需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産は減少傾向が続く一方、国際相場は堅調に推移


2013年7月の生乳生産量、前年同月比3.5パーセント減少

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2013/14年度(7月〜翌6月)の開始月となる、2013年7月の生乳生産量は、63万7500キロリットル(前年同月比3.5%減)と、8カ月連続で前年同月を下回った(図22)。このうち、豪州の生乳生産量の3分の2を占め、輸出向け乳製品の生産が多いビクトリア(VIC)州の生乳生産を見ると、かんがい用水が確保されている北部は前年同月を3.6パーセント上回ったものの、天水に依存している西部は同8.6パーセント減、東部は同2.0パーセント減と、それぞれ前年同月を下回った。

 VIC州一次産業省は、2012/13年度の乾燥した気象条件が生乳生産に及ぼした影響は、非常に深刻なものであったとしている。2013年7月のVIC州の降雨量は、東部の一部地域を除き、おおむね平年並みかそれ以上であったものの、牧草の生育悪化など、依然として前年度の乾燥性気候の影響が表れているものとみられる。
図22 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月

2013年7月の乳製品輸出量、いずれも大幅な減少

 一方、2013年7月の主な乳製品の輸出量は、生産量の減少などを背景に、比較的高水準であった前年同月を大幅に下回った。品目別では脱脂粉乳が4,979トン(同54.7%減)、全粉乳は4,357トン(同32.6%減)、バターは1,846トン(同43.8%減)、チーズは9,116トン(同21.6%減)となった(図23)。粉乳類(脱脂粉乳・全粉乳)は、ニュージーランド(NZ)や米国など他の主要輸出国との競合から、東南アジア向けの減少が大きく、バター・チーズについては、東南アジア向けは増加する一方で、日本向けが減少した影響が大きく表れている。
図23 主な乳製品の輸出量の推移(7月)
資料:DA
 一方、輸出単価を見ると、ホエイ製品を除きいずれも前年同月を上回っている。生乳生産量の減少により、輸出量は減少しているが、輸出市場の需要そのものは、引き続き堅調であることから、輸出単価は上昇基調にあると推察される(図24)。
図24 主な乳製品の輸出単価の推移(7月)
資料:DA
 また、最近の傾向として、中国への全粉乳の輸出量は、絶対量は少ないながら増加傾向にある(図25)。2013年2月には、中国の全粉乳輸入量の98パーセントのシェアを誇っていたNZ産のシェアが減少し、NZに次ぐ輸入元である豪州産のシェアが、同月以降5カ月連続で増加している。現地報道によると、NZは昨年、干ばつにより生乳生産が減少したことから、中国は供給元の多様化を模索しているとしている。しかしながら、2013年7月時点でも、NZ産は依然として中国での輸入シェアの80パーセント以上を保っており、豪州産全粉乳が中国市場での存在感を高められるか、長期的な推移に注目したい。
図25 最近の中国における全粉乳の国別輸入量・シェアの推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:( )はシェア

国際相場の高止まりを受け、乳業各社は輸出市場拡大へ積極的な動き

 2013年9月3日に開催された、国際相場の指標の一つとされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均価格は、トン当たり4,420米ドル(43万7580円:1米ドル=99円、前年同期比37.7%高、前回比0.1%安)、全粉乳は同5,058米ドル(50万742円、前年同期比69.8%高、前回比1.3%安)と、ともに前回比ではわずかに下落したものの、前年同期を大幅に上回る堅調な相場を維持している(図26)。
図26 GDTにおける脱脂粉乳および全粉乳価格の推移
資料:GDT
  注:落札額の加重平均価格
 こうした粉乳相場の高止まりを受けて、乳業各社は、2013/14年度の酪農家への支払乳価を、前年同期に比べ1豪ドル(90円)以上高い乳固形分1キログラム当たり5.6豪ドル(504円)程度の水準に設定し、生乳確保へ積極的な動きを見せている。また、輸出市場向けに、粉乳類やUHT牛乳を製造する工場の改修、拡張の動きも広まっており、今後、堅調な需要に応えられるかどうか、生乳生産の回復動向が注目される。

                                       (調査情報部 根本 悠)


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