需給動向 海外

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枝肉価格上昇と飼料価格下落により、養豚経営は増益傾向


2013年9月の豚枝肉卸売価格、前年同月比0.5パーセント高

 欧州委員会によると、EUの9月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり191.03ユーロ(2万6171円:1ユーロ=137円)と、前月からほぼ横ばい、前年同月比0.5パーセント高となった(図9)。この価格は、英国で口蹄疫が発生した2001年3月以来の高値であり、好調な輸出とともに、と畜頭数減少による供給不足がもたらしたものとみられる。
図9 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会
 主要な豚肉生産国のうち、特に価格上昇が顕著だったのはスペインであり、前月から0.4パーセント高の214ユーロ(2万9318円、前年同月比11.0%高)となった。また、最高値をつけたのはイタリアで、前月比5.7パーセント高の220.9ユーロ(3万263円、同2.4%高)となった。一方、ドイツ、オランダ、デンマークなどの国々では、既に下落基調に転じており、これ以上の価格高騰は起きないものと考えられている。

配合飼料価格は下落が進む

 欧州委員会によると、2013年8月のEUの豚用配合飼料価格は、トン当たり298.3ユーロ(4万867円)と前月比4.6パーセント安、前年同月比7.3パーセント安となった(図10)。配合飼料価格は、2012年5月から1年以上にわたり前年を上回って推移してきた(図11)。しかし、世界的な飼料穀物の豊作見込みを受けて、下落する国際相場の影響に加え、EU域内の穀物栽培も順調であることから、8月には前年同月を下回り、価格下落が顕著になってきた。特に、デンマーク、ドイツでは、前年同月比で10パーセント以上の低下をみせている。

 また、配合飼料の主原料の一つであり、輸入依存度の高い大豆かす価格も、8月は下落基調に転じ、トン当たり439.4ユーロ(6万198円、前年同月比16.3%安)となった。

 ただし、配合飼料価格は下落傾向にはあるが、過去3カ年平均と比較すると、トン当たり20ユーロ(2740円)以上高い水準を保っており、依然として厳しい状況は継続している。
図10 飼料価格の推移
資料:欧州委員会

図11 豚用配合飼料価格(前年同月比)の推移
資料:欧州委員会

子豚価格は前年を上回って推移

 一方、子豚価格は再び上昇傾向をみせている。欧州委員会によれば、2013年9月の子豚価格は、1頭当たり48.29ユーロ(6,616円)と前月からやや値を上げ、前年同月比6.4パーセント高となった(図12)。
図12 子豚価格の推移
資料:欧州委員会

 例年の季節変動では、春から夏にかけて子豚価格は下落基調で推移するが、今年は異なる動きをみせている。要因として、飼料価格の低下により、肥育農家の需要が伸びていることに加え、ドイツ、ポーランドなどで繁殖母豚の減少が続いていることが挙げられる。このため、両国へ子豚を輸出しているデンマークの子豚価格は、前月から7.0パーセント値を上げ、50.7ユーロ(6,946円、前年同月比5.7%高)となった。

 安価な飼料価格と、堅調な豚枝肉価格により、肥育経営の収益性は短期的に改善しているものとみられる。しかしながら、繁殖母豚減少による子豚価格の高止まりと、EU全体の経済不況に伴い、低廉な鶏肉へ需要が移行することによる豚肉消費の減少が示唆されており、肥育経営の安定的な収益の向上には懸念が残されている。

                                       (調査情報部 宅間 淳)

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