需給動向 海外

◆E U◆

乳価、過去5年で最高値に


生乳出荷量が回復、乳価は高水準

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の9月の平均生乳価格は、100キログラム当たり39.65ユーロ(5,432円:1ユーロ=137円)となり、前年同月比19.1パーセント高となった(図18)。EUでは、上半期の生乳生産量の減少に加え、最需要期であるクリスマスシーズンに向け需要が高まっており、生乳価格が堅調に推移している。
図18 平均生乳価格の推移

資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値
 8月の生乳出荷量は、前年同月比2.5パーセント増の1189万トンとなり、7月に引き続き前年を上回った(図19)。ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、乳価が高水準で推移していること、飼料穀物価格が下落していること、天候が良好であることなど、生産に追い風が吹いており、酪農家は、上半期の減産を取り戻そうと生産を増加させている。しかし、全てのEU加盟国で増加がみられるのではなく、地域、加盟国において格差がみられる。欧州西部では、大幅な回復がみられ、特にオランダでは、同10パーセント増、ドイツでは同4.9パーセント増と大幅に増加した。一方、先月、大幅な回復をみせたフランスおよびポーランドは、各々同0.2パーセント増、0.7パーセント増と当月はわずかな伸びであった。反対に、南東部のオーストリア、ハンガリーなどでは依然として前年割れで推移しており、今後も大幅な回復は見込めない状況である。このように生乳出荷量にばらつきはあるものの、今後、EU全体の生乳出荷量は前年を上回って推移する見込みである。
図19 EU(28カ国)の生乳出荷量
資料:ZMB
  注:2013年は暫定数値

バター生産量は回復基調、価格も堅調

 生乳生産の回復により、乳製品生産も増加している。バターの7月の生産量は、EU全体で前年同月比3.0パーセント増の16万2000トン、1月から7月までの累計では、前年同期比2.8パーセント減の117万3300トンとなった(表5)。加盟国別に生産量をみると、生乳生産が減少してもバター生産は減少しなかったデンマークおよび英国での生産量が大幅に増加しており、各々41.4パーセント増、18.6パーセント増となった。その他の加盟国でも、一部を除き前年同月を上回った。バター生産は回復基調であるものの需給は依然としてひっ迫した状況にあり、9月のバター価格は、前年同月比32パーセント高の100キログラムあたり421ユーロ(5万7677円)と、高水準で推移した2011年をさらに上回って推移している(図20)。

 EUではクリスマスシーズンに向けてバター需要は増加するため、価格は、年内は高水準で推移する見込みである。
表5 バター生産量

資料:ZMB
図20 バター卸売価格の推移
資料:ZMB オランダバター価格

酪農家戸数減少、大規模化進展

 2012/13年度(4月〜翌3月)のEUの酪農家戸数は、前年対比5.5パーセント減のおよそ63万2000戸となった(図21)。減少率をみると、旧加盟国のEU15が同3.9パーセント減に対し、2007年に加盟したEU2のブルガリアおよびルーマニアでは同11パーセント減とかなり大きく減少した。
図21 EUにおける酪農家戸数
資料:ZMB
  注:EU15;ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、
    デンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、
    オーストリア、フィンランド、スウェーデン
    EU10;キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、
    マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア
    EU2;ブルガリア、ルーマニア
 ほぼ全ての加盟国で、酪農家戸数は減少し、大規模化が進んでいるものの、依然として生産規模(生乳出荷量)はEUの中で大きく異なる。1戸当たりの生乳出荷量が最も多いのは、スロバキアで年間196万4678キログラム、次いでチェコが同145万4318キログラム、第3位にデンマークで同126万8428キログラムとなっている(図22)。一方、ルーマニアは同1万6836キログラム、リトアニアは同4万7010キログラムとなっており、小規模経営であることが分かる。

 また、EUの平均は、同23万5591キログラムであり、大規模化が進んでいるが未だ小規模経営が多く、今後も戸数減少と大規模化は進むと思われる。
図22 1戸当たり平均生乳出荷量(2012/2013年度)
資料:ZMB

                                    (調査情報部 矢野 麻未子)


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