需給動向 国内

◆豚 肉◆

今夏の卸売価格は2カ月連続の上昇、例年と異なる動き


7・8月の上昇は、輸入品の相場高、物量不足に起因

 今夏の豚枝肉卸売価格(省令価格)は堅調に推移している。例年、6月に最高値を付け、その後は生産量の増加に伴い低下するが、本年においては、6月に下落し、その後7・8月と2カ月連続で上昇するという、例年とは異なる動きとなった(図5)。

 豚枝肉卸売価格は、景気回復の期待感に伴う家計消費の増加、焼肉店をはじめとした外食産業の需要などを受け比較的高値で推移していた。5月には、お中元用加工製品向けの需要期でありながら、原料となる冷凍品輸入量が減少していたため、代替需要が増加し、キログラム当たり517円(前月比50円高、前年同月比60円高)の高水準となった。

 しかし、6月は相場が上昇する時期であり、かつ、生産量が例年よりも少なかったにもかかわらず下落に転じた(同491円)。これは、5月の高値の反動、競合する輸入冷蔵品の5月の輸入量が2万6000トン超と高水準だったことなどによる。

 7月は、生産量は多かったが、6月の冷蔵品輸入量が例年並みの水準であったことに加え、加工用部位の代替需要に伴う冷蔵品の輸入仲間相場の高騰もあり、同524円と、例年とは逆に上昇へ転じることとなった。

 8月に入っても、為替相場の円安傾向、現地相場高により7月の輸入量が少なかったため輸入仲間相場が高めで推移し、さらに、猛暑に伴う出荷頭数減、枝肉重量減などにより、同529円へとさらに上昇した。
図5 豚枝肉卸売価格、豚肉生産量の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」、「食肉鶏卵速報」
  注:豚枝肉卸売価格は、東京・大阪市場の省令規格加重平均値。平成25年8月は速報値。

豚肉輸入量、冷蔵品は増加、冷凍品は減少傾向が継続

 7月の豚肉輸入量は、全体では6万2324トン(前年同月比5.0%減)となった。内訳を見ると、冷蔵品が2万5854トン(同24.0%増)と大幅に増加したものの、冷凍品が3万6467トン(同18.5%減)と大幅に減少した(財務省「貿易統計」)。

 既報(「畜産の情報9月号」)のとおり、豚肉輸入量は、過去数年間、冷蔵品が2万トン程度、冷凍品が4万5000トン程度、合計で6万5000トン程度の水準であるが、平成24年秋以降、冷蔵品は同水準を上回り、冷凍品は下回る傾向で推移している(表1)。

 冷蔵品の増加は、冷凍品の輸入量減少に伴う加工用部位(うで、もも)の代替需要が主要因である。一方、輸入量は増加したものの、為替相場の円安傾向および現地相場高により、部位を組み合わせたコンビネーション輸入におけるロースなど高級部位比率が減少しているとされており、このことが、競合する国産相場の「上げ要因」となっていると考えられる。

 輸入冷凍品は、輸入申告に係る審査・検査の充実化、為替相場の円安傾向、現地相場高などにより減少し、4万トンを下回る水準へと減少している。冷凍品輸入量が減少すれば、加工原料用代替品としての国産豚肉需要が増加するため、こちらも国産相場の「上げ要因」になっていると思われる。
表1 豚肉輸入量の推移

資料:財務省「貿易統計」
  注:部分肉換算

出荷頭数の増加が予測される中、秋期の価格動向に注目

 農林水産省「肉豚生産出荷予測」によると、平成25年9月以降の出荷頭数の対前年同月・同期比は、9月が106パーセント、10月が103パーセント、11月が101パーセント、下半期計では103パーセントと、秋期以降の増産傾向が予測されている。これは、配合飼料価格が上昇する中、経営コスト削減を目的に、大規模生産者がスケールメリットを求めて規模を拡大していることが主要因と思われる。

 この増産予測を受け、秋期の相場下落が懸念されるものの、前述のとおり輸入量が減少傾向で推移していることに加え、外食、家計消費など一定の需要増加が期待されるため、相場はある程度下支えされるのではとの見方もある。

                                      (畜産需給部 藤原 琢也)


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