需給動向 海外

◆豪 州◆

牛肉輸出量、今年3度目の10万トン超を記録


と畜頭数の増加が輸出増を下支え

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2013年10月の東部州における1週当たり平均と畜頭数は、15万654頭(前年同月比12%増)となった。飼養規模の大きいクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州北部でいまだ干ばつが続き、と畜施設への出荷が増加していることから、と畜頭数は2012年12月以降、11カ月連続で前年同月を上回っている(図5)。
図5 と畜頭数の推移
資料:MLA
  注:東部州(QLD州、NSW州、ビクトリア州、南オーストラリア州および
     タスマニア州)の1週当たり平均と畜頭数

 と畜頭数の増加に加えて、中国や東南アジア、中東などからの力強い需要が要因となり、牛肉輸出も高水準にある。豪州農漁林業省(DAFF)によると、2013年10月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は10万4074トン(前年同月比10.5%増)となり、2013年に入って3度目の10万トン超を記録した(図6)。

図6 牛肉輸出量の推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース

日本向け輸出量は引き続き減少

 牛肉輸出量を国別に見ると、日本向けが2万1509トン(前年同月比12.3%減)と、かなり大きく減少した(表1)。内訳では、加工用となる65CLや85CLが、それぞれ2,841トン(同13%増)、1,927トン(同33%増)と増加する一方、牛丼に使用されるブリスケットは、日本で米国産ショートプレートの輸入量が増加したことから、2,941トン(同48%減)と大幅に減少した。また、その他の主要部位もおおむね減少した。

 一方、米国向けは、加工用の輸出が好調であり、2万1481トン(同12.3%増)と日本向けに迫り、中国向けは1万6710トン(同2.2倍)と、単月の過去最高を更新した。韓国向けは1万3728トン(同6.5%減)と10月は減少したものの、2013年1〜10月でみると前年同期を大幅に上回っている。米国産牛肉の日本向け輸出の増加により、韓国では米国産の輸入量が減少し、豪州産への引き合いが強まっている。また、インドネシア向けは5,275トン(同2倍)と、2011年7月以来の高水準となった。インドネシアでは自国の牛肉自給率向上を目的に、2012年以降、牛肉および生体牛の輸入割当量を縮小していたが、牛肉不足による価格高騰を解消するため、今年7月以降、追加割当を発行するなどの動きを見せている。

注:CL:Chemical Leanの略。部分肉とトリミングなどの組み合わせから成る豪州産牛肉のカットの規格の一つで、65や85などの数字は化学試験の測定による赤身肉の含有率を表す。

表1 2013年10月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:CISはロシア他

1〜9月グレインフェッド牛肉輸出量は前年を1割上回る

 MLAによると、2013年1〜9月のグレインフェッド牛肉輸出量は15万1075トン(前年同期比9%増)となった。干ばつによる若齢牛の出荷増から、肥育もと牛価格が下落したことを受け、フィードロットにおける飼養頭数は、2012年12月期から増加傾向にあり、2013年6月期には、6年ぶりとなる80万頭台となった。飼養頭数の増加によるグレインフェッド牛肉の増産が、輸出量の増加につながったとみられる。

 輸出先別では、従来のグレインフェッドの市場である日本向けは、米国産との競合から減少して8万7156トン(同7.3%減)、韓国向けは2万1815トン(同2.8%増)とわずかな増加にとどまった(図7)。
図7 グレインフェッド牛肉輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
 一方、中国向けは1万3059トン(同8.3倍)、EU向けは8,273トン(同2倍)、中東向けは7,593トン(同2倍)、ロシア向けは2,114トン(同3倍)と、いずれも躍進した。中国向けは、輸出量の増加とともにカテゴリーや部位も多様化しており、グレインフェッドへの引き合いも増している。また、EU向けの増加は、成長ホルモン無投与の高級牛肉輸入枠の拡大、ロシア向けの増加は、ラクトパミンの問題により米国産の輸入を同国が停止したことが、要因となっている。

                                      (調査情報部 伊藤 久美)


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