需給動向 海外

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天候不良および飼料穀物高、EUの生乳生産増加を阻む


◇絵でみる需給動向◇


乳価は堅調、天候不良による生産への影響続く

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の5月の平均生乳価格は100キログラム当たり35.33ユーロ(4,593円:1ユーロ=130円)となり、前年同月比12.6パーセント高となった(図15)。EUでは、生乳生産の減少から生乳価格は上昇基調にある。

 生乳出荷量をみると、4月は前年同月比3.1パーセント減の1212万7300トンとなり、前年7月以降、前年を下回って推移している(図16)。2013年1月から4月までの累計をみると、EU全体で前年同期比1.6パーセント減の4654万7000トンとなり、2015年の生乳クオータ廃止に向けて生乳生産を拡大させてきた動きに変化が生じた(表12)。
図15 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値
図16 EUにおける生乳出荷量
資料:ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)
  注:2013年は暫定値
表12 加盟国別生乳生産量
資料:ZMB
  注:前年同期比は、うるう年(2012年)の調整を行っている。

欧州委員会、短期予測を発表

 このような中、欧州委員会は7月4日、穀物、食肉および酪農の短期予測を発表した。酪農については、現在の生乳生産の減少は、主にアイルランド、英国、ドイツ北部、フランス北部および西部地域での低温、多雨が牧草の生育を遅らせたことによるとしている。しかし、下半期については、6月以降の天候回復で放牧環境は改善していることから、泌乳量の増加が期待でき、前年を上回る生乳生産を見込んでいる。その結果、2013年度(4月〜翌3月)の生乳生産は、前年度並みの15億1800万トンとしている(表13)。

 また、2014年度については、本年の減産に伴うリバウンドとして増加する可能性があり、クロアチアを加えたEU28カ国で2013年度の1.3パーセント増の15億4400万トンとなる見込みである。

 継続して減少していた乳牛の飼養頭数は、2015年の生乳クオータ廃止に向け、イタリア、スペイン、アイルランド、英国、オランダおよびルクセンブルグなど旧加盟国で増加しており、2012年は1億7700万頭に達する見込みである。しかし、本年の春先の天候不良による牧草の品質低下などの影響により、生産者は頭数を維持することが困難な状況にあり、2013年は維持もしくは微増にとどまる見込みである。

 一方、乳製品の輸出については、2013年上半期、オセアニアや北米での生産減から乳製品の国際価格は高騰し、EU産乳製品の価格競争力は高まったが、EUにおける生乳生産の減少により輸出は減少した。また、生産がチーズなどの高付加価値製品にシフトしたため、脱脂粉乳など輸出製品の生産は減少した。

 2013年のチーズの生産量は、前年比0.5パーセント増加する見込みである。また、景気後退を反映し旧加盟国(EU15)のチーズ消費量は減少したが、2014年は経済回復が予測されており、それに伴いチーズ消費量も回復との見込みである。

 バターの生産量は、飼料の品質低下で乳脂肪含有量の減少がみられたことから、2013年は同0.6パーセント減と見込んでいる。また、民間在庫量も低水準で推移しており、域内需要をまかなうため輸出は減少の見込みである。

 脱脂粉乳および全粉乳の生産量は、生乳生産の減少により、各々同4.4パーセント減、同8.2パーセント減といずれも大幅な減少を見込んでいる。しかし、2014年は、生乳生産の増加により回復の見込みである。

                                    (調査情報部 矢野 麻未子)

表13 EU28カ国における生乳供給と利用(2010−2014年)
資料:欧州委員会
  注:2012年は概算値、2013年と2014年は予測値である。

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