需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産の増加に伴い、乳製品輸出も増加傾向


生乳生産は増加傾向にあるものの、地域間に格差

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2014年9月の生乳生産量は93万7300キロリットル(96万5400トン相当、前年同月比4.2%増)と、10カ月連続で前年同月を上回った(図27)。州別に見ると、生乳生産が豪州全体の約3分の2を占め、輸出向け乳製品の主要生産州でもあるビクトリア州では、降雨は平年より少ないながらも牧草の生育が良く、前年同月比3.9%増となり、同州に隣接するその他の州も、おおむね前年を上回っている。一方、飲用向けが主体であるクイーンズランド州は、干ばつの影響により2年以上前年同月を下回って推移している。

 豪州気象庁によると、2014/15年度(7月〜翌6月)の夏季の降雨量は平年を下回り、気温は平年を上回る可能性が高いとしており、今後の気象条件次第では、生乳生産の増加傾向の鈍化も予想される。

図27 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月

乳製品輸出、バターを除き増加

 DAによると、2014年9月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が1万198トン(前年同月比33.4%増)、全粉乳が7360トン(同7.6%増)、バターが2727トン(同20.2%減)、チーズが1万2020トン(同16.4%増)となった(図28)。生乳生産の増加に伴い、これまで増加傾向にあった脱脂粉乳、チーズに加え、全粉乳も前年同月を上回った。一方、バターは、最大の輸出先であるロシアの禁輸措置の影響から、前年同月を大幅に下回っている。なお、ロシアがバター同様多くを輸入しているチーズについては、豪州は主要取引先ではないことから、ロシアの禁輸措置の影響は見られていない。

図28 乳製品輸出量の推移
資料:DA

全粉乳国際価格、下げ止まり

 2014年11月3日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり2457米ドル(約27万円:1米ドル=110円、前年比46.1%安、前回比0.2%安)、全粉乳は同2522米ドル(約28万円、前年比48.4%安、前回比0.7%高)となった(図29)。最大の取引品目である全粉乳は、直近2回連続で前回の取引価格を上回っており、下落に歯止めがかかったと見る向きもある。GDTは6カ月後の取引まで契約できる仕組みであり、特に2015年1〜3月渡しの全粉乳価格が上昇していることから、中国を中心に再び全粉乳需要は回復するとの見方も出ている。一方、その他の品目は下落傾向が継続しており、特にチーズは下落率が大きく、これは主要輸入国であるロシアの禁輸措置の影響とみられている。

図29 GDTの乳製品価格の推移
資料:GDT

乳業各社、乳価据え置きを発表

 こうした中、豪州の大手乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社、ワーナンブール・チーズ&バター(WCB)社は10月下旬、相次いで生産者乳価の据え置きを発表している。WCB社によると、国際的な乳製品需給の緩和やロシアの禁輸措置などの影響は見られるものの、米ドルなどに対して豪ドル安で推移する外国為替相場や、国際的な乳製品需要は底堅いとの見通しが、乳価据え置きの要因としている。

(調査情報部 根本 悠)

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