米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2月1日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2013年1月1日現在の飼養頭数は、前年比1.6%減(146万9000頭減)の8930万頭となった。米国の牛の飼養頭数は、2011年から2年連続の干ばつによる草地への被害により減少し、9000万頭を割り込んだ。この干ばつは、肉用牛の繁殖経営の中心地であるテキサス州など中南部で特に深刻であり、繁殖農家は草地の生育が良い中北部へ牛群を移動させているものの現在、増頭を行える状況ではない。また、肥育農家も肥育素牛価格と飼料穀物価格の高騰によりフィードロットへの増頭が弱含んでいるため、今後も当分の間はこの傾向が続くものとみられる。
図1 牛飼養頭数の推移 |
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資料:USDA/NASS「Cattle on Feed」」
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肉用繁殖雌牛減も、更新用は増加
飼養頭数を種類別にみると、肉用繁殖雌牛は前年比2.9%減(86万2600頭減)の2929万5300頭と5年連続で減少した。肉用繁殖雌牛の減少は、繁殖牛の主要生産州であるテキサス州で同12%減、(55万頭減)およびカンザス州で同8.2%減(11万9000頭減)などで顕著であった。また、干ばつの影響により、テキサス州などの生産者が干ばつの影響が少ない州へ牛群を移動させたため、中北部のノースダコタ州やミネソタ州などでは繁殖雌牛の飼養頭数が増加に転じている。
一方、更新用未経産牛(肉用種)の頭数は前年比1.9%増の536万600頭と2年連続の増加となった。これは、草地の被害や粗飼料価格の高騰により、繁殖効率の悪い雌牛を中心に淘汰が進んだ一方で、牛群維持のため必要最低限の更新が行われているためとみられる。このような更新の結果、2013年の子牛生産頭数は前年比2.3%減の1378万7000頭になると見込まれ、2013年の素牛供給はさらにひっ迫するものと考えられる。
表1 部門別飼養頭数の推移 |
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資料:USDA/NASS「Cattle」
注1:表中の*1は500ポンド以上、*2は500ポンド未満
2:各年1月1日現在 |
牛肉の米国内需要は減退する一方、輸出量は増加の見通し
同省経済調査局(USDA/ERS)は、2013年の牛肉の国内消費量を前年比3.5%減と見込んでおり、国内経済の回復が遅れる中、消費者の需要が高い牛肉からより安い豚肉や鶏肉にシフトすることが想定されている。一方、2013年第一四半期の牛肉輸出量は同6.6%増と見込まれている。日本が米国産牛肉の輸入緩和を講じたことによる輸入需要の高まりを考慮しているものとみられる。なお、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、2013年の日本への牛肉の輸出量(内臓を含む)を同45%増の22万5000トンと見込んでいる。 |