需給動向 海外

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好調なアジア向け輸出により、
枝肉価格は前月に続いて上昇


2014年5月の豚枝肉卸売価格、前年同月比0.9%安

 欧州委員会によると、2014年5月のEU豚枝肉卸売価格は、前年同月比0.9%安となったものの、100キログラム当たり163.96ユーロ(2万2954円:1ユーロ=140円)と前月に続き上昇した(図10)。

 EU豚枝肉卸売価格は、今年3月にポーランドで発生したアフリカ豚コレラ(ASF)によりロシアがEU産豚肉の輸入を禁止したため下落したが、北米などでの豚流行性下痢(PED)の発生により輸出需要が増加していることなどから上昇に転じている。夏場にかけてのEU域内のバーベキュー需要などもあり、同価格は引き続き堅調に推移するとみられている。
図10 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

豚肉生産量は前年並みで推移

 欧州委員会によると、2014年4月のEU豚肉生産量は、前年同月比0.1%増の190万7000トンとなった。また、同年1〜4月累計では前年同期比0.2%減となっている(図11)。2013年1月からのアニマルウェルフェア導入に伴い、繁殖雌豚飼養頭数が減少する中で、豚と畜頭数も減少傾向が伝えられているが、一方で、飼料穀物価格安により1頭当たり枝肉重量は増加しており、豚肉生産量はわずかな減少にとどまっているとみられている。

 なお、2014年の生産量は、前年比0.8%減と予測しており、年間を通じてほぼ前年並みの水準で推移するものとみている。
図11 豚肉生産量の推移
資料:欧州委員会
注1:2012年はEU27カ国、2013〜14年はクロアチアを含むEU28カ国
注2:2014年4月は速報値、同年5月以降は予測値

アジア向け輸出は堅調

 欧州委員会によると、2014年1〜4月のEU域外への豚肉等輸出量は86万1000トンとなり、前年同期比10.3%の減少となった(表3)。これは、最大の輸出先であったロシアがEU産豚肉の輸入を禁止しているためであり、同国向けは前年同期比78.8%減と大幅に減少している。一方、北米でのPED発生に伴い、調達先を北米からEU加盟国に変更したアジア向けの輸出が伸びている。国別に見ると香港向けが12.6%増、日本が29.4%増、韓国が99.9%増、フィリピンが71.3%増といずれも大幅増となり、ロシア向けの輸出の減少分を補っている。

ポーランドへのASF対策補助が終了

 ポーランドでは、ASFの発生により直接的な影響を受けた地域(ベラルーシとの国境地帯)において、5月25日までにと畜された豚の特別救済措置(豚肉価格の急落などに対する補償など)が終了した。なお、ASFの発生はあったものの、豚肉価格は既に上昇に転じており、ポーランドの豚肉市場には大きな混乱は生じていない。ポーランドでは、2014年第1四半期の生体豚(50キログラム未満)の輸入は前年同期を24.0%上回り、肥育経営の増頭意欲は強い(図12)。
図12 子豚(50kg未満)輸入頭数の推移(ポーランド)

資料:GTI社 「Global Trade Atlas」
HSコード:010391
表3 EU域外への輸出先国別豚肉等輸出量
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース
 一方、EU加盟国のラトビアで6月26日、ポーランド、リトアニアに続き3カ国目となるASFの発生が確認された。今回は、これまでと同様の野生のイノシシに加えて、初めて家畜の豚においても発症が確認されている。ラトビアは、年間4万トン弱の生産に対し消費量が7万トン程度と豚肉輸入国であり、また、今回の発生が隣国のベラルーシとの国境付近の地域に限定されていることから、豚肉生産および国際需給への影響は限定的とみられている。

(調査情報部 中野 貴史)

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