オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の2月の平均生乳価格は100キログラム当たり34.74ユーロ(4,238円:1ユーロ=122円)となり、10カ月ぶりに前年を上回った(図19)。
これは、2012年7月以降、EU域内の生乳生産量が前年を下回って推移していることによる。2013年1月の生乳生産量は、昨年の天候不良による影響が継続しており、EU全体で前年比2.1%減となった。特に減少率が高かった国は、アイルランドで同11.8%減、英国で同5.3%減、フランスで同4.2%減となるなど主要生産国での減少が目立つ(表4)。
今後の見通しは、昨年の秋の天候不良による品質の低い粗飼料と穀物飼料高騰の影響により、生乳生産の回復は困難との予測である。
図19 生乳価格の推移 |
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資料:LTO
注:域内主要乳業17社の平均値 |
また、生乳価格は、域内の生乳生産の減少に加えて、NZの干ばつにより乳製品の国際市場価格が高騰しており、夏期まで堅調に推移する見込みである。
表4 国別生乳出荷量 |
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資料:ZMB
注:「-」は数値未集計 |
2013年、バター民間在庫補助は前年を下回ってスタート
欧州委員会は2月6日、2013年におけるバターの民間在庫に対する補助単価を決定した。本年の補助単価は、固定経費が1トン当たり14.88ユーロ(1,815円:1ユーロ=122円)と前年同額、保管経費は1トン当たり0.25ユーロ(30.5円)と、前年より0.01ユーロの引き下げとなった。
バターの民間在庫は、供給が需要を上回る3月から8月にかけて、バターを市場から隔離し、需要期である秋以降に市場に放出することで安定的な流通を図ることを目的としている。バター民間在庫補助は、在庫の保管を行う者に対し、補助金が交付される仕組みとなっている。
2013年3月24日までの在庫量は3,034トンであり、前年の2万4456トンと比べて大幅に少ない(図20)。2012年は、生乳生産が増加したことからバター生産が増加し、年初よりバター価格が下落したのに対し、2013年は、減産によりバター価格は堅調に推移している。また現在、スペインの記録的な多雨、EU北部における低温が報告されており、天候不良による生乳生産への影響からさらなる価格上昇も懸念されている。
図20 EUにおけるバター民間在庫量 |
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資料:Eucolait |
2012年、バター生産は下半期に減少
ドイツ乳製品市場化価格情報センター(ZMB)によると、2012年のEUにおけるバター生産は、第1四半期は前年比6.6%増、第2四半期は同5.0%増と増加基調で推移したが、第3四半期が同5.1%減、第4四半期で2.4%減となり、天候不良による生乳生産が減少し始めた夏期以降減少に転じた(図21)。これにより、年間のバター生産量は、EU全体で同1.2%増の193万6000トンにとどまった。
国別にみると、天候不良の影響を受けたスペイン、フランス、アイルランドでそれぞれ同10.8%減、3.1%減、0.5%減とバター生産量は減少した。一方、その外の加盟国では増加し、EUで最大のバター生産国であるドイツでは同3.2%増の48万8800トン、ポーランドで同2.5%増の17万3300トンと、加盟国間で差が出る結果となった。
図21 四半期別バター生産量 |
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資料:ZMB |
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