海外情報  畜産の情報 2013年5月号

豪州の農畜産物需給見通し
〜2013年豪州農業観測会議から〜

調査情報部 伊藤 久美、畜産振興部畜産流通課 布村 顕幸、畜産需給部乳製品課 山領 弥奈




【要約】

 豪州農業資源経済科学局が3月5日から6日にかけて開催した農業観測会議で公表した農畜産物需給見通しは以下の通り。

 牛肉産業は2012年後半以降の高温乾燥気候から、と畜頭数が増加しており、2013年から飼養頭数は減少に転じるとの見通し。生産量は中期的に増加し、2017/18年度には230万トンに達するとみている。輸出量は米国向け、新興国向けが増加する一方、日本向けは減少し、2017/18年度には米国向けが日本向けを超えると予測。
 酪農産業は、国際需給の緩和により中期的に乳価の下落基調が見込まれ、これに伴い飼養頭数の拡大も減速するとみている。生産量は1頭当たり乳量の伸びにより中期的に増加傾向で推移。また、乳製品の輸出をみると、日本、東南アジア向けチーズ輸出が伸張し、全粉乳も中国からの堅調な需要から一定水準を保つ。

 穀物生産は、2013/14年度は堅調な穀物国際価格から作付けが増加し、小麦・大麦生産量が1割増、ソルガム生産量は2割増と見込まれ、中期的にも増加基調で推移。一方、同年度の小麦輸出量は、前年度の在庫量の低下から2割以上の減少が見込まれ、中期的にはわずかな減少との見通し。

1.はじめに

 豪州では2012年後半から、南東部を中心に高温乾燥気候が継続し、2012/13年度(7月〜翌6月)は、肉牛のと畜頭数増加や生乳生産量の減少、小麦の大幅な減産など、農畜産業に様々な影響がみられている。

 輸出環境に目を向けると、底堅い経済成長をみせるアジアや中東向けに、地の利を活かして、食肉や乳製品、穀物輸出を拡大させる一方で、米ドルに対して豪ドル高で推移する為替の影響が、海外市場における輸出競争力の低下や輸出企業の収益圧迫をもたらすなど、厳しい状況にも置かれている。

 こうした中、2013年3月5日から6日にかけて、豪州農業資源経済科学局(ABARES)は首都キャンベラで農業観測会議(以下、「アウトルック」という。)を開催し、2017/18年度までの豪州の農畜産物需給見通しを発表した。豪州は日本にとって牛肉や乳製品、飼料用小麦などの重要な輸入先国であることから、本稿では、アウトルックの報告内容の中から牛肉・酪農産業および穀物生産の動向について、短中期的な見通しを紹介する。

 なお、本稿中の為替レートは1豪ドル=100円(2013年3月末日TTS相場99.93円)、1米ドル=95円(同95.05円)を使用した。

2.牛肉産業の見通し

(1)肉牛飼養頭数
 〜放牧環境の悪化によると畜頭数の増加から、飼養頭数は減少〜

 2010年以降2年連続で良好な天候に恵まれたことから、肉牛の飼養頭数は拡大し、2012年6月末時点で2640万頭(前年同期比1.9%増)と、ここ30年で最高を記録した。

 しかし、2012年後半以降、高温乾燥気候による放牧環境の悪化から、早期出荷やとう汰が進んだ。この結果、と畜頭数が増加して、頭数増加の動きは減速しつつある。牛群拡大の指標となる雌牛と畜頭数をみると、2012/13年度前半(7〜12月)は160万頭(前年同期比8%増)と、同時期の雄牛と畜頭数(220万頭:同2%増)の増加率を上回るなど、雄牛と比較して雌牛のと畜頭数は著しく増加している。こうしたことから、飼養頭数は2013年より減少に転じ、2013年の肉牛飼養頭数は2610万頭(前年同期比1.1%減)、また、2014年は2590万頭(同0.8%減)と見込んでいる。

