2014年4月の生乳価格、前年同月比11.7%高
欧州委員会によると、2014年4月のEU28カ国の生乳価格(加重平均)は、100キログラム当たり38.20ユーロ(5348円:1ユーロ=140円)となり、前月からやや値を下げたものの、前年同月比11.7%高となった(図25)。
図25 生乳価格の推移 |
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資料:欧州委員会 |
生乳価格は、域外輸出の増加と好調な乳製品価格を背景に、過去3カ年平均値よりも15.5%高と高水準を維持している。しかし、生産量が増加傾向で推移しているため、下落基調を呈している。
主要生乳生産国の状況を見ると、最も価格が高いのはドイツで、前年同月比14.6%高の同39.72ユーロ(5561円、前月比2.0%安)となった。一方、最も価格が下落したのはフランスで、前月比9.1%安の34.14ユーロ(4780円、前年同月比9.3%高)となった。
生乳出荷量、前年同月比7.4%増
ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年4月の生乳出荷量は、前年同月比7.4%増の1306万トンとなり、10カ月連続で前年同月を上回っている(図26)。
図26 生乳出荷量の推移
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資料:ZMB
注:2014年は暫定数値 |
増加の要因として、冬期からの温暖な天候による良好な牧草生育条件と、2015年の生乳クオータ制度廃止に向けて主要生産国を中心に増産が進んでいることが挙げられる。
このうち、顕著な増加傾向を示しているのは英国であり、2014年1〜4月の出荷量は、前年同期比13.0%増の495万9000トンとなっている。
輸出は粉乳類を中心に増加
欧州委員会によると、2014年1〜4月の牛乳・乳製品の域外輸出量は、全体で前年同期比17.5%増の127万8900トンとなった(表6)。チーズを除く製品で増加したが、中でも脱脂粉乳(同65.9%増)と全粉乳(同30.0%増)が大きく増加した。
表6 EU域外への乳製品輸出量 |
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資料:欧州委員会
注:その他乳製品とは、HSコード「040390」を指す |
脱脂粉乳の輸出先内訳を見ると、アルジェリア(同97.5%増)と中国(同4.6倍)が大幅な増加を示している(表7)。同年1〜4月のEUの粉乳価格は、ほぼ国際価格と拮抗しており、一定の価格競争力を有していたため、この数年で大きく輸入量を伸ばす中国や、オセアニアよりも地理的優位に立つアルジェリアなどのアフリカと中東地域への輸出を伸ばした。
表7 脱脂粉乳輸出量(輸出先別)
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資料:GTI社 「Global Trade Atlas」
HSコード:04021019
注:出典が異なるため、表6と一部数値が一致しない |
一方、乳製品の中でわずかではあるものの、減少傾向を示したチーズの輸出先を見ると、最大の輸出先であるロシア向けが前年同期比で8.3%とかなりの程度減少している(表8)。要因として、ウクライナ情勢で対立するEU加盟国との政治的関係の悪化が、貿易にも影響を及ぼしたものとみられている。
表8 チーズ輸出量(輸出先別)
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資料:GTI社 「Global Trade Atlas」
HSコード:0406
注:出典が異なるため、表6と一部数値が一致しない |
乳価は今後とも堅調との予測
欧州委員会が7月上旬に公表した短期予測によると、2014年は年間を通じて生乳価格は高水準を維持するとしている。
この要因として、内外での粉乳類の堅調な需要を挙げており、アフリカ・中東向けの輸出は今後も増加を見込んでおり、また、中国の輸入需要も堅調であるとしている。
また、域内需要としては、チョコレート製造向けを中心に一定の粉乳需要が続くと見ている。
(調査情報部 宅間 淳)
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