需給動向 海外

◆豪州◆

2012/13年度の生乳生産、酪農経営所得ともに減少


◇絵でみる需給動向◇


2012/13年度の生乳生産量は、前年度比2.7パーセント減

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2012/13年度(7月〜翌6月)の生乳生産量は、前年度比2.7パーセント減の859万3600キロリットルとなった(図16)。年度前半は前年並みの生産水準で推移したが、夏期の高温乾燥気候に伴い生乳生産が減少したことで、年度全体では3年ぶりに前年度実績を下回った。豪州の生乳生産量の3分の2を占めるビクトリア(VIC)州を見ると、かんがい用水が確保されている北部の生乳生産は前年度比3.4パーセントの増加となったが、かんがい用水が確保されていない西部、東部はそれぞれ同3.8パーセント減、同7.8パーセント減と、前年度を下回っている。これらは、豪州の酪農における水資源確保の重要性を示す結果となっている。
図16 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月

2012/13年度のバター、脱脂粉乳などの輸出は増加

 一方、2012/13年度の主な乳製品の輸出量は、バターが3万9910トン(前年度比17.3%増)、脱脂粉乳は14万7244トン(同4.2%増)、全粉乳は10万3372トン(同11.0%減)、チーズは17万4687トン(同8.6%増)となった(図17)。生乳生産量が減少する中、アジア各国や中東諸国からの需要を背景に、乳製品の輸出はおおむね前年度実績を上回った。なお、全粉乳は、主要輸出先である中国市場において、ニュージーランドからの輸入が増加していることを背景に前年度実績を下回っている。また、東南アジア向けが中心となる飲用乳の輸出量は、10万6840トン(同16.5%増)と、6年連続で前年度実績を上回っている。
図17 主な乳製品の輸出量の推移
資料:DA

粉乳類の国際相場、高止まりが続く

 2013年8月6日に開催された、国際相場の指標の一つとされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均落札価格は、トン当たり4,451米ドル(前年同期比58.7%高、44万649円:1米ドル=99円)、全粉乳は同5,021米ドル(同87.7%高、49万7079円)と、ともに前年同期を大幅に上回った。これら粉乳価格は、中国をはじめとしたアジア各国での育児用粉ミルク需要の増加などを背景に、高止まりが続いている(図18)。
図18 GDTにおける脱脂粉乳および全粉乳価格の推移
資料:GDT
  注:落札額の加重平均価格

2012/13年度の酪農経営所得は、前年度比39.2パーセント減少

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2013年7月、2012/13年度の酪農経営の財務状況に関する調査結果を公表した。これによると、2012/13年度の酪農経営の粗収益は、乳価低迷に伴う減少により、1経営体当たり57万5000豪ドル(前年度比8.8%減、5233万円:1豪ドル=91円)となった。一方、経営費は、機器の修繕費や支払利子などは減少したものの、飼料費がかなり大きく増加したことから、同48万8000豪ドル(同0.2%増、4441万円)と、わずかながら前年を上回った。飼料費については、夏場の高温乾燥気候による牧草の生育悪化から、飼料の購入量が増加したためとみられる。この結果、2012/13年度の経営所得(粗収益―経営費)は、同8万7000豪ドル(同39.2%減、792万円)と、前年度の14万3000豪ドル(1301万円)に比べ大幅な減少となった。

 2013/14年度については、前年に比べ高い初期乳価や、VIC州の放牧環境が良好なことから、経営収支の改善が期待されている。

                                       (調査情報部 根本 悠)


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