調査・報告  畜産の情報 2013年5月号

平成23年度乳製品の流通実態調査の
結果について

畜産需給部乳製品課


【要約】

 当機構では、乳製品の需給動向を把握するため、乳業メーカー等に対し、業種別の仕向先や需要者の用途についての実態調査を実施した。平成23年度の調査対象品目のうち、生乳・乳製品の需給上、重要な品目とされるバターと脱脂粉乳について、国内のバター出回り量の8割弱が卸売業者を経由していることや、輸入バターの半数近くが乳業メーカー内で消費されていること、脱脂粉乳の出回り量が減少傾向にある中で、特に社外販売される量が減ったことなどが明らかとなった。

1.調査対象および回収率

 調査対象は、乳製品の供給者である乳業メーカー、需要者である食品製造業や外食業、ホテル業であり、調査対象数は1,017社、有効回収数は253社(有効回収率24.9%)であった。

2.平成23年度における乳製品の需給

 平成23年度のバターおよび脱脂粉乳の需給は、22年度の猛暑による牛群へのダメージから生乳生産が落ち込み、逼迫基調で推移した。23年度のバター生産量は6万3000トン(前年度比10.1%減)、脱脂粉乳生産量は13万5000トン(同9.3%減)となった。乳業メーカーは、計画的な供給契約の下、ユーザーに対して抑制的な供給をせざるを得なかった。バター価格は23年度の1年間で9%上昇し、1キログラム当たり1,158円、脱脂粉乳価格は5%上昇し、25キログラム当たり15,236円となった。バターについては、供給不足が見込まれたこともあり、当機構がカレントアクセスおよび追加輸入により、1万3350トンのバターを海外から輸入し、市場に放出した。

3.流通経路と業種別・用途別消費量

(1)バター

 平成23年度における国内のバターの推定出回り量7万8150トン(機構調べ)を100とし、その流通経路と業種別消費量の推計を行った結果は、次のとおりである。

1)流通経路

 流通経路を見ると、推定供給量7万8150トンのうち、国産が6万4600トン(構成比82.6%)、輸入が1万3550トン(同17.3%)となっている(図1)。このうち乳業メーカーでの社内消費が8,850トン(同11.3%)、乳業メーカーからの社外販売が6万3800トン(同81.6%)、機構から一次卸への売渡しが4,350トン(同5.6%)、業務用メーカーへの売渡しが1,150トン(同1.5%)となっている。

 乳業メーカーなどから需要者にバターが供給される流通経路において、一次卸を通じての販売は5万8900トン(同75.4%)と大きなシェアを占めており、卸売業者が流通に果たす役割が大きいことが分かる。


図1 バターの流通経路(平成23年度)

注1:緑色は供給者、ピンク色は需要者
注2:%は全体の推定供給量に対する比率
注3:推定供給量78,150トン= 64,600トン(乳業メーカーの自社製造+在庫取り崩し)+13,550トン
   (機構の輸入放出)
    推定消費量78,150トン=8,850トン(乳業メーカー社内消費)+53,400トン
   (業務用バター需要者)+15,900トン(家庭用小売業)
2)業種別消費量

 業種別消費量(推計)は、業務用が5万3400トン(構成比68.3%)と最も多く、小売業で販売されている家庭用バターは1万5900トン(同20.3%)と2割を占める程度である(表1)。内訳を見ると、業務用の菓子メーカーが3万1100トン(同39.8%)で最も多く、次いで小売業向け家庭用が1万5900トン(同20.3%)、以下、乳業メーカーの社内消費が8,850トン(同11.3%)、乳業・アイスクリームメーカーが6,850トン(同8.8%)となっている。

 国産バターと輸入バターの業種別消費量の内訳を見ると、国産バターは、菓子メーカーが全体の42.3%で最も多く、次いで小売業が24.6%、以下、外食・ホテル業、乳業メーカー(社内消費)となっている。なお、小売業向けの家庭用バターはすべて国産である。

 一方、輸入バターは、菓子メーカーが全体の27.7%で最も多く、次いで乳業メーカー(社内消費)が26.2%、以下、乳業・アイスクリームメーカー、パンメーカー、外食・ホテル業となっている。

 国産バターの価格が上昇する中、乳業メーカーにおいては、社内消費・業務用共に、他の業種に比べて、消費量全体に占める輸入バターの割合が多い傾向にあるが、菓子メーカーや外食・ホテル業などは、国産バターへの需要が根強い。
表1 バターの業種別消費量の内訳(平成23年度)


3)業種別消費量の変化(平成22年度との比較)

