需給動向 国内

◆鶏 肉◆

平成26年度上半期の鶏肉需給、
生産量・輸入量・出回り量いずれも増加


 平成26年度上半期(4月〜9月)の鶏肉需給動向は、産地での生体処理羽数・処理重量の増加や、他の食肉との価格優位性に支えられた好調な消費を受けて、生産量および輸入量のいずれも増加する中で、卸売価格も高水準で推移したことが大きな特徴であった。

生産量、過去最高を更新

 生産量は、73万7118トン(前年同期比3.5%増)と過去最高を更新した(図5)。ブロイラーの飼養戸数は、小規模飼養者層を中心に減少傾向で推移しているものの、産地では、増体能力の高い系統への生産切り替えや、大手企業によるインテグレーションの進展、配合飼料価格などの生産コストの増加を羽数増で対処する動きなどがみられた。ブロイラーの生体処理羽数は3億2512万羽(同1.2%増)、処理重量は1羽当たり平均2.95キログラム(同2.2%増)と、いずれも増加傾向で推移したことが増産につながった。

輸入量、業務・加工向けを中心に大幅増

 輸入量は、24万8530トン(同21.4%増)と大幅に増加した(図5)。これは、国産鶏肉の相場が堅調に推移したため、業務・加工向けを中心に輸入鶏肉の需要が増加したことによるものとみられる。

 輸入相手先国別に見ると、約8割のシェアを占めるブラジル産が20万4187トン(同7.7%増)、米国産が1万5054トン(同17.3%増)と、いずれも前年同期を上回った。昨年12月に、およそ10年ぶりに輸入解禁となったタイ産は、2万6697トンと堅調に増加し、全輸入量の1割以上のシェアを占めるまで伸びた。タイ産の骨なし切り身肉は、ブラジル産と比べて1キログラム当たり20円程度高いものの、規格に正確に対応できるとして、業務筋からの需要増の動きがみられた。

推定出回り量、過去最高を更新

 推定出回り量は、96万2617トン(同3.5%増)と過去最高を更新した。うち国産品は74万1003トン(同3.9%増)、輸入品は22万1614トン(同2.3%増)といずれも増加したものの、本年7月下旬の中国産鶏肉消費期限切れ問題発生を受けた輸入品全般の敬遠による国産回帰などもあり、国産品の増加が顕著となった。

 総務省の家計調査報告(1世帯当たり)によると、鶏肉消費量の約4割を占める家計消費については、上半期の全国1人当たりの購入数量が2438グラム(同2.7%増)、支出金額が2258円(同10.4%増)となった。牛・豚肉の小売価格の上昇の影響もあり、牛・豚肉の購入数量がいずれも減少する中で(牛肉は同4.5%減、豚肉は同2.8%減)、安価な鶏肉への代替需要が増加していることがうかがえる。

推定期末在庫量、増加傾向で推移するも、国産品在庫水準低下が顕著

 推定期末在庫量は、輸入量の増加を受けて、26年3月を底に増加傾向で推移し、9月末時点で12万3076トン(同1.2%減)となった(図5)。うち、輸入品は10万4521トン(同9.3%増)と年末需要に向けて積み増している一方で、国産品は1万8555トン(同35.8%減)と低水準で推移している。これは、他の食肉との価格優位性から、量販店などでの鶏肉の特売回数が増加しているほか、総菜やソーセージ、ナゲットなどの食材となるむね肉・ささみの加工・業務用需要の増加、中国産鶏肉消費期限切れ問題発生を受けた輸入品全般の敬遠による国産回帰などにより、国産品の凍結回しが減少していることによるものとみられる。

図5 鶏肉の生産量、輸入量および推定期末在庫量の推移
資料:農林水産省「食鳥流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ
  注:生産量は骨付き肉ベース(成鶏肉を含む)。輸入量には鶏肉以外の家きん肉を含まない

鶏肉卸売価格、むね肉高騰で、もも肉との価格差縮小

 このような状況の中、鶏肉卸売価格(東京)は、もも肉が15カ月連続、むね肉が23カ月連続で前年同月を上回って推移している(図6)。26年10月時点では、もも肉が1キログラム当たり617円(前年同月比0.3%高)と若干の停滞感が出ている一方で、むね肉は同330円(同19.2%高)と高騰が続いている。むね肉は、ファストフードやコンビニエンスストアなどの加工・業務用需要が旺盛なことに加え、最近の健康志向の高まりに伴い、蒸し鶏などのテーブルミートとしての消費も増加しており、もも肉との価格差の縮小が顕著となっている。

図6 鶏肉卸売価格(東京)の推移
資料:農林水産省「食鳥市況情報」
  注:金額は消費税を含まない
(畜産需給部 藤戸 志保)

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