需給動向 海外

◆豪 州◆

干ばつの拡大によりと畜頭数増加に拍車、
これに伴い4月輸出量は高水準


◇絵でみる需給動向◇


と畜頭数の増加により肉牛価格はさらに下落

 豪州統計局(ABS)によると、2013年第1四半期(1〜3月)のと畜頭数は、186万7152頭(前年同期比6.9%増)となった(図5)。2012年後半以降、肉牛飼養地域の広範囲で高温乾燥が続き、放牧環境の悪化による早期出荷から、と畜頭数は増加している。

 平年であれば、夏期に降雨が多いクイーンズランド(QLD)州では、夏期にあたる2013年1月以降も内陸部で乾燥状態が続き、4月29日には、州政府が州の約1/3に相当する13地域について干ばつ宣言を行った(図6)。こうした状況から、QLD州の5月1週目のと畜頭数は、これまでの記録を2,500頭上回る8万5443頭と、と畜頭数の増加に拍車がかかっている。

図5 と畜頭数の推移
資料:ABS
  注:子牛は含まず
図6 QLD州の干ばつ宣言地域
資料:QLD州政府
  注:赤塗りの部分が干ばつ宣言のなされた地域
 と畜頭数の増加を受けて、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2013年5月9日時点でキログラム当たり285.75豪セント(294円:1豪ドル=103円)と、2009年の水準にまで下落した(図7)。肉牛価格の下落により、生産者の経営状況が厳しさを増していることも、肉牛出荷をさらに加速させる要因になっているとみられる。
図7 EYCI価格の推移
資料:MLA
注 1:年度は7月〜翌6月
注 2:EYCI価格は東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場における
    若齢牛の加重平均取引価格。家畜市場の指標価格となっており、肥育牛や
    経産牛の家畜市場価格などとも9割近い相関関係にある。

4月牛肉輸出量、単月では2008年以来の高水準

 一方、と畜頭数の増加に伴い、牛肉輸出は2013年に入り、高水準を維持している。豪州農漁林業省(DAFF)によると、4月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は8万5332トン(前年同月比18.6%増)となり(表1)、4月単月としては2008年以降の最高数量となった。これについて、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、1米ドル=1.037豪ドル(4月平均)と豪ドル高で推移する為替相場の影響を、肉牛価格の下落が緩和し、海外市場における豪州産牛肉の価格競争力を保つ要因になったとしている。

表1 国・地域別牛肉輸出量(4月)
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:CISはロシア他
 輸出先別にみると、日本向けは円安基調や米国産との競合が影響し、2万3115トン(同6.4%減)となった。また、米国向けは、豪州産の中国向け増加や、米国におけるNZ産の輸入増から、1万7722トン(同7.5%減)となった。

 一方、中国向けは1万1654トン(同37.5倍)となり、3カ月連続で、2012年第3位の韓国向けを超える水準となった(図8)。MLAは、2013年の中国向けの輸出見通しについて、当初の見込みである3万5000トン(前年比6.4%増)を8万トン超に引き上げている。
図8 主要国別牛肉輸出量の推移(月別)
資料:DAFF

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