需給動向 海外

◆米 国◆

豚肉在庫量は増加、肥育豚価格および豚肉卸売価格は低下


◇絵でみる需給動向◇


1頭当たり枝肉重量は14カ月振りに前年同月を下回る

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が11月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2012年10月の豚肉生産量は、前年同月比8.7%増の100万トンとなった。10月のと畜頭数は前年を上回る1086万頭(同9.6%増)となった一方、1頭当たり枝肉重量は14カ月振りに前年同月を下回る92.5キログラム(同1.0%減、前年同月比0.9キログラム減)となった。

 米国畜産業は、6月以降コーンベルト地帯を中心に全米で発生した干ばつにより、トウモロコシなど飼料穀物価格の高騰の影響を強く受けている。養豚業はコーンベルト地帯を中心に営まれており、生産者は養豚業と穀物生産の複合経営を行っている場合が多いことから、飼料穀物価格高騰の影響をある程度吸収できる状況にはある。しかしながら、飼料の一部を購入していることから、飼料コスト抑制を目的として、肥育期間を短縮し早期出荷する動きもみられる。この影響を受け、10月の1頭当たり枝肉重量が減少したものと考えられる。
図2 1頭当たり枝肉重量の推移
資料:USDA/NASS「Livestock Slaughter」

進む豚肉在庫の積み増し

 2012年の豚肉生産量を四半期ごとに見ると、第1〜3四半期の全てで前年同期を上回っている。また、USDA/ERSは、第4四半期についても前年同期を上回ると見込んでいる。豚肉生産が増加する一方、在庫の積み増しも進んでいる。11月の期首在庫は、前年同月を24.0%上回る28万トンとなっており、この在庫の積み増しは、国際需要および国内需要の減退が要因と考えられる。

 豚肉輸出を四半期ごとに見ると、第1および第2四半期の輸出量は前年同期を上回っているものの、第3四半期は0.7%下回り、外需の減退が見られる。在庫を種類別に見ると、最も大きいのは全体の3割を占めるもも肉で、在庫は前年同月を39.9%上回っている。これは、もも肉の最大の輸出先国であるメキシコ(2011年輸出量ベース6割)の需要減退によるものである。メキシコ向けのもも肉輸出量は年により変動しており、これは、メキシコの需要が米国産もも肉の価格動向に左右されているためと考えられる。

図3 豚肉在庫量の推移
資料:USDA/NASS「Cold Storage」
図4 豚肉輸出量の推移
資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」
  注:2012年第4四半期は予測値

肥育豚価格および豚肉卸売価格は前年同月を下回って推移

 供給過剰による豚肉在庫の積み増しにより、肥育豚価格および豚肉卸売価格は下落傾向で推移している。11月の肥育豚価格は前年同月比10.1%安の100ポンド当たり57.0ドル(1キログラム当たり104円:1米ドル=83円)、豚肉卸売価格は同8.5%安の同83.0ドル(152円)となった。

 しかしながら、飼料穀物価格高騰の影響を受け、2013年の豚肉生産は減産に転じるとみられている。USDA/ERSは、2013年の豚肉生産量を前年比1.4%減の1041万トンとする一方、輸出量は前年並み水準の247万トンと見込んでいる。このため、2013年の肥育豚価格および豚肉卸売価格は前年を上回るものと予想される。

 小売価格は肥育豚価格や豚肉卸売価格と比べて総じて需給の影響を受けにくい。このため、10月の豚肉小売価格は前年同月比0.5%高となり、肥育豚価格や豚肉卸売価格の様な大きな変動は見られなかった。

 2013年は生産量の減少の影響を受け、小売価格の上昇が見込まれ、USDA/ERSは11月28日に公表した食品価格指数予測で、2013年における豚肉の価格指数は前年を3.0〜4.0%上回るとしている。
図5 価格上昇率の推移(前年同月比)
資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」


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