 肉牛飼養頭数は中期的に横ばいで推移するとみられ、2018年には2600万頭(2012年同期比1.5%減)まで減少すると予測している(図1)。

図1 肉牛飼養頭数の見通し
資料:ABARES
注 1:各年6月末時点
注 2:2012年以降は予測値

(2)牛肉生産
 〜牛肉生産は増加傾向で推移、2017/18年度には230万トンの見込み〜

 放牧環境の悪化に伴うと畜頭数の増加により、牛肉生産は増加傾向にある。2012/13年度のと畜頭数は813万頭(前年度比3.3%増)、牛肉生産量は219万トン(同3.3%増)が見込まれ、2013/14年度についてもと畜頭数は837万頭(同2.9%増)、牛肉生産量は225万トン(同2.8%増)とみている。

 中期的にも、と畜頭数の増加傾向は継続するものの、雌牛のと畜割合の増加により平均枝肉重量は減少することから、牛肉生産量の増加は緩やかなものになり、2016/17年度をピークに減少するとみている。2017/18年度には、と畜頭数は880万頭(2011/12年度比11.8%増)、牛肉生産量は230万トン(同8.7%増)に達するとの予測である(図2)。
図2 と畜頭数と牛肉生産量の見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

(3)牛肉輸出
 〜米国や新興市場の需要拡大により、輸出量は増加〜

 と畜頭数、牛肉生産が増加する中で、牛肉輸出も増加傾向にあり、2012/13年度輸出量は97万5000トン(前年度比2.9%増)、2013/14年度は100万トン(同2.6%増)に達するとしている。主要輸出先では、日本向け輸出量が減少するとみられる一方、米国、韓国向けは輸入牛肉需要の拡大により増加としている。また、中国向けは2012年9月以降急速に増加しており、2012/13年度は5万トン(同6.5倍)と大幅増を見込むなど、今後の輸出拡大に貢献するとみられる。

 中期的には、米国における豪州産牛肉需要の拡大や、東南アジアおよび中東諸国など新興市場での牛肉消費の拡大が、豪州産牛肉の輸出を支えるとみられており、2017/18年度には輸出量は104万トン(2011/12年度比9.7%増)に達する見通しである。

 なお、豪州産牛肉の輸出単価をみると、日本向けなど高価格帯冷蔵牛肉の需要減少と、米国や新興市場向け低価格帯冷凍牛肉の需要拡大から、2017/18年度にはトン当たり4,128豪ドル(2011/12年度比12.6%安、41万円)※まで低下する見通しである(図3)。

*2012/13年度の為替ベースでの実質価格

図3 牛肉輸出量および輸出単価の見通し
資料:ABARES
注 1:船積重量ベース
注 2:2012/13年度以降は予測値
注 3:輸出単価・実質ベースは2013/14年度以降、
    2012/13年度の為替ベースで算出
ア 日本向け

 日本全体の輸入牛肉需要は増加するとみている中で、米国産牛肉の輸入月齢緩和による米国産の輸入増加などから、日本向け輸出量は2012/13年度が30万5000トン(前年度比6.4%減)、2013/14年度が29万トン(同4.9%減)と減少を見込んでいる。

 日本市場における米国産との競争は、冷蔵牛肉やグレインフェッド牛肉など高価格帯で強まるが、加工用牛肉など外食産業向けの冷凍牛肉は、米国産と比べて価格優位性があることから、影響は小さいとみている。

 豪州産の減少と米国産の増加は継続するものの、豪州産冷凍牛肉への需要は漸次拡大し、2017/18年度は27万トン(2011/12年度比17.2%減)と、中期的には緩やかな減少にとどまるとしている

イ 米国向け

 米国国内では、干ばつの影響により加工用に仕向けられる経産牛のと畜の減少が見込まれることから、米国向け輸出の大半を占める加工用牛肉需要はさらに高まるとしている。米国内で、国産牛肉価格の上昇に伴い加工用牛肉の輸入価格が上昇していることも、米国向けを増加させる要因の一つとしている。また、短期的には、カナダにおける牛肉減産により、カナダ産冷蔵牛肉の輸入減少が見込まれることから、これに代わるものとして、豪州産冷蔵牛肉への需要が高まるとみている。こうしたことから、米国向け輸出量は、2012/13年度に23万トン(前年度比12.2%増)、2013/14年度には25万トン(同8.7%増)までの増加を見込んでいる。

