需給動向 海外

乳価は高値で推移が見込まれるも、2013年の生産量は前年並みの見込み


◆米 国◆


◇絵でみる需給動向◇


生産者乳価は前年同月をかなりの程度上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が11月30日に公表した「Agricultural Prices」によると、2012年11月の生産者乳価(以下、乳価)は前年同月比7.8%高の100ポンド当たり22.10ドルとなり、2カ月連続で前年同月を上回った。乳価は、2月より前年を下回る水準で推移しており、5月には国際的な生乳の供給過剰の影響で同17.3%安の同16.2ポンドまで落ち込んだ。その後、今夏の飼料価格高騰や熱波の影響により生乳生産量が低下したため、乳価は上昇に転じている。
図9 生産者乳価の推移
資料:USDA/NASS「Agricultural Prices」

カリフォルニア州およびウィスコンシン州への影響と対応

 全米における生乳生産量第1位のカリフォルニア州と第2位のウィスコンシン州の10月の生産量を比較すると、カリフォルニア州は前年を3.5%下回る一方で、ウィスコンシン州は前年を4.7%上回った。ウィスコンシン州では干ばつおよび熱波の影響が限定的であったことがわかる。

 経産牛の平均飼養頭数が113頭と北海道と同規模のウィスコンシン州では、酪農家の飼料の自給割合が高い。今夏は価格が高騰した大豆かすの代替飼料としてカノーラ油かすを使うなどの取組みが功を奏し、飼料価格高騰の影響は大きくない。また、図9のとおり乳価が上昇傾向で推移しているため、酪農家の増頭意欲は高い。

 他方、経産牛の平均飼養頭数が1,083頭と大規模経営中心のカリフォルニア州では、連邦政府とは別に独自の乳価制度を設け、乳価が全国と比べて安い。さらに、飼料を外部からの購入に依存しているため、飼料価格高騰の影響が大きく、収益性が悪化している。酪農家の中には、飼料の質を落とさざるを得ず、1頭当たり乳量が減少している。

表7 10月の生乳生産の概況
資料:USDA/NASS「Milk Production
表8 カリフォルニア州およびウィスコンシン州における1頭当たり乳量増減率(前年同期比)
資料:USDA/NASS「Milk Production」
  注:第4四半期は10月のみで比較。

今後の乳価は堅調に推移も、生産量は2012年水準を見込む

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が11月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、2013年第1〜3四半期までの乳価は、前年同期を上回って堅調に推移すると見込まれる。また、2013年の天候は平年並みという予測から、トウモロコシなど飼料原料価格の軟化が期待されており、生産コストの低下による収益性の改善が見込まれている。

 しかしながら、2012年の生乳生産コストは一貫して平年の水準を上回っている。USDA/ERSは、2013年に収益が改善したとしても、全国的に増頭意欲が高まるまでにはまだ時間がかかるとしている。

 このことから、同局は、2013年の1頭当たり乳量は前年比1.1%増の約9,925キログラムと改善するも、全国経産牛飼養頭数は同1.1%減の912万5000頭となると見込まれることから、総生乳生産量は前年同の9058万トンと予測している。
図10 生乳生産コストに飼料費が占める割合の推移
資料:USDA/ERS

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