平成25年7月の牛のと畜頭数は、10万4661頭(前年同月比0.8%増)と前年同月をわずかに上回った。品種別に見ると、和牛は4万8457頭(同1.1%減)、乳用種が3万4404頭(同2.5%増)、交雑種が2万50頭(同3.9%増)で、各品種の25年1〜7月の累計は、和牛が29万5715頭(前年同期比0.3%増)、乳用種が22万7514頭(同3.5%減)、交雑種が13万445頭(同2.2%増)となっている(図1、2、3)。
図1 和牛のと畜頭数 |
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資料:農林水産省「食肉流通統計」 |
図2 乳用種のと畜頭数 |
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資料:農林水産省「食肉流通統計」 |
図3 交雑種のと畜頭数 |
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資料:農林水産省「食肉流通統計」 |
和牛去勢は口蹄疫の影響により減少傾向
各品種のと畜頭数を性別で見ると、和牛去勢は2万4217頭(前年同月比4.9%減)と、6カ月連続で前年を下回っている。これは、宮崎県で22年4月に発生した口蹄疫の感染拡大防止策として、同年4〜7月の間、牛の殺処分および人工授精業務の自粛(繁殖自粛)が行われた影響が表れているためである。口蹄疫発生翌年の2、3月の同県における和牛おすの出生頭数は、上述の繁殖自粛により計1,488頭と著しく減少した(前年同期比78.9%減、家畜改良センター「全国及び都道府県別の出生年月別・牛の種別・性別の出生頭数」)。口蹄疫発生以前の、同県の和牛出生頭数は全国の1割強を占めていたことから、その影響は大きい。和牛の平均的なと畜月齢は29カ月前後であることから、同期間に生まれた子牛の多くは本年6、7月頃に出荷されているとみられ、生産量減少の主因と推測される。
和牛めすは早期出荷によりと畜頭数が増加
和牛めすについても、同様の理由により、本年6、7月頃のと畜頭数は大きく減少すると予想された。しかし実際には、23年10月以降、ほとんどの月で前年を上回って推移しており、25年7月も2万4215頭(前年同月比3.1%増)と、前年と比較してやや増加した。この要因の1つとしては、23年8月に倒産した大規模経営者が保有していた繁殖用めす牛が、他の生産者に買い取られた後、通常よりも短期間で出荷されていることが考えられる。
なお、こうした動きにより、全国の繁殖用めす牛が減少する可能性が考えられ、今後の和牛出生頭数にどのような影響があるか、注視が必要である。
乳用種去勢は減少、交雑種は増加
乳用種去勢は昨秋以降、前年と比較して減少傾向で推移しており、7月は1万9086頭(前年同月比2.8%減)となった。一方、交雑種については、去勢牛、めす牛ともに直近1年間程度の月別実績がおおむね前年を上回っており、7月の実績はそれぞれ1万384頭(同3.7%増)、9,660頭(同4.1%増)であった。乳用種去勢および交雑種の平均と畜月齢はそれぞれ20カ月前後と26カ月前後であるが、本年1〜7月頃を起点としてその期間をさかのぼった22年度後半から23年度にかけては、生乳需給が緩和し、減産型の計画生産が実施されたため、酪農経営において交雑種の生産が進んだ。また、22年度の交雑種の子牛平均取引価格が、1頭当たり24〜28万円程度(農畜産業振興機構調べ)と前年度を約2割上回る水準であったことも、交雑種の生産を促した要因の一つと考えられる。こうした状況が、現在の乳用種去勢の減少と交雑種の増加につながっている。
卸売価格は引き続き堅調
こうした生産動向や、景況感の上昇傾向、輸入動向などから、昨年後半以降、国産枝肉卸売価格は各品種とも前年を上回って推移している。25年8月の東京市場における卸売価格(速報値)も、和牛去勢A−4がキログラム当たり1,863円、乳用種去勢B−2が同779円、交雑種去勢B−3が同1,254円となっており、いずれも前年同月を1〜3割程度上回っている。特に、図2の通り、乳用種去勢は生産量の減少が大きい上、競合関係にある輸入品の仲間相場が、為替相場の円安傾向や現地相場高などにより高止まりの状態にあることから、引き合いが強く、それが価格に反映されているとみられる。
図4 牛枝肉卸売価格(東京市場)の推移
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資料:農林水産省「食肉流通統計」「食肉卸売市場調査(日別)」
注 1:23年7月の乳去勢B−3については取引実績がない。
注 2:25年8月は速報値
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(畜産需給部 田中 あや)
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