 米国の牛肉生産量は今後さらに減少するとの見方から、2017/18年度には27万5000トン(2011/12年度比34.1%増)と、日本向けを上回る見通しである。

ウ 韓国向け

 韓国向けは、韓国内における牛肉生産量の減少や牛肉需要の高まりから、2012/13年度に13万3000トン(前年度比8.1%増)、2013/14年度には14万トン(同5.3%増)と増加基調にあり、豪州産が韓国における輸入牛肉の最大のシェアを維持するとみている。

 中期的にも、韓国向け輸出は増加との見通しであり、2017/18年度には15万トン(2011/12年度比22.0%増)に達すると予測している。しかしながら、今後、米韓FTAにより韓国における米国産の関税率は段階的に引き下げられ、豪州産との関税率の差が拡大することから、豪州産の価格優位性は徐々に低下し、米国産との競争が強まるものとみている。

エ その他向け

 2011/12年度の輸出量が主要3カ国、ロシアに次いで第5位のインドネシアでは2009年、政府が牛肉自給率を2014年までに9割まで向上させる政策を掲げた。これを達成するために、2011年以降、牛肉の輸入割当数量が設定された結果、インドネシア向けは2012/13年度に2万6000トン(前年度比31.3%減)、2013/14年度には2万トン(前年度比23.1%減)までの減少を見込んでいる。なお、2013年のインドネシアにおける全輸入割当数量は3万2000トンとなっている。今後も、豪州はインドネシアへの最大の牛肉供給国であるとみられるものの、インドネシア向け輸出の動向はインドネシア政府の政策次第と考えられる。

 一方、2011/12年度第6位の台湾向けは、2012/13年度に3万9000トン(前年度比3.1%増)、2013/14年度には4万トン(同2.6%増)と、増加傾向の推移を見込んでいる。短期的には、2012年9月のラクトパミン含有量に係る米国産の輸入制限の緩和により、米国産の台湾向け輸出量が増加することから、豪州産の需要拡大は限定的とみている。しかし、牛肉需要の高まりを受け、中期的には豪州産牛肉の台湾への輸出量は増加し、2017/18年度には5万トン(2011/12年度比32.3%増)に達する見通しである。

 また、ベトナム、マレーシア、フィリピンおよび中東諸国など新興市場向けについても、牛肉需要の拡大から、中期的に増加を予測している。同時に、これらの市場では、インド産水牛肉やブラジル産牛肉との競争が強まるともみている。インドは東南アジアや中東を主要市場とし、近年、輸出を急速に拡大している。一方、ブラジルは牛肉を増産しており、レアル安による輸出競争力の向上も見込まれている。新興市場では今後、価格の安いインド産やブラジル産との競争を強いられることになる。

(4)生体牛輸出
 〜インドネシア向けの減少により、2012/13年度は2割減〜

 生体牛輸出頭数は、2012/13年度が45万頭(前年度比22.3%減)、2013/14年度は前年同と予測している。これは、最大の市場であるインドネシア向けの減少によるものである。牛肉自給率向上政策の導入により、インドネシア向け輸出頭数は、2009年の77万3000頭をピークに減少傾向にある。なお、インドネシアの2013年の生体牛の輸入割当頭数は26万7000頭(前年比5.7%減)にまで縮小した。

 今後の生体輸出はインドネシアの政策動向や新市場の展開に左右されるとみられ、インドネシア以外の主要生体輸出市場であるフィリピンやマレーシア、ベトナムなどでは、インド産水牛肉や中南米産牛肉との競合が予想されるものの、全体的な輸出市場の拡大により2013/14年度から輸出頭数は徐々に増加し、2017/18年度は52万頭(2011/12年度比10.2%減)に達するとみている(図4)。
図4 生体牛輸出頭数の見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

