2013年の生乳生産量は、前年比6.3パーセント増の3465万トン
米国農務省(USDA)によると、中国の2013年の生乳生産量は、前年比6.3パーセント増の3465万トンと見込まれている(表9)。USDAは、生産量増加の主な要因として、搾乳牛頭数の堅調な増加に加え、乳牛の改良や、輸入アルファルファなどの良質な飼料の給与による1頭当たり乳量の増加を挙げている。
中国中央政府は、2012年から乳牛の改良を進めるために、優良な種雄牛の凍結精液の購入を補助している。さらに、乳牛の検定も推進しており、検定を実施した農家に、奨励金を交付している。
また、優良な繁殖雌牛(生体牛)の輸入も、オセアニアを中心に増加傾向にある。2012年の豪州からの生体牛輸入量は、1万6000トン(前年比10.1%増、5万5000頭程度)、NZからは1万トン(同30.1%増、3万5000頭程度)となった。
飼料については、アルファルファの輸入量が年々増加しており、2012年は、前年比59.7パーセント増の46万トンと大幅に増加した。中でも米国は最大の輸入先国であり、輸入量全体の96パーセントを占めている(図22)。なお、中国では、輸入アルファルファは一般的な粗飼料より高価なため、1,000頭以上の大規模酪農経営が主に購入している。
また、USDAは、2013年の牛乳・乳製品の消費量について、前年比6.4パーセント増の3622万トン(生乳換算)と見込んでいる。これは、低温殺菌牛乳やUHT牛乳、はっ酵乳、乳飲料など飲用向けの需要の増加によるものとしている。
表9 生乳需給表 |
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資料:USDA「GAIN Report」 2013年6月公表
注:2012年は推定値、2013年は予測値 |
図22 アルファルファの国別輸入量 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード121490 |
全粉乳の輸入は増加傾向、脱脂粉乳の輸入は鈍化
2013年1〜6月の全粉乳の輸入量は、前年同期比46.3パーセント増の30万6483トンと大幅に増加した(図23)。内訳は、NZが29万6175トン(同47.0%増)と、輸入量全体の97パーセントを占める。一方、脱脂粉乳の輸入量は、同20.5パーセント減の8万2570トンとなった。内訳は、NZが6万2378トン(同5.9%減、シェア74%)となったほか、それ以外の輸入先国も、軒並み対前年同期比で減少している。中国では、脱脂粉乳は全粉乳の代替として利用される。このため、脱脂粉乳が全粉乳より安価の場合、輸入量は増加傾向となる。しかし、2012年末以降、輸入脱脂粉乳は、国際相場が上昇したことで価格優位性を失ったため、輸入量の伸びは鈍化している。
図23 脱脂粉乳および全粉乳の輸入量 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード040210、040221、040229 |
一方、ホエイの2013年1〜6月の輸入量は、前年同期比8.9パーセント増の19万7933トンとなった(表10)。内訳は、米国が9万5115トン(同24.2パーセント増、シェア48%)となった。
このような中、中国国家品質監督検査検疫総局は8月4日、NZの乳業最大手フォンテラ社のホエイ製品からボツリヌス菌が検出され、汚染の疑いのある製品を輸入した中国企業4社とその輸入量を公表した。国内では、同製品を原材料に使った商品の特定が進められ、回収に着手している。中国では、2008年、国内でメラミンの混入した粉ミルクが製造された事件が発覚し、社会問題化した。このため、今回の汚染は中国国内で大きく取り上げられている。
これを受けて中国政府は、フォンテラ社製のホエイパウダーなどを使用した製品のNZおよび豪州からの輸入を、一時的に停止した。しかしながら、中国のNZ産乳製品の輸入依存度は高く、問題が長期化すれば国際市場に与える影響も大きくなるとみられている。
表10 ホエイの国別輸入量 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード04010 |
(調査情報部 木下 瞬)
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