需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産、10カ月連続の減少


 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2013年9月の生乳生産量は、89万9900キロリットル(前年同月比3.5%減)と、10カ月連続で前年同月を下回った(図23)。現地報道などでは、2013/14年度(7月〜翌6月)開始以降、適度な降雨などの良好な気象条件とそれに伴うかんがい用ダムの貯水量の増加や乳価の引上げから、生乳生産は増加すると見込まれてきたが、そうした予想に反し、減少傾向が継続している。今年度に入り、飼料価格も一時期よりは下落しており、酪農家の増産意欲も高い中での減少であり、昨年度の乾燥気候に伴う牧草の生育悪化や泌乳量減少の影響が予想以上に続いているものと推察される。

 その結果、2013/14年度(7月〜翌6月)第1四半期(7〜9月)の生乳生産量は227万3300キロリットル(前年同期比3.8%減)となった。
図23 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月
 今後、夏場にかけて生乳生産がピークを迎える時期だけに、今後の気象条件が注目される。豪州気象庁は、11月から1月にかけて、主要生乳生産地域であるビクトリア州の気象条件は、降雨量は通常の水準となるものの、気温は平年よりも高くなると予想している。

 また、小麦や乾牧草の需給に関するDAのレポートによると、10月後半に、ニューサウスウェールズ州を中心とした豪州東部沿岸地域に霜が降りた影響から、小麦価格が上昇しており、在庫の取り崩しが進んでいるとしている。乾牧草類については、この時期(10月)の平均的な価格で推移しているものの、豪州北部を中心に、乾燥気候の影響から需要が高まっているとしており、こうした飼料関連の価格動向も、今後の生乳生産に影響を及ぼすものと思われる。

 なお、9月の品目別生産量を見ると、脱脂粉乳、全粉乳は前年同月を下回っているものの、チーズ、飲用乳は前年並みにとどまっている(図24)。生乳生産が減少する中、豪州の主要輸出品目であるチーズと、国内消費が堅調である飲用乳の生産に優先的に生乳を仕向けているものと推察される。
図24 9月の豪州における飲用乳および乳製品生産量
資料:DA
  注:飲用乳の単位は万リットル、その他は千トン

乳製品輸出量も減少傾向が継続

 2013年7〜8月の主な乳製品の輸出量は、生乳生産の減少を背景に、おおむね前年同期を大幅に下回っている(図25)。脱脂粉乳は1万1004トン(前年同期比46.8%減)、全粉乳は1万528トン(同24.0%減)、バターは3,997トン(同29.5%減)、チーズは1万9725トン(同19.0%減)となった。豪州の最大の輸出品目であり、日本の最大の輸入品目でもあるチーズは、生乳生産が減少傾向にある中、直近1年間、おおむね前年同月を上回る輸出量となっていたが、7〜8月にかけては、他の乳製品同様、前年同月を下回る結果となった。
図25 7〜8月の豪州における飲用乳および乳製品輸出量
資料:DA

 今後の輸出動向を占う上で重要な為替相場の動向を見てみると、7月から8月にかけての為替相場(豪ドル/米ドル)は、おおむね横ばいで推移していたが、9月から11月にかけて、豪ドル高傾向となっており、今後さらなる輸出量の減少を招く可能性がある(図26)。
図26 為替相場の推移
資料:豪州準備銀行

国際相場、脱脂粉乳、全粉乳ともに横ばいで推移

 11月5日に開催された、国際相場の指標の一つとされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均価格は、トン当たり4,559米ドル(45万5900円:1米ドル=100円、前年同期比32.2%高、前回比0.4%高)、全粉乳は同4,891米ドル(48万9100円、前年同期比45.9%高、前回比3.3%安)となった(図27)。8月以降、ゆるやかな高低を繰り返してはいるものの、おおむね横ばいでの推移となっており、アジア各国を中心とした堅調な粉乳需要が継続しているためとみられる。今後は、豪州に加え、粉乳の主要輸出国であるニュージーランドの生乳生産も本格化する時期であるため、現在の水準よりは価格が低下することも予想される。        
図27 GDTにおける脱脂粉乳および全粉乳価格の推移
資料:GDT
  注:落札額の加重平均価格

                                       (調査情報部 根本 悠)


元のページに戻る