需給動向 海外

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供給不足が懸念されるも需要減により豚枝肉価格は横ばい


◇絵でみる需給動向◇


2013年3月の豚枝肉卸売価格、前年同月比6.4%高

 欧州委員会によると、EUにおける3月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり171.93ユーロ(2万975円:1ユーロ=122円)と前月から0.5%上昇、前年同月比で6.4%高となった(図11)。豚枝肉価格は、域内豚肉生産量の一時的な増加を受け、昨年10月より弱含みの傾向にあったが、前年水準まで値下がりすることなく2013年1月から横ばいの傾向を見せている。例年の傾向では、クリスマス需要の後に急落し、2月から上昇するという季節的変動を見せるものの、今回は異なる動きをみせた。要因として、輸出需要が減退する中で、継続的な供給不足が価格下落を相殺したものと考えられる。なお、今後は初夏の需要期が控えているため、価格は上昇に向かうと見込まれる。

 豚肉主要生産国の状況をみると、フランスが前月比4.4%高の162.16ユーロ(1万9784円)、スペインが前月比2.7%高の192.27ユーロ(2万4067円)とやや値を上げている。対照的に、イタリアは、前月比5.8%安の183.04ユーロ(2万2331円)とやや値を下げた。また、デンマークは前月比0.8%安の155.38ユーロ(1万8956円)、ドイツは0.2%高の171.36ユーロ(2万906円)となっており、ほぼ横ばいの価格推移となっている。

図11 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

EU域外への豚肉輸出がかなりの程度減少

 欧州委員会が公表した統計によると、EUにおける2013年1月のEU域外への豚肉等(内臓等含む)輸出量は12万3682トンであり前年同月比7.6%減、豚肉(冷蔵・冷凍)では前年同月比9.8%の減少となった(表2)。

 要因として、最大の相手先であったロシア向けの豚肉等(内臓等含む)輸出が前年同月比15%減、豚肉(冷蔵・冷凍)では同30%減と大幅な減少となったことがあげられる。ロシアでは、WTO加盟以降、南米からの輸入が増加しており、価格優位性に劣るEU産豚肉のシェアが奪われる形となっている。その他、ウクライナ、ベラルーシ向けも輸出量を減少させている。加えて、口蹄疫からの回復により国内生産を拡大させる韓国への輸出量が61%減と大幅に減少した。

 一方、ユーロ安米ドル高の後押しを受けて、中国向けは豚肉等(内臓等含む)輸出が前年同月比81%増、豚肉(冷蔵・冷凍)では同114%増となった。ロシア向け、日本向けの減少もあり、中国は両国を抜いて最大のEU産豚肉輸入国となった。
表2 EU域外への豚肉等輸出量(1月)
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース

豚肉消費は減退傾向

 英国の農業園芸開発委員会(AHDB)の試算によると、2012年のEUにおける1人当たり豚肉消費量は40.4キログラムとなり、前年と比べて300グラム減少した(図12)。同消費量は、2007年には43キログラムを超えていたが、年々減少を続けている。2012年の減少要因としては、年間を通じた豚肉価格の高止まりとEUを巡る経済不況が原因として考えられている。

 豚肉はヨーロッパの人々にとって最も重要なタンパク質源であるが、各国で豚肉の1人当たり消費量は大きく異なっている。近年、鶏肉を中心とした豚肉以外の食肉消費が増加している英国では、年間消費量は25キログラムと少ない。消費量が多いのは、オーストリア、ドイツ、スペインであり、英国の2倍をこえる年間1人当たり50キログラム以上の豚肉が消費されている。

 長引く経済不況の中、依然として豚肉価格は高値を維持していることから、今後ともEU域内消費の伸び悩みが懸念されている。

図12 年間1人当たり豚肉消費量(2012年、EUの主要豚肉消費国)
資料:AHDB、BPEX

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