需給動向 海外

◆豪 州◆

2013年7月の牛肉輸出量は過去最高の10万トン超を記録


◇絵でみる需給動向◇


2012/13年度の牛肉生産量は過去最高

 豪州統計局(ABS)によると、2012/13年度(7月〜翌6月)のと畜頭数(子牛を含まない。)が781万1100頭(前年度比8.5%増)と増加した結果、牛肉生産量(子牛肉は含まない。枝肉重量ベース)は過去最高となる220万6100トン(同6.4%増)を記録した(図4)。と畜頭数は、東部広域を襲った干ばつで早期とう汰が進んだことから、2012年10月以降、前年を上回る水準で推移した。特に2013年1月以降は、肉牛生産の5割を占めるクイーンズランド(QLD)州の干ばつの悪化によると畜の増加が目立っている。
図4 肉牛と畜頭数と牛肉生産量の推移
資料:ABS
注 1:子牛、子牛肉を含まない
注 2:生産量は枝肉重量ベース
 牛肉生産量が過去最高を記録した一方で、平均枝肉重量は、前年度から1.9パーセント減の282.4キログラムとなった。これは、雌のと畜頭数の増加(約350万頭、前年度比15%増)や、肥育途中の牛が多く出荷されたことによる。

7月の日本向け輸出量は6カ月ぶりに前年同月を上回る

 牛肉生産量の増加や新興市場からの牛肉需要に支えられ、2013年に入り、牛肉輸出は好調に推移している。豪州農漁林業省(DAFF)によると、2013年7月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は、10万6184トン(前年同月比28.7%増)と、今年5月に更新した最高記録を再び塗り替えた(表1)。米ドルに対して豪ドル高で推移していた為替相場が、5月頃から下落し、7月平均は1豪ドル=0.90米ドルと、約3年ぶりの安値となったことが、豪州産牛肉の輸出競争力を高めたとみられている。

 輸出先別では、中国向け1万5065トン(同14.1倍)や中東向け6,915トン(同3.1倍)が過去最高を記録したほか、2012年以降、おおむね前年割れで推移していた日本向けも、3万1703トン(同2.2%増)と6カ月ぶりに前年同月を上回った。

 日本向けの内訳をみると、冷蔵グレインフェッドが、米国産との競合から6,272トン(前年同月比19.5%減)と、大幅に減少した。一方、主に外食産業向け加工用需要が高い冷凍グラスフェッドは、1万6422トン(同11.7%増)と6カ月ぶりに前年同月を上回った(表2)。
表1 2013年7月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:中東はサウジアラビア他、CISはロシア他
表2 日本向け輸出量の内訳
資料:MLA
  注:船積重量ベース

2013年日本向け輸出は、2003年に次ぐ低水準の見込み

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は7月29日、2013年の牛肉産業見通しの期中改訂版を公表した。今回の予測では、2013年前半のQLD州など北部での降雨不足の影響を考慮し、と畜頭数が772万5000頭(前年比5.1%増)と1月予測から上方修正された(表3)。一方、牛肉生産量は、平均枝肉重量の下方修正により、214万8000トン(同1.7%増)にとどまるものの、2012年を上回る見込みとなっている。

 2013年の牛肉輸出量は、米ドルに対して豪ドルの価値が下落傾向にあることや、中国および中東向けの市場拡大により、2012年に続いて過去最高を更新するとみており、100万トン(同3.8%増)に達すると予測している。一方、日本向けは、牛肉消費の低迷や米国産の輸入増、また、不安定な為替相場により、豪州産にとって厳しい輸出環境が続くとしており、29万トン(同6.0%減)に減少するとみている。これは、2000年代に入って以降、米国でのBSE発生以前の2003年に次ぐ低水準となる。
表3 牛肉産業の見通し
資料:MLA
  注:牛と畜頭数および牛肉生産量は、子牛および子牛肉を含まない
                                      (調査情報部 伊藤 久美)


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