需給動向 海外

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アニマルウェルフェアの規制強化(母豚ストール飼い禁止)
への対応は難航


◇絵でみる需給動向◇

ストール飼い禁止5カ国のみ対応完了

 昨年12月に開催された食品連鎖・動物衛生常設委員会(SCoFCAH)の会合で示された統計によると、2013年1月1日から施行される母豚ストール飼養禁止(EU指令2008/120/EC)への対応を完了した国は、スウェーデン、オーストリア、エストニア、ルクセンブルグ、英国のわずか5カ国のみであり、8割以上の国々が未対応の経営を抱えている状況にある。

 EUの豚肉生産量上位7カ国の中で、対応が完了している国はなく、最も対応が進んでいる国はデンマークで、85%となっている。生産量1位のドイツでは48%であり、過半数の養豚経営が未対応の状態にある。また、上位7カ国で最も低い対応状況であったのはフランスで、わずか33%であった。

 なお、小規模な養豚経営には今回の規制強化を機に廃業し、施設の更新や改修を行っていない経営も多いと考えられている。今回の調査結果には、このような経営も含まれているとみられ、実態に即した対応状況調査が待たれる。

表6 母豚ストール飼い禁止への対応状況【2012年12月時点】
資料:欧州委員会
 英国養豚協会(NPA)は2012年12月31日付で「ヨーロッパの養豚事業者はEU指令を軽視」と題したプレスリリースを発表し、EUで飼養されている豚の4割がEU指令に適合しない「違法」な環境下におかれていると指摘している。さらにNPAは、アニマルウェルフェア規制に非対応の状態で飼養されている豚が、「1時間当たり4万頭出荷されている」と試算している。

 欧州委員会保健・消費者保護総局(DG SANCO)は、2013年1月28日に各国の農業担当大臣を参集し、当該規制への対応が進まない現状に関して会合を持つ予定である。

子豚は供給不足が懸念される中、市場価格は高止まり

 欧州委員会によると、2012年11月のEU平均子豚価格は1頭当たり47.3ユーロ(5,487円:1ユーロ=116円)となり、前月から0.4%上昇、前年同月比で21.1%高となった。

 例年、EUの子豚価格は11月から上昇をはじめ、翌4月頃にピークを迎える。2012年は11月の価格上昇傾向は極めてわずかであったが、高値を維持している。

 国別にみると、最大の取引量があるドイツは56.5ユーロ(6,554円)となり、前月から0.8%上昇し、前年同月比で26.4%高となった。また、国外供給量の多いデンマークでは46.9ユーロ(5,440円)となり、前月から4.9%下降したものの、前年同月比で5.2%高となっており、高止まりの傾向にある。

 繁殖母豚ストール飼い禁止による子豚供給不足が予想される中、価格上昇が見込まれる季節を迎えることから、さらなる高騰が懸念される。
図4 EUの子豚価格の推移
資料:欧州委員会

2013年のEU豚と畜頭数は減少の予測

 デンマーク食料農業理事会に所属する豚肉市場分析の専門家によると、2013年上半期のEUの豚と畜頭数は1億2360万頭と予測されており、前年同期比2%の減少となるとしている。

 減少の要因は、2013年1月に始まるアニマルウェルフェア規制強化に加えて、飼料穀物相場の高騰も大きな原因とみている。また、最近は飼料穀物の価格が高止まり、中長期的な経営計画を立てにくくなってきており、このことが生産者の不安感を引き起こしていると分析している。

 欧州委員会公表の統計によると、豚用配合飼料価格の上昇傾向は継続しており、EUにおける10月の豚用配合飼料価格は1トン当たり328.12ユーロ(38,062円)と前月から0.9%上昇し、前年同月と比べ18.5%の上昇となり、最高値を更新している。
図5 EUにおける豚用飼料価格の推移
資料:欧州委員会
表7 EUの豚と畜頭数見通し
資料:デンマーク食料農業理事会

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