(5)肉牛価格  〜今後も肉牛取引価格は下落傾向〜

 2012/13年度の家畜市場での肉牛取引価格(加重平均、枝肉重量ベース)はキログラム当たり305豪セント(前年度比7.3%安、305円)、2013/14年度には288豪セント(同5.6%安、288円)※を見込んでいる。価格下落の要因として、国内における肥育素牛需要の低下や牛肉生産量の増加、輸出市場における輸出単価の下落や豪ドル高による競争力の低下などを挙げている。

 中期的にも下落は継続する見通しであるが、と畜頭数と牛肉生産量の伸びは鈍化することから、価格の下げ幅は徐々に緩やかなものとなるが、2017/18年度には同255豪セント(2011/12年度比24.3%安、255円)まで低下するとみている。

*2012/13年度の為替ベースでの実質価格
図5 肉牛市場価格の見通し
資料:ABARES
注 1:枝肉重量ベース
注 2:2012/13年度以降は予測値
注 3:実質ベースは2013/14年度以降、2012/13年度の為替ベースで算出
注 4:平均価格は2002/03〜2011/12年度の平均

3.酪農産業の見通し

(1)乳製品の国際価格
 〜2013/14年度は堅調に推移するものの、中期的には軟化傾向〜

 豪州では生乳生産量の4割が輸出に仕向けられることから、生産量や乳価は、気象条件のほか乳製品の国際需給や国際価格に影響を受けやすい構造となっている。豪州の酪農産業を見通す上で、まず国際価格の見通しをみることとする。

 ABARESは、2013/14年度の乳製品の国際価格について、アジアや中東、北アフリカなど新興市場における需要拡大に対して、オセアニア地域やEUなど主要輸出国における供給が限定的とみられることから、堅調に推移するとみている。

 また、今後は、新興市場での経済成長に伴う所得の向上から、引き続き乳製品需要の高まりが見込まれる。一方で、供給サイドでは、主要輸出国における増産に加え、中国やブラジル、インドなどの新興酪農国でも、国内需要の高まりや生産技術の改善から生産は拡大するとしている。このことから、中期的に国際需給は緩和に向かい、乳製品価格は軟化するとみている。
図6 国際乳製品価格の見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

(2)乳用牛飼養頭数
 〜中期的に飼養頭数はほぼ横ばい〜

 乳用経産牛の飼養頭数は、2010年以降、天候の回復から増加傾向にある。2011/12年度には降雨に恵まれ、牧草の生育が良好なことやマレー・ダーリング川流域のかんがい貯水量の増加を受けて、主要生産地であるビクトリア(VIC)州やニューサウスウェールズ(NSW)州南部、タスマニア(TAS)州などで増頭し、2012年6月末時点は163万頭(前年同期比2.6%増)となった。しかし、短期的に飼養頭数の拡大は減速するとみられ、2013年が164万5000頭(同0.9%増)、2014年が164万9000頭(同0.2%増)とほぼ横ばいで推移するとみられる。

 中期的にも、乳製品の国際需給緩和から豪州国内の乳価の低下が見込まれるため伸び悩み、2018年は164万7000頭(2012年同期比1.0%増)とほぼ横ばいで推移すると予測している。


図7 乳用経産牛飼養頭数の見通し
資料:ABARES
注 1:各年6月末時点
注 2:2012年以降は予測値

(3)生乳生産
 〜1頭当たり乳量の伸びにより中期的には拡大傾向〜

 2012年後半以降、生乳生産の6割を占めるVIC州を中心に高温乾燥状態が継続し、牧草量の減少や暑熱のストレスにより、2012/13年度の1頭当たり乳量は5,775リットル(前年度比0.7%減)と減少が見込まれる。また、同年度の生乳生産量は前年並みの950万キロリットル(同0.2%増)と見込まれ、シーズン当初の増産見込みから下方修正された。