 消費量(推定出回り量)については、価格が一貫して上昇したことや、乳業メーカーから需要者への供給が計画販売の下、抑制的であったことから、7万8150トンと前年度と比較して約7%減少した(表2)。

 23年度の小売業向け家庭用は、小売価格が値上げされたことなどから前年度比16%減の1万5900トンとなった。22年度からの業種別消費量の変化としては、アイスクリームメーカーおよび加工油脂メーカーは、供給環境が厳しい中、原材料をバターから輸入調製品等に切り換えたため消費量を減らしたが、菓子・パンメーカーは、おおむね消費量を維持した。
表2 バターの業種別消費量の推移


4)用途別消費量

 推定消費量7万8150トンの用途について見ると、菓子・デザート類が1万6200トン(構成比20.7%)と最も多く、次いで小売業向け家庭用が1万5900トン(同20.3%)、以下、マーガリン類が1万2550トン(同16.1%)、パン類が7,100トン(同9.1%)、アイスクリーム類が5,050トン(同6.5%)の順となっており(図2)、特定の用途に偏ることなく、多様な食品の原材料として使用されている。
図2 バターの用途別消費割合(平成23年度)


(2)脱脂粉乳

 平成23年度における国内の脱脂粉乳の推定出回り量14万6000トン(機構調べ)を100とし、その業種別消費量の推計を行った結果は次のとおりである。

1)流通経路

 流通経路と業種別消費量(平成23年度推計)を図3、表3に示した。推定供給量14万6000トンのうち、国産が14万5900トン、輸入が100トンとなっている。また、乳業メーカーの社内消費が4万6100トン(構成比31.6%)、社外販売が9万9900トン(同68.4%)となっている。このうち、需要者に直接販売されるのは3万2550トン(同22.3%)であり、一次卸を通じての販売が6万7350トン(同46.1%)、二次卸を経由するものが3,650トン(同2.5%)となっている。

 バターの流通ルートと比較すると、小売業の家庭用向けの消費量が非常に少なく、乳業メーカーでの社内消費の割合が高い。また、卸売業者を経由せず、需要者に直接販売される割合も高くなっている。

2)業種別消費量

 業種別消費量について見ると、乳業メーカーの社内消費が4万6100トン(構成比31.6%)で最も多く、次いで乳業・アイスクリームメーカーが3万7600トン(同25.8%)、以下、はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが3万400トン(同20.8%)、菓子・パンメーカーが1万550トン(同7.2%)となっている。
図3 脱脂粉乳の流通経路(平成23年度)

注1:緑色は供給者、ピンク色は需要者
注2:%は全体の推定供給量に対する比率
注3:推定供給量146,000トン(乳業メーカーの自社製造+在庫取り崩し)
   推定消費量146,000トン= 46,100トン(乳業メーカー社内消費)+98,750トン(業務用バター需要者)
   +1,150トン(家庭用小売業)
表3 脱脂粉乳の業種別消費量の内訳(平成23年度)

3)業種別消費量の変化(平成22年度との比較)

 業種別消費量については、平成23年度は14万6000トンと前年度と比較して9.3%減少した。特に、菓子・パンメーカーやはっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが消費量を減らしている。また、小売業の家庭用向けも大きく減少した(表4)。

 前年度と比較して、乳業メーカーから社外販売される量が減少したのは、脱脂粉乳価格が1年間で25キログラム当たり1万4584円から1万5236円へと4.5%上昇したことから、乳業・アイスクリームメーカーや菓子・パンメーカーなどにおいて、脱脂粉乳から輸入調製品に需要が移行したためと考えられる。
表4 脱脂粉乳の業種別消費量の推移

4)用途別消費量

 推定消費量14万6000トンの用途について見ると、はっ酵乳・乳酸菌飲料が7万2920トン(構成比49.9%)で全体の約半分を占め、次いで乳飲料が2万5300トン(同17.3%)、アイスクリーム類が1万3200トン(同9.0%)となっており、これらの品目で全体の約8割近くを占めている(図4)。
図4 脱脂粉乳の用途別消費割合(平成23年度)

 バターが多様な食品の原料として使用されているのに対し、脱脂粉乳は、はっ酵乳・乳酸菌飲料、乳飲料、アイスクリーム類で主に消費されている。

 脱脂粉乳については、原材料としての需要が脱脂濃縮乳や調製品に移行していることから全体の消費量が減少したと考えられるが、主な用途であるはっ酵乳・乳酸菌飲料や乳飲料、アイスクリーム類については、製品生産量が大きく増加しているため、これらの用途への消費量が増加したものと考えられる(表5)。
表5 脱脂粉乳の用途別消費量の推移



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