産量は前年比0.4%増の9119万1000トンと過去最高となることが見込まれる。
ウ.輸出量

 2012年の乳製品輸出量は、無脂乳固形分は1510万5000トンと過去最高を記録したが、乳脂肪では399万2000トンと前年から6.4%減少した。  2013年の乳製品輸出量は、無脂乳固形分(1528万6000トン)、乳脂肪(408万2000トン)と共に前年を上回ることが見込まれる。

エ.生乳価格

 2012年の生乳価格は、過去最高を記録した2011年の100ポンド当たり20.14ドル(キログラム当たり約36円)から低下し、同18.51ドル(同約34円)となった。飼料価格が高騰した一方、生産量の増加により生乳価格が低下したことから、生乳−飼料価格比率(1ポンド当たりの乳価を粗タンパク含量16%の配合飼料1ポンド当たりの想定価格で除した数値)は過去最低の1.52まで低下した。

 2013年の生乳価格は、生乳生産量の増加率の鈍化が価格を引き上げる要因となる一方、バターおよび脱脂粉乳などの期首在庫の増加が価格を引き下げるとして、同18.90ドルから19.60ドル(同35円〜36円)と前年をやや上回ることが予想される。しかしながら、2013年の夏頃までは飼料価格が高値で推移すると見込まれるため、酪農家1戸当たりの純現金所得は、前年の9万8100ドルから8万3900ドルへと14.5%減少すると予測される。

(5)穀物:トウモロコシ、生産量は前年比35%増、期末在庫は2ケタへ

ア.作付面積・生産量

 トウモロコシ価格が2012年の干ばつによる減産を契機とし高水準で推移する中、2013/14年度(9月〜翌8月)の作付面積は前年よりも70万エーカー(28万ヘクタール)下回る9650万エーカー(3860万ヘクタール、前年比0.7%減)とわずかに減少する見通しである。

 1エーカー当たりの収量は、1988年から2012年までの増産傾向に基づく推計値の水準に回復し、163.6ブッシェルと予測される。この予測値は、干ばつによって減収となった前年を40.2ブッシェル上回る。この結果、生産量は過去最大となる145億3000万ブッシェル(3億6900万トン、前年比34.8%増)を見込んでいる。なお、この見通しは、トウモロコシの生育期間中の天候が平年並みとなることを前提としたものであることに留意する必要がある。
イ.消費量

 需要はトウモロコシの増産による、価格の低下見通しで、全ての用途(飼料等、食品等、エタノール、輸出向け)で増加すると見込まれ、前年を11億7300万ブッシェル(2979万トン)上回る115億1000万ブッシェル(2億9200万トン、前年比11.3%増)と予測している。飼料等向けは豚肉およびブロイラー生産量の増加を背景に前年を大きく上回る54億ブッシェル(1億3700万トン、同21.3%増)と予測される。輸出向けは、価格が低下することで、南米などへシフトしていた需要が回復することから6億ブッシェル増の15億ブッシェル(3800万トン、同66.7%増)としている。エタノール向けは、ガソリン消費量の減少見込みに加え、原料であるトウモロコシ価格の値下がりから1億7500万ブッシェル増の46億7500万ブッシェル(1億1900万トン、同3.9%増)と予測している。
ウ.在庫量および生産者平均販売価格

 期末在庫は前年を上回る増産が見込まれることから前年の3倍超となる21億7700万ブッシェル(5530万トン)となり、期末在庫率は2012/13年度の5.6%から16.7%まで大幅に増加すると予測している。また、これにより需給のひっ迫感が解消されることから、生産者平均販売価格は、2012/13年度の1ブッシェル当たり6.80〜8.00ドル(632〜744円)から同4.80ドル(446円)まで下落すると予測される。

4.おわりに

 今回のフォーラムは、2012年の干ばつが米国の穀物生産および畜産業に与えた影響が大きかったこともあり、リスク管理を主要テーマとして開催された。今回も食品の安全、貿易、栄養問題、水問題など様々な分野について発表が行われたが、最も注目されたセッションのひとつに穀物の需給予測がある。

 USDAは今回のフォーラムで、2013/14年度のトウモロコシ生産について、作付面積は前年を下回るものの、単収がトレンド水準にまで回復すると見込み、過去最大の生産量(前年比34.8%増)となると予測した。また、生産量の拡大により飼料コストが低下すると見込まれることから、牛肉を除く主要な畜産物の増産を予想した。しかしながら、これらの予測は、トウモロコシの生育期間中の天候が平年並みとなることを仮定したものであり、コーンベルトの西部および北部での干ばつの影響は依然として改善されていない状況を鑑みると、非常に楽観的なものと言わざるを得ない。

 また、ヴィルサック農務長官の講演でも述べられた様に、重要な世界の食料供給国のひとつである米国は、干ばつなど気象条件から財政的な問題まで、様々なリスクに直面しており、先送りされた新農業法制定など農業政策の方向性も注目される。この様な中、今後、米国がどの様にこれらのリスクを管理し、農畜産業生産を行っていくのか、国際社会からも関心が寄せられている。

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