 2013/14年度は、VIC州やNSW州、TAS州における飼養頭数拡大から、962万キロリットル(同1.3%増)と増加の見込みである。中期的には、1頭当たり乳量の増加により生乳生産の拡大傾向は続き、2017/18年度には990万キロリットル(2011/12年度比4.4%増)に達するとみている。しかしながら、最近2年間において増産をけん引してきたマレー・ダーリング川流域では、今後、酪農業の収益性低下から、他の産業とかんがい用水の利用において競争が強まるとみられ、この地域における増産は限定的になるとの見方もあり、生乳生産の伸びは緩やかなものと考えられる(図8)。
図8 生乳生産量の見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

(4)乳価
 〜国際需給の緩和により下落基調〜

 2013/14年度の乳価は、1リットル当たり38.5豪セント(前年度比0.3%安、39円)※と、ほぼ横ばいとみている。中期的には、国際需給の緩和による乳製品国際価格の下落に伴って、豪州国内においても乳価は下落基調となると見込んでいる。この結果、2017/18年度には、同36豪セント(2011/12年度比16.5%安、36円)まで下がると予測している(図9)。

*2012/13年度の為替ベースによる実質価格

図9 乳価の見通し
資料:ABARES
注 1:2012/13年度以降は予測値
注 2:実質ベースは2013/14年度以降、2012/13年度の為替ベース
注 3:平均価格は2002/03〜2011/12年度の平均

(5)輸出見通し
 〜日本、東南アジア向けのチーズ輸出は伸張、中国における
   堅調な需要から全粉乳は一定水準を保つ見込み〜

 ABARESは、今後の輸入国における粉乳需要の拡大を見込み、特にアジアからの需要は、全粉乳と脱脂粉乳の堅調な国際価格を維持する一因になるとみている。全粉乳については、中国が世界の取引量の4分の1のシェアを占めているが、中国における乳製品需要は国内生産を上回るペースで伸びるとみられている。このため、これまで中国向け輸出量で最大のシェアを持っていたNZ産だけでなく、豪州産やEU産、米国産の輸出の増加も見込んでいる。また、中国に次ぐ粉乳輸入国であるアルジェリアについても、2013年の全粉乳の輸入を前年比5%増と見込むなど、北アフリカや中東地域における需要も底堅いものとみられる。

 豪州をみると、今後、チーズの輸出増が見込まれており、2012/13年度の輸出量は16万8000トン(前年度比4.4%増)、2017/18年度には17万4000トン(2011/12年度比8.1%増)に達する見通しである。輸出先としては、引き続き日本向けを最大と見込むほか、東南アジア向けなどの増加を見込んでいる。

 中国が力強い需要をみせる全粉乳は、2012/13年度が9万3000トン(前年度比8.8%減)、2017/18年度は9万6000トン(2011/12年度比5.9%減)と、2011/12年度からは減少が見込まれるも、一定水準を保つものとみている。

 バターおよび脱脂粉乳は、2012/13年度は増加するとみられるものの、その後は一貫して減少するとみている。バターの輸出量については2012/13年度が5万3000トン(前年度比8.2%増)、2017/18年度には3万8000トン(2011/12年度比22.4%減)とし、脱脂粉乳については2012/13年度が14万6000トン(前年度比3.6%増)、2017/18年度が13万トン(2011/12年度比7.8%減)と、いずれも減少すると予測している(図10)。
図10 乳製品輸出量の見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

主要酪農地帯をおそう高温乾燥気候

 豪州では夏季にあたる10月から3月頃にかけて、毎年、広い地域で酷暑にさらされる。特に、今年の夏は、生乳の3分の2を生産するVIC州でひどい高温乾燥気候となった。3月に訪れたVIC州沿岸部グレート・オーシャン・ロードの周辺は、主に天水に頼る酪農地帯である。訪問時には、夏の終りにもかかわらず30℃を超す高温と降雨のない日が2週間続いていた。牧草はすっかり干上がっていた。

