米国農務省農業統計局(USDA/NASS)が3月28日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」(豚の飼養頭数に関する四半期報告)によると、米国の養豚が生産拡大に向かっていることが明らかになった。生産が拡大に向かったことにより、これまで高値で推移してきた豚肉の価格が、今後、安値に転じることが予想される。
2013年3月1日現在の米国の豚総飼養頭数は6591万頭と、前年から1%の増加となった(図9)。2012年12月から2013年2月の四半期における分娩母豚頭数も、前年同期比1%増の287万9000頭と増加し、加えて、離乳子豚頭数も繁殖効率の向上や事故率の低下により同2%増の2901万9000頭となった。実際、この四半期における1腹当りの産子数は10.08頭と前年同期の9.97頭から改善されている。昨年9月以降、トウモロコシは高値であったにもかかわらず、飼料等向け消費量が当初の想定よりも多かったことから、養豚生産における増産傾向は、関係者の予想と大きく異なるものではなかった。しかし、生体重120〜179ポンド(54〜81キログラム)の範囲の肥育豚の頭数が、前年同期比2%増の1305万9000頭となったことは、関係者の予想を上回るものであった。この体重範囲の肥育豚は、次の四半期に出荷されることになるため、生産拡大の兆候であるとともに、今後、供給量の増加により豚肉価格が安値に転じることを示唆している。
飼料穀物価格の高騰により、豚枝肉、トウモロコシ、大豆かすの先物市場価格(期近)と子豚の価格から推定される養豚農家の収益性は、出荷豚1頭当たり最大50ドル程度の赤字となる状況が続いていた。しかし、米国農務省(USDA)が2月のアウトルック会議で公表した、2013/14年度のトウモロコシ生産量、在庫量、農家出荷価格の見通しは、2013年作季の天候が平年並みとなった場合という条件付きながら、大方の予想通り非常に楽観的なものとなった。これが現実となれば飼料価格が大幅に低下することが期待されている。実際の作付けはまだ行われていないが、3月28日に公表されたUSDAの作付け意向調査に含まれていたトウモロコシの在庫調査の結果が大方の想定を上回っていたことから、先物価格は6ドル台半ばまで大幅に低下している。今回のNASS報告は、このような飼料穀物の先安観による豚肉の生産増予想を裏付けるかたちとなった。なお、米国では、牛群の縮小傾向が継続し、牛肉価格が高騰しており、さらに経済の回復も遅れている。このことから、食肉消費も牛肉より低価格の豚肉や鶏肉にシフトする傾向が続いており、豚肉の生産拡大はこのような消費拡大への期待によるものであるとみられる(図10)。
豚の飼養頭数の増減を州別にみると、飼養頭数が最多のアイオワ州が前年同期比3%増の2030万頭となっているなど、コーンベルト諸州でほぼ前年並み以上となっているほか、大手インテグレーターによる後発養豚地域であるノースカロライナ州でも同3%増の890万頭となっている。ノースカロライナ州では、生体重120〜179ポンドの範囲の肥育豚の頭数が、同6%増と他の体重区分に比べて大幅に伸びており、先にスミスフィールド社が輸出向けにラクトパミン・フリーによる生産および処理能力を増強することを公表したとおり、輸出強化を想定した増産を行っているものとみられる。
図9 四半期ごとの豚総飼養頭数の推移 |
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資料:USDA/NASS
注:年度は、9月〜翌8月まで |
図10 豚肉卸売価格の推移 |
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資料:USDA「Livestock, Dairy, and Poultry Situation and Outlook」
注 1:年度は、9月〜翌8月まで
注 2:価格は、カットアウト・バリュー
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