需給動向 海外

◆アルゼンチン◆

2014年1月〜8月の牛肉生産量、前年同期を下回る


と畜頭数の減少とインフレで牛肉価格が高騰

 アルゼンチン農牧漁業省(MINAGRI)によると、2014年1月〜8月の牛と畜頭数は802万3867頭(前年同期比3.1%減)、牛肉生産量は220万218トン(枝肉重量ベース:同2.5%減)となった(図11)。また、1頭当たり枝肉重量は、220キログラム(同2.5%減)となった。

図11 牛肉生産量の推移
資料:MINAGRI

 2014年は、国内最大の肉牛・牛肉生産州であるブエノスアイレス州で、雨期となる2月に例年以上の降雨を記録し、その後の天候も不安定となった。このため、路面の悪化などにより牛の集荷や農場からの輸送が困難となり、と畜頭数が減少したとみられている。また一部では、放牧されていた牛が孤立し、へい死したケースも多かったとされている。

 なお、と畜頭数の減少により牛肉供給が減少し、牛肉の小売価格は、年率30%以上とされる深刻なインフレーションを上回る勢いで上昇している。同国政府は8月、国内への牛肉供給量を確保するため、牛肉輸出を一時的に停止する措置を講じたが、国内価格安定を図るための政府の輸出抑制策がいつ発動するかとの不安感は常にあり、生産者は増頭ではなく、昨年末以降上昇を続けている生体牛の価格が好調なうちに雌牛を売りぬけようとの思惑から、年初より繁殖雌牛のと畜割合は前年よりも上昇している。同国では、2010年以降、牛群の再構築などにより飼養頭数は増加基調にあるが、繁殖雌牛のと畜頭数が増加傾向で推移すると、今後の牛肉生産に影響する可能性がある。

 9月には最低賃金の引き上げなどのインフレ対策も実施されたが、それを上回るインフレ率の上昇により、消費者の牛肉購買力の回復は、見込めない状況にある。

図12 生体牛の市場価格の推移
資料:MINAGRI
  注:リニエルス家畜市場における生体1キログラム当たりの価格

1月〜8月の輸出量、わずかに減少

 アルゼンチン国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2014年1月〜8月期の輸出量は8万4687トン(製品重量ベース:前年同期比2.8%減)となった(表2)。輸出先別では、チリ(1万8659トン、前年同期比9.2%減)、ロシア(1万8313トン、同48.8%増)、ドイツ(1万2359トン、同1.1%減)、中国(1万292トン、同111.7%)で、EUや米国などに対して農畜産物の輸入禁止措置を講じているロシア向けと、国内の牛肉需要が増加している中国向けがかなりの程度増加した。

 EU向けのうち、ヒルトン枠(EU向け骨なし高級生鮮牛肉の低関税割当枠)は1万3340トン(同14.3%減)となった。輸出先はドイツ(輸出量シェア61.3%)、オランダ(同25.0%)、イタリア(同8.2%)の3カ国で94.5%を占めている。

 2014年1月に同国の通貨ペソの公定レート切り下げにより、国際競争力は有しているものの、牛肉生産の減少や輸出規制などにより輸出余力が限られている。牛肉の輸出には、現在講じられている政府の一時的な停止措置に加え、15%の輸出税も課せられている。このため、牛肉業界関係者の多くは、輸出向けが国内向けに比べて収益性が低いとして、2015年10月の大統領選で貿易政策が好転することを望んでいる状況にある。

表2 国別牛肉輸出量
資料:SENASA
  注:加工牛肉を除く。
(調査情報部 米元 健太)

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