需給動向 海外

◆ブラジル◆

2012年、肉用牛と畜頭数および牛肉生産量は過去最高を記録


 2012年のブラジルの肉用牛と畜頭数は、前年比8.0パーセント増の3111万8000頭、牛肉生産量(枝肉換算)は同8.4パーセント増の735万トンと、ともに過去最高を記録した(図2)。これは、飼料穀物価格の高騰により、配合飼料を多用する豚肉や鶏肉価格が上昇するなかで、牧草飼育が主体となる牛肉に割安感があったこと、また、好調な牛肉輸出が後押ししたためとみられる。

 肥育用として出荷される去勢牛の生体価格は、2012年を通じて前年水準を下回る1キログラム当たり6.0〜6.5レアル台で推移した(図3)。価格は好調な牛肉輸出を反映して2013年に入り前年同期を上回っているが、肥育牛不足から高値となった2010年後半から翌11年と比べると、低い水準で推移している。

図2 と畜頭数の推移
資料:ブラジル地理統計院(IBGE)
図3 去勢牛生体の国内価格の推移
資料:サンパウロ州農務局農業経済研究所(CEPEA)

牛肉輸出量も増加、ロシア向け輸出の回復やレアル安などが要因

 2012年のブラジル産牛肉の輸出量は、前年比14.9パーセント増の93万8000トンと回復に転じた(図4)。増加の要因としては、2011年にブラジル産牛肉の輸入を一部禁止したロシア向け輸出の回復(一部州からの輸出はいまだ禁止)、また、国際市場における米国やアルゼンチンなどの主要生産国の輸出量の減少や、為替相場が2011年と比べ米ドルに対してレアル安で推移したことなどが挙げられる。
図4 牛肉輸出量の推移
資料:開発商工省貿易局(SECEX)
 2012年の牛肉輸出を品目別にみると、冷蔵牛肉は前年比41.2パーセント増の12万5000トン、冷凍牛肉は同11.7パーセント増の81万3000トンとなった(表7)。冷凍牛肉の輸出先をみると、ロシア向けが同11.0パーセント増の25万4000トンと前年に引き続き最大の輸出先となった。この他、絶対量では少ないながらも中国向けの増加が目立っている。

 2012年12月に、ブラジルで初めてのBSE発生が確認された。一部の国では、BSEの発生を受けてブラジル産牛肉の輸入停止措置を取っているが、2013年1〜4月の輸出量は、前年同月比34.7パーセント増の34万3000トンと大幅な増加基調で推移していることから、BSEの影響は限定的とみられている(表8)。
表7  牛肉輸出量と輸出額(2011年と2012年)
資料:ブラジル開発商工省(SECEX)
  注:すべて骨なし冷蔵・冷凍牛肉重量
表8 牛肉輸出動向(1〜4月)
資料:ブラジル開発商工省(SECEX)
  注:すべて骨なし冷蔵・冷凍牛肉重量

 ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)によると、中東など新たな市場への輸出が増加していることから、2013年の牛肉輸出量を前年比13パーセント増と見込んでいる。

 なお、国際獣疫事務局(OIE)では、ブラジルでのBSE発生に関し、国外で生まれた牛であることが確認されたことから、同国のBSEステータスを引き続き「無視出来るリスク」と設定している。

                                       (畜産需給部 岡 千晴)


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