需給動向 海外

◆豪州◆

堅調な乳製品国際相場を背景に、乳業各社の初期乳価は前年比上昇


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産量は減少傾向も、輸出量は増加傾向

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2013年5月の生乳生産量は、62万8700キロリットル(前年同月比7.6%減)となった(図17)。高温乾燥による放牧環境の悪化や、飼料穀物価格が高水準で推移していることなどから、生乳生産量は2012年12月以降、6カ月連続で前年同月を下回っている。2012/13年度(7月〜翌6月)の5月までの生産量の累計は、859万3600キロリットル(前年同期比2.7%減)となっている。
図17 生乳生産量の月別推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月
 このうち、豪州の生乳生産量の3分の2を占めるビクトリア(VIC)州では、2012/13年度の5月までの生乳生産量の累計は、565万4300キロリットル(同2.5%減)と、前年同期を下回った。VIC州を地域別に見ると、かんがい用水が確保されている北部は前年同期比3.9パーセントの増加となったものの、西部は同3.1パーセント減、東部は同7.8パーセント減と、ともに前年同期を下回っている。

 一方、2012/13年度の5月までの主要乳製品の輸出量の累計は、バターが3万6718トン(前年同期比33.8%増)、脱脂粉乳が13万9105トン(同10.3%増)、全粉乳が9万5710トン(同11.7%減)、チーズが15万3266トン(同5.1%増)となり、全粉乳など一部の品目を除き軒並み前年同期を上回っている(図18)。
図18 主要乳製品の輸出量の推移(7月〜翌5月)
資料:DA
  注:バターにはバターオイルを含まず

国際相場は堅調に推移

 輸出量増加の背景には堅調な国際相場がある。7月2日に開催された、国際相場の指標の一つとされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)における脱脂粉乳の平均価格は、トン当たり4,441米ドル(前年同期比70.9%高、44万2000円:1米ドル=100円)、全粉乳が同4,757米ドル(同72.3%高、47万4000円)と、ともに前年同期を大幅に上回った。これら粉乳価格は5月から6月にかけて下落したものの、再び上昇に転じている(図19)。
図19 GDTにおける脱脂粉乳および全粉乳価格の推移
資料:GDT
  注:落札額の加重平均価格

2013/14年度は、生産量、輸出量ともに増加の見込み

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は6月、2013/14年度の生乳生産量や輸出量などの見通しを公表した。これによると、2013/14年度の生乳生産量は、かんがい用水の利用により、VIC州北部やニューサウスウェールズ州南部を中心に増加し、945万キロリットル(前年度比2.3%増)と見込んでいる。一方、乳製品輸出量は、為替相場が豪ドル安に動くとの見通しから、バター、脱脂粉乳、全粉乳など、いずれも前年を1〜3パーセント程度上回ると見込んでいる。また、これらの品目の国際価格については、アジア、中東、北アフリカの新興国からの需要を背景に、いずれも前年より2〜4パーセント程度上昇するとみている。

乳業各社の初期乳価は前年比上昇

 こうした中、乳業各社は2013/14年度の初期乳価(新年度開始となる7月からの乳価)を公表した。豪州最大の乳業メーカーであるマレー・ゴールバン社が、乳固形分1キログラム当たり5.73豪ドル(前年比27%高、534円:1豪ドル=93円)、ワーナンブールチーズアンドバター社が、同5.65豪ドル(同25%高、526円)など、前年を大幅に上回る水準となった。堅調な国際相場を背景に輸出量が増加傾向で推移している中、乳価を引き上げ生産者の増産意欲を高めることで、乳業各社は生乳の確保に努めている。

                                       (調査情報部 根本 悠)


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