豚肉卸売価格は前年を下回り推移
豚肉卸売価格は、2012年後半以降、上昇基調にあったが、例年、需要期である春節(旧正月)以降、需要減退に伴い下落傾向となることから(注)、2013年2月の春節を境に反転し、2013年5月の卸売価格は、1キログラム当たり19.6元(333円:1元=17円)となった(図9)。
今年は豚出荷価格の下落により養豚農家の収益性が悪化したことから、3月以降、中国政府は豚肉の備蓄買付による市場価格の下支えを図った。しかし、卸売価格は依然として前年割れの状態が続き、5月は2011年2月以来27カ月ぶりに20元を割りこんだ。収益性の指標となる損益分岐率( 豚出荷価格/トウモロコシ卸売価格)も、5月22日時点で、5.5:1と政府が目標基準とする6:1を下回っている(5月28日中国商務部発表)。
現地報道によると、政府は農家の収益性改善を目指して、今後も備蓄買付を実施するとしている。しかし、2013年第1四半期の飼養頭数は、昨年と同程度であることから(表5)、市場への供給も安定的であると考えられ、今後大幅な価格の上昇は見込みにくい状況にある。
図9 全国豚肉卸売価格の推移 |
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資料:中国商務部「商務預報」より機構作成 |
注:2011年は、長期の低温や疾病の発生に起因した出生率の低下や子豚死亡率の
上昇などに起因して市場供給量が減少し、春節の需要期を過ぎても価格は上昇
基調にあった。
表5 豚飼養頭数の推移 |
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資料:国家統計局公表資料より機構作成 |
冷凍豚肉の輸入量は増加するも、米国産は6割減
国内豚肉卸売価格が低迷するなか、2013年1〜4月の冷凍豚肉の輸入量は、前年同期比7.0パーセント増の13万598トンとなった(表6)。
輸入先国別にみると、2011年12月の2万1284トンをピークに減少傾向にある米国からの輸入が、同61.5パーセント減の2万2428トンとなった。最近では2013年2月の中国政府によるラクトパミンの残留検査証明書の提出義務などの要因により、毎月5,000トン前後で推移している。
一方、この穴を埋めるかたちで、EUからの輸入が急増している。特にドイツは、豊富な供給余力や高い価格優位性などから、同184.2パーセント増の3万2712トンを記録し、4カ月間で2011年の年間輸入量を超える状況となった。
表6 冷凍豚肉の国別輸入量 |
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資料:GTI社 "Global Trade Atlas"
注:HSコード020329 |
冷凍豚肉の輸入量は増加基調にあるものの、中国政府によるラクトパミンの取り扱いについては、今後も不透明であり、米国からの輸入が、急激な回復を見せる材料は乏しい状況にある。なお、5月下旬には、中国食肉加工大手企業による米スミスフィールド・フーズの買収が発表された。当該買収には米国政府の承認が必要となることから、すぐには米国からの豚肉輸入に影響を与えるとは考えにくいが、承認された場合には、合併効果として、将来的には、米国からの輸入量の増加が予想される。当該承認手続の完了は今年度下期を予定している。 |