乳価は堅調に推移、天候不良による生産減から回復
オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の2013年6月の平均生乳価格は、100キログラム当たり36.16ユーロ(4,773円:1ユーロ=132円)となり、前年同月比12.7パーセント高となった。EUでは、生乳生産の減少により引き続き乳価が高水準で推移しており、近年で最も乳価が上昇した2011年よりも更に高水準にある(図11)。
図11 EUの生乳価格の推移
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資料:LTO
注:域内主要乳業17社の平均値 |
2013年の5月までの生乳出荷量をみると、月平均1.4パーセント減で推移している(図12)。特に減少幅が大きかったのは4月で、前年同月比3.3パーセント減となった。加盟国別の生産状況をみると、1月から5月までの減少幅が大きかったのは、英国で5.1パーセント減、アイルランドで3.7パーセント減、フランスで2.7パーセント減となっており、春先の天候不良に加えて、昨年秋の多雨および低温による影響があった加盟国での減少幅が大きくなっている。5月に入り天候が回復してきたことから、EU全体の生乳出荷量は増加傾向にあり、5月の生乳生産量は、同0.2パーセント減と昨年並みの水準となった。今後の生乳生産動向についてドイツ乳製品市場化価格情報センター(ZMB)は、EU全体の生乳生産が順調なことから、6月は前年並みと予測しているが、EUで最も生乳生産が多いドイツで、多雨による飼料作物への被害が出ており、今後の生乳生産に影響がでる可能性を挙げている。
また、2013年7月1日にEUへ加盟したクロアチアについては、生乳出荷量が年間約60万トンであり、約半分が飲用乳に利用されているため、加盟に伴うEU市場への影響はほとんどないと、分析している。
図12 EUの生乳出荷量 |
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資料:ZMB
注:2013年は暫定数値 |
乳製品価格、高水準で推移
生乳出荷量の減少は、乳製品の生産にも影響を及ぼしている。2013年1〜4月までのEUの製品別の生産動向をみると、需要が高い飲用乳、より付加価値が高いクリームおよびヨーグルトなど生鮮乳製品は、前年とほぼ同レベルの生産が維持されている。一方、付加価値が低く、かつ、域外輸出の割合が高い粉乳は、全粉乳で前年同期比8.8パーセント減、脱脂粉乳で同11.9パーセント減と大幅な生産減がみられた(表7)。また、生産減に合わせて輸出量も減少している(図13)。粉乳の国際価格が高騰するなかで、EU産の価格競争力は高まっていたが、2013年1〜4月までのEUからの脱脂粉乳の輸出量は、生産減に伴い前年同期比34.7パーセント減と大幅に減少した。
表7 EU27の乳製品生産量
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資料:ZMB
注:前年同期比は、2012年閏年の修正を行っている。 |
EU域内の乳製品価格は、乳製品生産の減少に加え、飼料価格の高騰など生産コストが上昇していることから高水準で推移しており、2013年6月のバター価格は、前年同月比57.3パーセント高の100キログラムあたり409ユーロ(5万3988円)となった(図14)。同様の理由により、脱脂粉乳価格も同46.8パーセント高の1トンあたり3,095ユーロ(40万8540円)と高値を維持している(図15)。
図13 脱脂粉乳輸出量
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資料:ZMB |
図14 バター卸売価格の推移
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資料:ZMB オランダバター価格 |
図15 脱脂粉乳価格の推移
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資料:ZMB オランダ脱脂粉乳価格 |
(調査情報部 矢野 麻未子)
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