畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 2013/14年度牛肉輸出量、2年連続で過去最高を更新− 2014年8月
需給動向 海外

◆豪 州◆

2013/14年度牛肉輸出量、2年連続で過去最高を更新


肉牛価格は上昇するも、と畜頭数は依然高水準

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2014年6月の東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、1キログラム当たり334豪セント(前年同月比7.4%高、327円:1豪ドル=98円)と上昇した(図5)。EYCI価格は、3月以降、平年以上の降雨を得ているビクトリア(VIC)州やニューサウスウェールズ(NSW)州南部での肥育もと牛需要の増加などにより、過去5年平均を下回っているものの回復基調にある。また、経産牛や肥育牛価格も同様の推移を見せている。

 一方、東部5州の6月の1週当たり平均牛と畜頭数は、16万3207頭(前年同月比9.3%増)と依然高水準で推移している(図6)。
図5 家畜市場におけるEYCI価格の推移
資料:MLA
注1:枝肉重量ベース
注2:EYCI価格は東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場の
   若齢牛の加重平均取引価格。家畜市場の指標価格となっており、肥育牛や
   経産牛の家畜市場価格などとも9割近い相関関係にある。
図6 東部5州における1週当たり平均牛と畜頭数の推移
資料:MLA
 注:QLD州、NSW州、VIC州、南オーストラリア州およびタスマニア州の主要な
   と畜場における1週当たり成牛と畜頭数の合計
干ばつが長期化しているクイーンズランド(QLD)州やNSW北部でも、6月には平年並みの降雨が得られたものの、牧草や水の確保が困難な状況はいまだ続いており、これらの地域の生産者は飼養頭数を減らすことで対処している。現地報道によると、例年であればNSW州北部のと畜場では、7月から8月にかけては牛の搬入が減少する時期にもかかわらず、今年は8月まですでにと畜の予約が埋まっている状況であるとしている。

2013/14年度牛肉輸出量、米国向けが日本向けに迫る

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、6月の牛肉輸出量はと畜頭数の増加を反映し、10万3257トン(前年同月比17.6%増)となった(図7)。この結果、2013/14年度(7月〜翌6月)は118万4432トン(前年度比16.8%増)と、2年連続で過去最高を更新した(図8)。

 国別で見ると、6月は米国向けが3万187トン(前年同月比87.5%増)と5カ月連続で日本向け2万4826トン(同2.0%減)を上回った。2013/14年度実績でも米国向けは26万5920トン(同28.7%増)と、首位の日本向け27万9701トン(前年度比6.4%減)との差は、わずか1万トン強にまで迫っている。米国国内での肉牛飼養頭数減少に伴う牛肉の減産などから、豪州産への引き合いは強まり、米国向け加工用牛肉の輸出価格(経産牛、90CL、FAS(注))は堅調に推移して、7月1週目には、1キログラム当たり500.2豪セント(4万9000円)と過去最高値をつけた。こうした状況を受け、米国向けは当面、好調を維持するものとみられている(図9)。

(注)90CL(ケミカルリーン)とは赤身率90%の加工用牛肉バルクパック、FASは豪州の港における船側渡し価格
図7 主要輸出先別牛肉輸出量の月別推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース
図8 主要輸出先別牛肉輸出量の年度別推移
資料:DAFF
注1:船積重量ベース
注2:年度は7月〜翌6月
図9 米国向け加工用牛肉輸出価格の推移
資料:MLA
注1:経産牛、90CL、FAS価格
注2:1週当たりの単純平均
 また、2013年後半以降、中国向け輸出量が韓国向けをほぼ上回って推移した結果、2013/14年度の中国向け輸出量は16万440トン(同73.9%増)と、韓国向け15万5656トン(同13.0%増)を初めて上回った。しかしながら、2014年5月以降は韓国向けを下回っており、中国が同月以降、成長ホルモンを使用した豪州産牛肉の輸入を禁じた影響が表れているものとみられている。
(調査情報部 伊藤 久美)


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