需給動向 海外 |
乳製品価格は下落する一方、 |
生乳生産、今年度最大の増加率デーリー・オーストラリア(DA)によると、2014年5月の生乳生産量は68万1300キロリットル(前年同月比8.2%増)となった(図27)。6カ月連続で前年同月を上回っただけでなく、2013/14年度(7月〜翌6月)で最大の増加率となっている。これは、高い生産者乳価に加え、主要生乳生産州であるビクトリア(VIC)州において、3月以降、平年以上の降雨量を記録しており牧草の生産状況など飼養環境が改善していること、また、乾草や大麦などの飼料価格が下落基調にあること、さらに、前年同月の生産量が、気象条件の悪化から低水準であったことなどが影響しているとみられている。生産状況を州別に見ると、主に輸出に仕向けられるVIC州とタスマニア(TAS)州の生乳生産は、それぞれ前年同月を10.8%、17.6%上回っており、豪州の生乳生産量の増加をけん引している。
乳製品輸出、脱脂粉乳を除き減少生乳生産が増加傾向にある中、乳製品輸出は総じて低迷している。DAによると、2014年5月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が1万1110トン(前年同月比33.7%増)、全粉乳が5616トン(同40.3%減)、バターが2407トン(同35.1%減)、チーズが1万2708トン(同19.8%減)となった(図28)。乳製品国際価格が下落傾向にあることから、全粉乳、バター、チーズはいずれも前年同月を下回っている。一方、脱脂粉乳は中国や東南アジア向けを中心に増加傾向が継続しており、最大の輸出品目であるチーズに迫る数量となっている。
乳製品国際価格、高騰前の水準まで下落2014年7月1日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり3810米ドル(39万円:1米ドル=102円、前年比14.2%安、前回比1.2%安)、全粉乳は同3459米ドル(35万円、前年比27.3%安、前回比5.4%安)となった(図29)。通常、4〜7月にかけては季節的に生乳生産が減少し、乳製品国際価格は上昇する時期であるものの、2014年2月以降の下落傾向が継続し、2013年1月頃の高騰前の水準まで戻りつつある。これは、中国国内の生乳生産の回復が見込まれていることや、同国が前年度の大量の乳製品輸入により在庫を多く抱えていることが背景にあるとみられている。
乳業各社、新年度の初期乳価を発表豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン社は、他の乳業メーカーに先駆けて、7月に始まる2014/15年度のVIC州、TAS州における初期乳価(年度当初の生産者乳価)について、乳固形分1キログラム当たり6.0豪ドル(588円:1豪ドル=98円)と発表した。前年度の5.6豪ドルから0.4豪ドル上昇しており、これまでで最も高い初期乳価となっている。同社では乳製品国際価格はNZやEU、米国の生乳生産の増加から一時期より下落しているものの、アジアや中東からの需要は比較的強い状態が続いていることを、乳価高の要因として挙げている。なお、その他の主要乳業メーカーも同水準の初期乳価を発表しており、高水準の生産者乳価を背景とした生乳生産の増加が見込まれている。 新年度の需給見通し、乳製品輸出総額は減少豪州農業資源経済科学局(ABARES)は6月、2014/15年度(7月〜翌6月)の牛乳・乳製品需給に関する見通しを公表した(表9)。これによると、乳牛飼養頭数は、生乳生産が好調なVIC州やTAS州において牛群確保の傾向が続く一方、乾燥気候にあるクイーンズランド州などでは淘汰が進み、結果的には前年並みにとどまるとしている。生乳生産量については、前年度をわずかに上回るとしているものの、気象条件の悪化が懸念材料であるとしている。 主な乳製品の生産量については、生乳生産の増加と中国などからの堅調な需要を背景に、バターを除き前年を上回るとしている。また、乳製品の輸出総額については、乳製品国際価格の下落から前年を下回るとしている。
(調査情報部 根本 悠) |
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