需給動向 国内


◆牛 肉◆

平成25年度上半期は輸入量増加により記録的高水準の在庫量


 平成25年度上半期(4〜9月)の牛肉の需給動向は、輸入量が大きく増加したことに伴い、推定期末在庫量が約10年ぶりの高水準となったことが大きな特徴であった。

 上半期の輸入量は、29万5859トン(同7.3%増)と、前年同期をかなりの程度上回った(図1)。内訳を見ると、冷蔵品は11万3418トン(同0.1%増)と前年並みであった。一方、冷凍品は、業界内でのセーフガード発動回避の動きに伴い月毎の変動が大きいものの、景気回復への期待感による需要増加を見込んだ動きなどから、18万2145トン(同12.3%増)とかなり大きく増加した。国別に見ると、豪州産が14万7422トン(同10.4%減)とかなりの程度減少した一方、米国産が11万3572トン(同48.9%増)と大幅に増加した(図2)。豪州産が減少した背景には、本年2月の月齢制限緩和措置による米国産牛肉へのシフトに加え、強い購買力を持つ他の輸入国との競合があると考えられる。
図1 牛肉生産量、輸入量および推定期末在庫量の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ
注 1:部分肉ベース。
注 2:輸入量には煮沸肉並びにくず肉のうちほほ肉及び頭肉のみ含む。
図2 国別牛肉輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」
注 1:部分肉ベース。
  2:計には、煮沸肉、ほほ肉および頭肉を含む。
 上半期の輸入品の推定出回り量は、25万3939トン(同2.5%増)と前年同期と比較して増加したが、見込んだ需要を上回る量の牛肉が輸入されたとみられ、業界関係者によると、特に米国産冷凍ばらの荷余り感が強かったもようである。このため、推定期末在庫量の9割弱を占める輸入品在庫量は、今年度に入ってから、冬場の最需要期に向けた例年の積み増しのペースを大きく上回って増加してきた。7月以降の輸入品在庫量は、米国におけるBSE発生前である14年3月以来の水準となる10万トン超の推移となっており、9月末時点では11万7004トン(前年同月比21.4%増)であった(図1)。

 上半期の生産量は、17万3481トン(前年同期比1.4%減)と、わずかに減少した。品種別では、和牛が7万8914トン(同1.7%減)、乳用種が5万4219トン(同4.2%減)と減少し、交雑種は3万8035トン(同3.5%増)と増加した。和牛は22年の口蹄疫発生の影響などにより、減少傾向が継続している。また、21〜22年頃の生乳需要緩和を背景とした、酪農経営における搾乳牛の淘汰や黒毛和種の交配率上昇により、乳用種は減少し、交雑種は増加傾向で推移している。

引き続き頭数不足が国産卸売価格を下支え

 国内生産量の減少による不足感から、今年度上半期の国産枝肉卸売価格は前年を1〜5割程度上回って推移してきた。下半期に入ってもその傾向は継続しており、東京市場における10月の同価格(速報値)は去勢和牛A−4がキログラム当たり1,953円(前年同月比16.5%高)、交雑種去勢牛B−3が同1,305円(同19.1%高)、乳用種去勢牛B−2が同793円(同35.8%高)と、いずれも高水準を維持している(図3)。
図3 牛枝肉卸売価格(東京市場)の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京食肉市場株式会社
注 1:23年7月の乳去勢B−2については取引実績がない。
  2:25年10月は速報値

                                      (畜産需給部 田中 あや)



元のページに戻る