需給動向 海外

◆米 国◆

牛肉生産量の減少により、輸入量が増加


繁殖雌牛のと畜頭数が減少、牛群再構築の動き

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が10月23日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2014年9月のと畜頭数は249万頭(前年同月比3.0%減)となった(表1)。その内訳を見ると、去勢牛が131万3000頭(同1.4%増)、未経産牛が70万2000頭(同4.5%減)、繁殖雌牛が42万7000頭(同12.3%減)、種雄牛が4万9000頭(同3.9%減)となった。USDAでは、繁殖雌牛および未経産牛の減少の要因として、2012年の干ばつ後、牧草地の状態が回復していることで、繁殖農家がこれらを保留し、牛群を再構築する動きが高まっているためとしている。

表1 と畜頭数の推移
資料:USDA
注1:各年9月の頭数。
  2:端数処理のため、合計は必ずしも一致しない。

 このと畜頭数の減少を背景に、2014年9月の牛肉生産量は、前年をわずかに下回る93万8000トン(同0.3%減)となった。前年に比べて飼料穀物価格が大幅に下落していることから、肥育段階で飼料の多給による仕上げ体重増加の傾向が高まっている。このため、同月の平均枝肉重量は、同2.9%増の373キログラムとなった。この仕上げ体重の増加により、と畜頭数の減少分(同3.0%減)が埋め合わされる形となり、2013年10月以降、ほぼ一貫して前年を下回って推移していた牛肉生産量はほぼ前年並みまで回復した。

牛肉輸入量は前年を大幅に上回る

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が10月17日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」によると、2014年1月〜8月の牛肉の輸入量は、84万9000トン(前年同期比18.6%増)と大幅に増加した。輸入先を国別に見ると、豪州が27万2000トン(同49.1%増)、ニュージーランドが21万3000トン(同7.7%増)、カナダが17万8000トン(同11.3%増)、メキシコが9万2000トン(同15.7%増)となった(図1)。USDAでは、牛肉輸入量増加の要因として、米国内で牛肉生産量が減少し、牛肉価格が高水準にあること、また、主要通貨に対して米ドル高で推移する為替相場により外国産牛肉に対する割安感が出ていることを挙げている。さらに、豪州からの大幅な輸入増加については、同国で続いている干ばつにより、牛の淘汰が進み、牛肉生産量が増加したためとみている。

 今後の牛肉輸入の見通しについては、2014年通年では121万7000トン(前年比19.3%増)、2015年は経済情勢に大きな変化がないと仮定した上で、122万5000トン(同0.6%増)としている。

図1 牛肉輸入量の推移(輸入先国別)
資料:USDA
注1:子牛肉を含む。
  2:1月〜8月の合計

 一方、2014年1月〜8月の牛肉の輸出量は、77万5000トン(前年同期比0.6%増)となった。輸出先を国別に見ると、メキシコ(13万3000トン、同18.4%増)や香港(11万6000トン、同29.4%増)向けなどが増加している中で、日本(20万2000トン、同6.5%減)とカナダ(11万6000トン、同21.9%減)向けは減少となった(図2)。USDAでは、日本向けの減少要因として、今年4月の消費増税により需要が弱まったことを挙げている。カナダについては、米国の牛肉価格高に加え、米ドルに対してカナダドル安で推移する為替相場が割高感をもたらしたとしている。

 USDAは、今後も生産量の減少と価格高により、牛肉の輸出量は制限されるとしており、2014年通年では117万9000トン(前年並み)、2015年は114万5000トン(同2.9%減)と見込んでいる。

 なお、10月20日に米国が実施している食肉の義務的原産地表示(COOL)に対するWTO上級パネルの裁定が公表された。これによると、WTOは米国が原産地表示制度を設置する権利は認めるものの、現行の制度は本件を提訴したカナダとメキシコ産の家畜・食肉を差別的に取り扱っていると認定した。本件裁定について、米国が60日以内に異議申し立てを行わない場合には、カナダとメキシコは本件によって受けた損害を回復するために関税引き上げの対抗措置を講ずることが可能となる。現在、対抗措置のリストを公表しているのはカナダのみであるが、リストには牛肉も含まれていることから、対抗措置が発動されればカナダ向けの牛肉輸出量がさらに減少する可能性がある。

図2 牛肉輸出量の推移(輸出先国別)
資料:USDA
注1:子牛肉を含む。
  2:1月〜8月の合計
(調査情報部 渡邊 陽介)


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