 乳牛は生乳を生産するため、多くの牧草などを食べて体内で熱を生成する。このため、暑さの影響を受けやすく、25℃以上で体温調整が必要となる。夏バテにより減少する乳量は10〜25%、多い場合は40%となることもあるという。


上図:2012年10月から2013年3月にかけての降雨の状況
主要酪農地帯であるVIC州では、平年を大きく下回る状況となった。

上:グレート・オーシャン・ロード周辺の放牧地(2013年3月撮影)
牧草はすっかり干上がっている。
暑い中、水を飲む牛。

 豪州の酪農生産者団体は、夏バテ軽減策として、放牧地に木を植え日除けにする、搾乳時間をずらす、放牧地のローテーションを工夫して搾乳施設に近い放牧地を選択する―などを推奨している。実際、豪州の放牧地にはところどころ木が植えられ、牛が木陰に集まって休んでいるのを目にした。ただし、現地関係者によると、搾乳時間を変更するには、乳牛の身についた習慣を変えることが難しいため、困難とのことであった。

上:木陰に集まって休む牛たち。(2013年3月撮影)



上:3時前の暑いさなか、牛は搾乳施設に向かう。(2013年3月撮影)


 訪問したVIC州の酪農家によると、減少量は定かではないものの搾乳牛の乳量低下がみられているという。現在、穀物や乾牧草、サイレージを補助的に給与しているが、牧草量の減少する冬場に向い、乾牧草の購入はさらに必要である。しかしながら、乾牧草価格は2割近く高騰し、経営を圧迫している。

 豪州の2012/13年度の生乳生産量は当初、前年度から2%増と見込まれていたが、7月から翌2月の生乳生産量は前年同期から1.1%減と、高温乾燥気候により前年を下回る水準で推移している。今後の生乳生産に影響を与える気象の動向への関心が高まっている。

4.穀物生産の見通し

(1)生産
 〜国際価格は堅調に推移し、穀物の作付けは増加傾向〜

 2012/13年度(7月〜翌6月)の小麦および大麦生産(冬作物)は、最大の生産州である西オーストラリア(WA)州で播種期間中の降雨量が平年を下回り、また、8月以降にWA州や南東部を中心とする広範囲で高温乾燥気候が急速に拡大したことから、小麦生産量は2208万トン(前年度比26.2%減)、大麦生産量は706万トン(同15.4%減)といずれも大幅に減少した(図11、図12)。また、現在収穫が行われているソルガム(夏作物)は、播種前の堅調な価格から当初は前年度を上回る作付けが見込まれていたが、高温乾燥気候に阻まれて播種が進まず、生産量は171万トン(同23.2%減)の見込みとなった(図13)。
図11 小麦の生産見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値

図12 大麦の生産見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値
図13 ソルガムの生産見通し
資料:ABARES
  注:2012/13年度以降は予測値
 2013/14年度の小麦および大麦の国際価格の動向をみると、ロシアやウクライナ、EUなど主要輸出国からの供給増加に伴い下落が予想されるものの、依然高い水準を維持するとみている(図14)。また、豪州内では競合作物となるカノーラなど油糧種子と比べても堅調な価格を見込んでいる。
図14 国際穀物価格の見通し
資料:ABARES
注 1:小麦はUSガルフ・NO2.硬質レッド冬小麦FOB価格、
    トウモロコシはUSガルフ・コーンFOB価格、大麦
    は仏ルーアン・飼料用大麦FOB価格
注 2:年度は7月〜翌6月
注 3:2012/13年度以降は予測値
 これにより、豪州では小麦と大麦の作付面積の増加が見込まれ、小麦は1383万ヘクタール(同3.8%増)、大麦は398万ヘクタール(同2.8%増)と予測している。生産量については、作付けの増加に加え、WA州などで単収向上が見込まれることから、小麦が2490万トン(同12.8%増)、大麦が782万トン(同10.8%増)と、前年度から1割以上の増産を予測している。ソルガムについても、主産地であるQLD州南部やNSW州で気象条件の改善が見込まれることから、作付面積は62万ヘクタール(同7.8%増)、生産量は214万トン(同25.5%増)と、大幅な増産を見込んでいる。

