需給動向 国内

◆鶏 肉◆

平成24年の食鳥処理量、過去最高を記録


◇絵でみる需給動向◇


 5月31日に公表された農林水産省「食鳥流通統計調査の結果(平成24年)」によると、同年の「肉用若鶏」、「廃鶏」および「その他の肉用鶏」の合計処理羽数は7億4852万羽(前年比4.8%増)、合計処理重量は207万4870トン(同5.7%増)と、それぞれやや増加し、過去最高を記録した(図6)。高病原性鳥インフルエンザや東日本大震災の発生に伴う、前年の生産量の落ち込みからの反動による増加にとどまらず、これまでにない高水準となった背景には、価格優位性に支えられた底堅い需要への対応に加え、価格低迷による収入の減少を生産量の増加で補う動きがあったものとみられる。
図6 食鳥処理羽数および処理重量の推移(全国)

資料:農林水産省「食鳥流通統計調査の結果(平成24年)」
  注:肉用若鶏、廃鶏およびその他の肉用鶏の合計である。

生産量は高水準ながらも、国産品在庫量は大幅に減少

 平成25年1月以降は、ブロイラーのひな導入羽数を抑制する動きが一部見られたものの、国内全体の生産動向に大きな変化はなく、4月の生産量(骨付き肉ベース)は12万6545トン(前年同月比2.6%増)、同年1〜4月の累計は48万368トン(前年同期比1.4%増)と、引き続き高水準となっている(農畜産業振興機構推計、図7)。

 しかしながら、供給過剰により在庫量が増加傾向にあった昨年とは違い、1月以降、国産品推定期末在庫は取り崩しが進み、4月は2万8319トン(前年同月比25.9%減)と、23年9月以来の3万トン以下となった。
図7 鶏肉生産量、輸入量および在庫量の推移
資料:農林水産省「食鳥流通統計」、財務省「貿易統計」、
     農畜産業振興機構推計

むね肉価格は堅調も、もも肉価格は低迷

 平成25年4月の国産品推定期末在庫が大幅に減少したのは、国産品推定出回り量が12万8500トン(前年同月比8.4%増)と、過去の同月実績と比較して最も多かったためであるが、この背景としては、価格優位性や調理法の提案により、むね肉に対する需要が高まってきたことが挙げられる。これに加えて、円安の進行により、ブラジル産鶏肉の取引価格が高止まりの状態にあることから、代替として国産むね肉に強い引き合いがあったものとみられる。このことは卸売価格にも表れており、4月はキログラム当たり222円(既報、同29.4%高)、5月も同231円と、上昇基調で推移している(図8)。

 一方、もも肉については安定的な需要はあるものの、むね肉とは違い、需要量に対して供給量が大きく上回っていることから、4月は同574円(同0.6%安)、5月は同567円(同0.8%安)と、価格を下げている(図8)。
図8 鶏肉卸売価格の推移
資料:農林水産省「食鳥市況情報」
  注:消費税は含まない。

 例年、6月から8月にかけては不需要期とされ、価格が下落基調で推移する傾向にあるが、今年のむね肉については引き続き一定の需要があるとみられることから、大幅に下落する可能性は低く、保合もしくは緩やかな上昇基調で推移すると考えられる。もも肉についても、供給量次第では下落傾向に歯止めがかかる可能性もあり、今後の生産動向に注視が必要である。

                             (畜産需給部需給業務課 田中 あや)

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