需給動向 海外

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生乳生産回復基調にあるも、需給ひっ迫は継続


乳価は引き続き堅調

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の7月の平均生乳価格は、100キログラム当たり37.82ユーロ(4,992円:1ユーロ=132円)となり、前年同月比16.3パーセント高となった。依然としてEUでは、生乳生産の減少により引き続き乳価が高水準で推移している(図17)。
図17 EUの生乳価格の推移

資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値
 6月の生乳出荷量は、前年同月比0.5パーセント減の1億230万トンとなり、天候不順による減産傾向からほぼ前年並みまで回復した(図18)。ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)では、オーストリアなど一部加盟国で高温や乾燥による生乳生産の減少がみられたものの、春先の低温から一転して例年より気温が上がり、おおむね天候は良好であったことから、欧州全体では生乳生産は順調に回復と分析している。
図18 EU(28カ国)の生乳出荷量
資料:ZMB
  注:2013年は暫定数値

 2013年1月から6月までの生乳出荷量を加盟国別に見ると、最も生乳出荷量が減少したのはフランスで、前年より41万4000トン減、次いで英国、ポーランド、アイルランドとなっている。一方、ギリシャ、ドイツ、オランダでは増産となり、天候不順の影響を強く受けた国とそれほど影響を受けなかった国の間に大きな違いが出た結果となった(図19)。特にオランダは、前年同期比10万3000トンの増加となり、EU全体の生乳生産の減少により乳価が高水準で推移していることから、オランダの生産者は大きな利益を得たとの見方も出ている。

 ZMBでは、今後の生乳生産の予測について、天候が最も重要な要因であると分析している。また、7月に入りフランスおよび英国の生乳生産に回復がみられること、欧州の飼料穀物生産量が前年より増加との予測が発表されたことから、下半期は回復基調で進み、前年と同レベルの生乳生産を予測している。
図19 加盟国別生乳出荷量の増減(1〜6月)

資料:ZMB

バター民間在庫量、前年対比33パーセント減の約9万トン

 EUのバター民間在庫は、供給が需要を上回る3月から8月にかけて、バターを市場から隔離し、需要期である秋以降に市場に放出することで安定的な流通を図ることを目的としている。在庫の保管を行う者に対し補助金が交付される仕組みとなっており、民間在庫量の動向は、EUのバター需給の指標となっている。

 2013年のバター民間在庫量は、8万9391トンと前年の13万3306トンに比べて大幅に減少し、過去5カ年の中で2010年に次いで少ない水準となった(図20)。在庫量が最も多かったのは、オランダで2万7841トン、次いでドイツが1万5953トン、フランスが1万5145トンであった。また、いずれの国も前年の在庫量を下回った。なお当該在庫は、例年、需要が増加する冬季に向け、放出される。
図20 EUのバター民間在庫量
資料:欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)
 EUのバター需給の動向をみると、2013年1月から5月までのバター生産量は、前年同期比0.5パーセント減の87万9500トンとなった(表5)。特に生乳生産が大幅に減少したフランスやアイルランドでは、バター生産が大幅に落ち込んだ。これは、限られた生乳出荷量のなかで、需要が高い飲用乳や付加価値製品であるクリームの生産が優先されたとみられる。5月に入り、生乳生産に回復の兆しがみられたことからバター生産は回復、5月単月の生産量は、前年同月比8.5パーセント増の19万6900トンとなった。

 バター価格は、需給ひっ迫を背景に高値で推移しており、7月のバター価格は同55パーセント高の100キログラム当たり418ユーロ(5万5176円)となった。  ZMBによると、今後も需給ひっ迫感の継続により、バター価格は最需要期である12月のクリスマスシーズンまで高水準で推移すると予測している(図21)。
図21 バター卸売価格の推移
資料:ZMB オランダバター価格
表5 EU(28カ国)のバター生産量
資料:ZMB
  注:前年同期比は、2012年における閏年の補正を行っている。

                                    (調査情報部 矢野 麻未子)


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