 中期的な世界の穀物需要をみると、人口増や個人所得の増加に伴い、小麦消費の7割を占める食用については年間1%のペースでの伸びを見込んでいる。また、トウモロコシや大麦などの粗粒穀物については、食肉や乳製品需要の拡大により、飼料用向けの消費が年間2%のペースで伸びるとみている。供給サイドをみると、黒海地域や南米での穀物生産量の増加が見込まれることから、在庫量は緩やかに増加するとみている。これにより、国際価格は下落傾向で推移するものの、依然、高い水準を維持することが見込まれ、特に、粗粒穀物や油糧種子は小麦よりも堅調に推移するとみられる。

 豪州の中期的な生産見通しについては、各品目で作付面積の増加を見込み、2012/13年度以降は小麦は年間1%、大麦は同3%、ソルガムは同4%のペースで生産量の伸びを見込んでいる。2017/18年度には、小麦生産量を2560万トン(2011/12年度比14.4%減)、大麦を873万トン(同4.5%増)、ソルガムを247万トン(同10.9%増)と予測している。

(2)輸出
 〜2013/14年度は、小麦は増産見込みも輸出は減少〜

 2013/14年度(7月〜翌6月)の輸出量は、小麦を2076万トン(前年度比5.0%減)、大麦を540万トン(同8.6%増)、ソルガムを84万トン(同15.8%減)と予測している。

 主要穀物である小麦についてみると、2013/14年度生産量は増産の一方で、輸出量は減少が見込まれる。これは、前述のとおり、2012/13年度産が大幅な減産(前年度比26.2%減)となったにもかかわらず、国際価格の高騰を受け、在庫を取り崩して輸出に対応した反動が予測されるためである。なお、2012/13年度の小麦輸出量は2185万トン(同5.1%減)と見込まれている。中期的には1800万トン台で推移するとみられ、2017/18年度は1894万トン(2011/12年度比17.8%減)と予測している。

 輸出単価は、国際価格の下落に伴い、2017/18年度は2011/12年度比8.3%安の1トン当たり253.9豪ドル(2万5400円)と予測している(図15)。

*2012/13年度の為替ベースによる実質価格
図15 小麦および粗粒穀物の輸出見通し
資料:ABARES
注 1:2012/13年度以降は予測値
注 2:2013/14年度以降の輸出単価は2012/13年度の為替
    ベースにした実質ベースで算出

5.おわりに

 今回のアウトルックでは、牛肉、生乳および穀物生産のいずれにおいても、中期的に緩やかながらも拡大基調という見通しがなされた。一方で、国際需給の緩和に伴う農産物価格の低下や輸出額の減少、輸出新興国との競合の高まりなど、必ずしも明るいとはいえない見通しも同時に示された。

 こうした中、ラドウィッグ農相は開幕の挨拶で、力強い成長を続けるアジア市場での輸出機会を創出するための支柱として、2012年10月に政府が発表した「アジアの世紀における豪州白書」や、現在策定中の「国家食料計画」について述べ、需要拡大が見込まれるアジアへの食料輸出を拡大し、豪州がアジアの食品庫になるという展望を明確に示した。また、この計画を実現させるため、生産性や競争力の向上、市場アクセスの改善、気候変動への対応や、研究開発の取組の加速、外資による農業投資の促進などの必要性を説いた。

 豪州はこれまでアジアを主要市場と位置付け、農業輸出国としての確固たる地位を築いてきた。今後、そのアジア市場では、農産品輸出においてインドや南米、黒海沿岸地域などの新興国と競争を強いられ、これに加えて、豪ドル高による競争力の低下も引き続き懸念材料となっている。

 このような状況の中、これからの豪州の農畜産業が今後の課題にどう対処し、世界の市場でどのような展開を見せるのか注目されるところである。

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