需給動向 海外

◆豪 州◆

2013年8月の牛肉輸出、前月に続き好調を維持


8月以降生体価格は弱含みで推移

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2013年8月以降下落基調で推移し、9月12日時点ではキログラム当たり303.25豪セント(273円:1豪ドル=90円)となった(図6)。

 肉牛の主産地であるクイーンズランド(QLD)州の内陸部では、現在も干ばつにより、家畜に与える牧草や水が十分に確保できない状況となっており、肉牛生産者は子牛の出荷を増やしているものの、肥育もと牛への引き合いも弱まっており、これが生体価格の下落につながったとみられる。

 一方、8月の1週当たり平均と畜頭数は、14万8116頭(前年同月比17.1%増、前月比0.7%減)と前月までよりは減少したものの、引き続き高水準で推移している(図7)。
図6 EYCI価格の推移
資料:MLA
注 1:枝肉重量ベース
注 2:EYCI価格は東部3州(QLD州、NSW州、Vic州)の主要家畜
    市場における若齢牛の加重平均取引価格。家畜市場の指標価格
    となっており、肥育牛や経産牛の家畜市場価格などとも9割近い
    相関関係にある。
図7 と畜頭数の推移
資料:MLA
  注:QLD州、ニューサウスウェールズ(NSW)州、ビクトリア(Vic)州、
    南オーストラリア(SA)州、タスマニア(Tas)州の5州の成牛のと畜
    頭数の合計

8月の輸出量は前年同月比2割増

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2013年8月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は、9万8401トン(前年同月比21.1%増)となり、単月輸出量では今年7月、5月に次ぐ高水準となった(図8)。8月のと畜頭数は前月と比べ減少したものの、前年同月比では依然高水準にあることや、米ドルに対する豪ドルの為替相場が、前年同月比13.1パーセント安と下落し、価格競争力が高まったことなどが、輸出増につながった。
図8 牛肉輸出量と増減率の推移
資料:DAFF
 輸出先別でみると、日本向けが2万4761トン(同13.0%減)とかなり大きく減少したものの、米国向けが1万8047トン(同7.6%増)、中国向けが1万6192トン(同10.3倍)、韓国向けが1万2563トン(同12.8%増)など、主要な輸出先はおおむね増加した(表1)。日本向けは、米国産牛肉に対する月齢制限の緩和以降、米国産の輸入が増加していることから、豪州産は減少傾向にある。一方、韓国向けは、米国産の輸出が日本向けなどに集中している影響を受け、秋夕(チュソク;旧正月と並ぶ祝祭日)の需要期を控える中、豪州産による手当てを進めているとみられる。米国向けについては、加工用で競合するNZ産の米国向け輸出量の減少が、豪州産の輸出増につながった。また、中国向けは、食肉消費が拡大する中、中国国内の牛飼養頭数の減少や食肉価格の上昇が報告されており、前月に引き続き、過去最高を更新した。
表1 2013年8月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:CISはロシア他

2012/13年度の内臓肉など輸出量は3パーセント増

 MLAによると、2012/13年度(7月〜翌6月)の内臓肉など輸出量は、13万5102トン(前年同期比3%増)となった。2013年以降のと畜頭数の増加が、輸出量の増加につながっており、2013年1〜6月におけると畜頭数が前年同期比12.9パーセント増とかなり大きく増加したことに伴い、同期の内臓肉輸出量も同7.8パーセント増となった。

 輸出先別では、首位の日本向けが2万4865トン(同5%増)、次いで、韓国向けが2万3658トン(同3%増)、香港向けが2万1549トン(同11%増)となった(図9)。
図9 輸出先別内臓肉輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
 また、日本向け輸出量の内訳は、タンが8,301トン(前年度比3%増)、横隔膜(ハラミ・サガリ)が7,885トン(同15%増)、トライプ(反すう胃)が3,044トン(同32%増)となった(図10、図11、図12)。

 香港向けは、2013年1〜6月が前年同期比24.6パーセント増と、2013年以降、急増している。その一方で、豪州産内臓肉の最大の市場である日本向けについては、米国産との競合の激化などから、今後厳しい状況になるとみられている。
図10 タンの輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図11 横隔膜の輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図12 トライプの輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
                                      (調査情報部 伊藤 久美)


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